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【年末年始の生乳廃棄回避】20日から農水省緊急支援 Jミルク業界挙げ臨戦態勢2025年12月15日

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生乳需給緩和が深刻となる中で、酪農・乳業界は年末年始の処理不可能乳の回避へ臨戦態勢に入る。冬期休暇で学校給食牛乳がなくなる今週末の20日から1月上旬までを照準に、加工受け入れ、需要拡大を本格化。農水省は出荷抑制酪農家への緊急支援に乗り出す。(農政ジャーナリスト・伊本克宜)

8月の牛乳値上げ以降、需要は苦戦が続く(首都圏の量販店で)8月の牛乳値上げ以降、需要は苦戦が続く(首都圏の量販店で)

■「今年は様相一変」需給緩和深刻

学給牛乳が停止となる年末年始は、例年、飲用需要の減った分の行き先をどうするかが課題となる。牛乳不需要期でそのまま量販店などに出荷量を増やせば、供給過剰となり、結果的に安売りが横行しかねない。

こうした中で、「今年は様相が一変している」と酪農・乳業関係者は口をそろえる。飲用牛乳、脱脂粉乳ともに需要低迷、過剰感が増しているためだ。Jミルク短信で脱粉使用のヨーグルト販売も苦戦が目立つ。年末年始は飲用需要減を見込み乳製品加工に回すが、年々処理しきれるかが焦点となっている。万が一、生乳処理できず廃棄の事態になれば、市場価値の喪失にとどまらず、業界全体のイメージダウン、ひいては需要減に伴い酪農生産基盤の弱体化につながりかねない。

Jミルクでは「年末年始の処理不可能乳の発生は予断を許さない状況だ」との認識を示し、業界挙げた協力体制を呼び掛けている。具体的には①生産者団体による適切な広域流通による過不足調整②乳製品工場における稼働の最大化、フル操業、工場での人員適切配置③生乳使用率を高めた製品の販売④牛乳・乳製品の販促、消費拡大活動の強化などだ。北海道、関東、九州などの指定団体はSNSなども活用した創意工夫ある消費拡大も展開している。

■自民畜酪委でも喫緊の対応言及

生乳需給緩和は2026年度畜酪政策価格・関連対策論議にも影響を与えている。決定後に本格化する指定生乳生産者団体と大手乳業メーカーとの26年度乳価交渉にも悪材料となりかねない。

自民党畜産・酪農対策委員会は今週末の決着を見据え、断続的に会議を開き最重点事項の絞り込みなど論議を深めている。15日も大詰めの論議を進めるが、生乳需給緩和に伴う脱粉過剰在庫対策と連動した需要拡大の具体策、加工原料乳補給等の総交付数量の水準にも波及する問題だ。10日夕方の自民畜酪委後、簗和生委員長は26年度政策論議の課題とともに需給緩和を踏まえ喫緊の問題として「年末年始の国産牛乳の需要拡大も重要となる」との認識を示した。

■キロ40円支援「コア期間」12月20日~1月8日

農水省は不需要期の生乳廃棄回避へ緊急事業を発動する。学乳停止の12月20日から1月8日の20日間を牛乳不需要のピークである"コア期間"と位置づけ、生乳出荷抑制に協力した酪農家に奨励金を交付する。前年度に比べ単価を10円引き上げ活用を促す。

子牛に搾乳した生乳を飲ませる全乳哺育などが対象だが、実際の活用には課題も指摘されている。全体で需給調整しないと、出荷抑制したブロックに、他ブロックの生乳が流れ込み販売シェアを奪われかねない。改正畜安法に伴って拡大している非系統の自主流通グループが加工処理や出荷抑制にどれほど協力するのか。

短期間限定の全乳哺育そのものの課題もある。母子感染を防ぐため低温殺菌装置での処理が必要なほか、粉ミルクからの切り替えで下痢など子牛の体調不良を招く恐れもある。

■非系統業者の対応もカギ

年末年始の生乳廃棄回避が実効性を持つかは、年々拡大している非系統業者の対応も焦点の一つだ。処理量のうち飲用牛乳の割合が圧倒的に多く、需要確保のため安売りでも処理する可能性が高いためだ。

非系統最大のMMJは年末年始の出荷抑制へ、傘下酪農家が全乳哺育実施の場合キロ40円の農水省緊急事業活用に加え同額の合計80円の奨励金を出す方針だ。ただ、実際に非系統が年末年始の需給調整強化にどれだけ協力するかは不透明だ。

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