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農薬:サステナ防除のすすめ2025

【サステナ防除のすすめ】スマート農業の活用法(中)ドローン"功罪"見極め2025年12月15日

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サステナ防除では農作業の効率化・省力化としてスマート農業を活用する方法を検証しており、前回は現在のスマート農業技術のうち、防除に関するものの概要を整理した。今回は、ドローン等を用いたスマート農業技術を整理し、その活用法や使用する際の課題などをひも解いてみる。

労力軽減も薬剤吟味

〇ドローンを活用するメリットと課題

ドローンは、別名マルチローターと呼ばれ一般的に四つ以上のローターを持つものを指し、①人が乗れない航空機で②遠隔操作または自動操縦で飛行できるものと定義されている。航空法(無人航空機)では、「重量100g以上」のドローンが規制対象となっており、ドローンの名称は、飛行時のプロペラの音が「オスのハチ(drone)」に似ていることが語源とされている。自動飛行機能を持つものが多く開発されており、ラジコンヘリに比べてより簡単に操縦できるものが多い。

ドローンを活用するメリットは、農作業の省力化・労力軽減が図られることであり、具体的には、農薬散布や肥料散布、は種、荷物運搬、センシングといったものがあげられる。以下、具体的に活用メリットと課題について整理してみようと思う。

1.農薬散布

ドローンによる農薬散布ドローンによる農薬散布

ドローンの使い方としては最も多い使用方法である。ドローンを農薬散布に使用することにより、従来の動力散布機や乗用管理機などを使用した場合に比べ、農薬散布に要する労力や作業時間を大幅に軽減できることが大きなメリットである。

農薬散布に使用する散布機には、背負式動力散布機やセット動噴(長いホースを引っ張りながら散布する)、乗用管理機などがあり、使用する農薬の剤型によっても農薬散布に要する時間は大きく異なってくる。一般的には背負式動力散布機で噴霧を行う場合は10aあたり1時間、セット動噴や乗用管理機であれば同10分程度といわれており、これがドローンによる噴霧であれば10aあたり1分程度で終了するため時間短縮の効果は圧倒的である。例えば、タンク容量が10Lのドローンに空中散布用の8倍希釈液を10aあたり0.8L散布する農薬を使用すれば、8Lの希釈薬液の1回搭載で1haを10分で散布できることになる。ドローンに搭載のバッテリーの持続時間が15分程度であることを考えれば、ドローンの1フライト・1ha・10分で農薬散布(噴霧)が完了するというのが標準である。

この散布時間の短縮に加え、防護服を着用しての労力軽減に結びつくことやムラのない農薬散布ができること、傾斜地や険しい地形での農薬散布が危険で困難な場所での散布が可能なこと、操縦免許は必要だが誰でも簡単に農薬散布できること、大型機械が入れない場所での農薬散布が可能になること、降雨後にぬかるんで入れない畑でも農薬を適期散布できること、農薬の被爆を避けられ農薬散布時の安全性が高いなどがドローンによる農薬散布のメリットと考えられる。

 ただし、解決すべき課題もいくつかあり、それは次のようなものである。

① バッテリー持続時間が15分程度と短いこと

1飛行が15分なので、広い面積で連続的に使用するには、作業時間に見合う数のバッテリーを準備するとともに、高速充電器および高速充電器を稼働させる発電などの設備が必要となる。残念ながら、ドローンに使用されるバッテリーは高価であり、多くの本数を用意するとなると多額の投資が必要になるのが難点だ。また、現在主流のリチウムイオン電池の持続期間はほぼ限界に達しており、これ以上持ち時間を長くすることは難しいといわれている。

飛行時間を長くできるとドローンの利便性がさらに高まるので、現在開発が進んでいるエンジンとのハイブリッドドローンや有線による電源供給ドローンなど飛行時間を延ばす技術開発に期待したい。

散布はほ場ごと調整

② 搭載重量が少ないこと

ドローンに使用できる農薬は、使用方法に「無人航空機による散布」や「散布」と記載されている農薬である。前者の場合、8倍液0.8L/10aというような濃厚少量散布となるので、ドローンのように積載量が少なくても大きな面積が散布でき、例えば8Lの希釈液を搭載すれば1haの散布が可能となる。

これに対し、「散布」となっている農薬は1000倍液100L/10aというように希薄液多量散布となって、この農薬の場合、10L搭載できるドローンに薬液を満載して10aを散布しきるには、計10回の薬液充てん作業とバッテリー交換作業が必要になるので非常に不効率である。このため、希薄多量散布の場合は、小面積でうね単位の散布など用途が限られるのが現状だ。であれば、濃厚少量散布の登録を持つ農薬を増やせればよいが、特に園芸作物に対しては、濃厚少量散布により効果が不安定になったり、薬害の発生リスクが高まるなどの課題もあり、園芸場面での濃厚少量散布の登録拡大はあまり進んでいない。当面は、現在の搭載量でも効率的に使用できる場面に絞ってドローンの活用を考えていく必要がある。

③ 薬液が届く範囲が狭いこと

病害虫によっては、葉裏に潜んでいることが多く、できるだけ葉裏にも薬液を届かせたいのだが、上空からダウンウオッシュで散布するドローンの仕様上、上方向からの風圧で葉表にはよく付着させることができるが、上方向からの風の影になる葉裏に直接薬液を届かせることが難しいのが課題である。浸透移行性や浸達性を有する農薬であれば、葉表に農薬が付着すれば葉裏まで浸透するため効果も安定するが、作物体内を移行しない保護的効果の高い農薬を使用する場合は、葉裏までどうやって届かせるかが課題となる。

同様に稲やキャベツ、ネギなど濡れにくい作物の場合、ドローンのダウンウオッシュで薬液を洗い流すようになる場合もあるため、展着剤の加用や飛行速度の調整など付着をよくするための条件を整える必要がある

④ 計量機構が無いこと

農薬は農薬取締法によって使用方法が定められ、希釈倍数や10a当たりの散布量を順守する必要がある。希釈倍数は搭載薬液を調整する際に間違いのないようにできるが、散布量を単位面積あたりに正確に投下することが難しい。なぜなら、現在のドローンには希釈液、粒剤ともに投下した量を計る機能がなく、投下量の調整はシャッター開時間や噴霧時間など散布している時間で行うしかなく、それをドローンの飛行時間で調整しているからである。特に水稲除草剤のような粒剤では、10aあたりの投下量が1kgと決まっており、それを守るために予め田んぼの面積に合わせた粒剤量だけドローンに積んで、田んぼ1枚ごとにまき切るという方法が取られている。田んぼが大きければ、大きな問題にならないかもしれないが、面積が小さい田んぼが連続している場合は、面積ごとに粒剤量を計って搭載するのがかなり面倒な作業になる。このため、積載量上限まで満載にして、次から次へと田んぼの面積に合わせて必要量だけ投下していく機構があれば、ドローンの利便性がさらに向上すると考えられる。これは農家が特に求める機能であり、ぜひとも開発してもらいたい機構だ。

2.肥料散布

農薬散布と並んで重労働なのが肥料散布である。ただし、肥料散布の場合、植え付け前に散布してトラクターで耕てんというのが通常の作業であるので、ドローンで散布するという機会は少ない。元肥というよりも、追肥やカルシウム不足の際のカルシウム補給材散布などで、追加する肥料をスポット的散布などで少量散布する際に活用できる。ただし、不足するところに必要な分だけ可変的な適量散布が求められる場合が想定されるので、農薬散布の項で紹介したような調量機構の開発が必要だろう。

3.は種

農業経営の大型化、農業従事者の減少・高齢化に伴って直播栽培が大型農家を中心に導入が進んでいる。特に水田の場合、田植えの代わりにコーティング種子などをは種するのだが、その際のは種作業にドローンが活用できる。撒ぱという方法になるが、10aあたり4kg程度のは種量となるので、8kgを搭載できるドローンを使用することで、20aの水田のは種が5分程度で終了することになる。通常のは種機と比較すれば圧倒的に短い時間で作業が済むため、労力軽減効果が大きい。ただし、撒ぱとなるため通常の水田のような条を形成しないので、汎用コンバインの用意が必要になる。

4.荷物運搬

ミカン栽培など傾斜地で収穫物を運搬する際には大きな労力が伴う。実際にはモノレールなど運搬用機器があるが、レールの場所まで運ぶのですら傾斜がきつい場所であればかなりの重労働である。これが、ドローンであれば、収穫場所の近くで積み込むことができるので、運搬作業が大幅に軽減できるというメリットがある。

重量物を運ぶので機体自体が大きくなる上、運搬回数も多くなるのでバッテリーの持ち時間が大変重要になる。大容量バッテリーかハイブリッドでの対応が必須になるだろう。

5.センシング

農作業の軽労化というよりも、栽培品質の向上や収量の増大に資するため、作物の生育状況(葉色)をほ場単位で計測し、ほ場内や一定範囲内での栄養状態を把握するためにセンサー等を搭載したドローンを飛ばして計測する。その他、ほ場の見回りをドローンで行い、補修が必要な個所の探索などにも使用できる。経営面積が大きければほ場の見回りも大変な作業となるので、ドローンによって農家自身の歩行距離を短くできれば、労力と時間の短縮が図れるというメリットがある。

使用するドローンが100g未満であれば免許は必要ないが、センサー等を搭載すると100gを超えるものが多くなるので、こういった用途であってもドローンの国家資格(無人航空機操縦者技能証明)を取得する必要がある。この資格は、ドローンであれば操縦できる機体の限定はないが、100g以上のドローンを飛行させる場合は、国土交通省に機体登録を行う必要がある。

〇ドローンは経営規模と作付け作物、作業形態に合わせて選択

ドローンは農作業の軽労化・作業の効率化に役立つ優れたものであるが、前述のように使用できる用途が限られるものでもある。

自身の経営規模や実態に合わせて、どの場面にドローンを活用するか十分に検討した上で導入を検討するようにしてほしい。

導入の参考となるよう、現在国内で普及している主なドローンとその技術概要・活用場面を次表に整理したので参考にしてほしい。

(農林水産省発行「スマート農業技術カタログ(令和6年7月耕種版)」に掲載のドローンを抽出し整理した。)

主なドローンとその技術概要・活用場面

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