農薬:サステナ防除のすすめ2025
【サステナ防除のすすめ】スマート農業の活用法(下)勘からデータで正確に2026年1月21日
「サステナ防除のすすめ」では、農産物の品質と収量の確保を目指すために「みどり戦略」にも示されているIPM防除を中心にして、現状の防除技術を上手に組み合わせ、減らせる化学農薬は削減し、必要不可欠な農薬は効率よく使用しながら安定した効果が得られるサステナブルな防除体系の構築を探ろうとしており、それを実現する一つの手段となり得るのがスマート農業だと考えている。一方、2025年4月に制定された食料・農業・農村基本計画(以降、基本計画)でも、世界の食料需給がひっ迫状況に向かっている中、日本国内の農業生産性を向上させることが急務とされており、その方策の一つとしてスマート農業の活用とより優れた新技術の開発に力を注ぐことが明記されている。
そこで、サステナ防除では防除作業の効率化・省力化としてスマート農業を活用する方法を検証しており、前回は現在のスマート農業技術のうち、ドローンを活用した防除に関するものの概要を整理した。今回は、各種センシング技術を用いたスマート農業技術を整理し、それらの防除作業への活用法や使用する際の課題などをひも解いてみる。
スマート農業のセンシング技術とは
スマート農業のセンシング技術で利用できる機能は、大きく分けると①経営データの活用②栽培データの活用③環境制御④自動運転・作業軽減⑤センシング・モニタリング――の五つがある。
まず、①経営データの活用では、電子地図を利用したほ場管理、作業の記録、進捗(しんちょく)状況をリアルタイムに提供し、農業経営の「見える化」を実現する。特に、通信機器を搭載した農業機械と連動することで、食味や収量などの作物情報を把握し、生育ムラのあるほ場に対する可変施肥など品質・収量の均一化・向上に向けた対策に必要な情報を入手することができる。
次に②栽培データの活用では、衛星画像やドローン・スマートフォンなどで撮影したほ場の画像をAIで分析し、作物の生育状況の把握に加え、生育異常個所や病害虫の発生を検知する機能を持ち、効率的かつ効果的な作物生育管理を可能にする。特に、画像データと気象情報・センサーデータを活用したシステムでは病害虫の発生予測やリスク診断など生育を妨げる要因への対策を迅速に行えるように農業者をサポートすることができる。
次に③環境制御では、ほ場の気温・湿度・土壌環境等をセンサーで定期計測し、集約・蓄積する機能を持ち、それらのデータや画像は、事務所のPCやスマートフォン等のモバイル端末で参照が可能になっている。生育状況に応じたほ場環境の調整に利用でき、高温など異常が検出された際には、アラート情報が速やかにメール等で通知される。作業記録を簡単に登録でき、ほ場の環境データや作業履歴を解析することで、作物の品質向上、安定した収量を得るためのほ場環境制御に役立てることができる。
次に④自動運転・作業軽減では、ドローンや農業機械の自動運転によって、正確かつ効率的な農作業を実現し、作業品質の向上を実現し、農業者の労力を大幅に減らすことができる。
最後に⑤センシング・モニタリングでは、衛星画像やドローンによる撮影データなどから生育状況を検知し、生育ムラが発生している位置の特定や雑草の発生状況などを把握することができる。これらのデータをほ場ごとに保管することができ、逐次データを活用した、きめ細やかな生育管理が可能になる。
以上のように、センシング技術を活用することで、これまで感に頼っていた生育管理が様々なデータをもとに正確かつ効率的に実行できるようになるのが大きなメリットである。文末の表には、センシング機能を持ったスマート農業技術・製品の一覧を「スマート農業技術カタログ(耕種R607版・農水省編)」より抽出して表記したので参考にしてほしい。
防除に活用できる機能を持ったシステムと課題
紹介したスマート農業技術のうち、防除に活用できるものの概要を示す。
1、Agri Field Manager(提供:株式会社オプティム)
ドローンで撮影した画像データと気象・センサーデータを活用し、ほ場を一括管理、病害虫判定、リスク診断を提供するシステムである。この病害虫判定や発生アラートを活用することで、適期防除や緊急防除を効率的に行うことに役立つ。
2、Agri House Manager(提供:株式会社オプティム)
ハウス内に設置したセンサーから環境データを収集し多角的に分析するとともに、スマートフォンで撮影した動画データの解析によって、病害虫リスクの診断を可能にするシステムである。陸上走行型ロボット「OPTiM Crawler」がハウス内のレーン走行中に映像を撮影し、ほ場をエリア分けしながら病害虫の検知状況を可視化することができる。これにより、病害虫の適期防除や緊急防除を効率的に行うことに役立つ。
3、K―SAS連動ドローンリモートセンシング(提供:株式会社クボタ)
ドローンとマルチスペクトルカメラを用いた空撮画像から、生育ステージに応じた生育マップを生成し、生育異常(病害虫被害・雑草)の広域的把握に寄与できる。これにより、病害虫の適期防除や緊急防除を効率的に行うことに役立つ。
4、葉色解析クラウドサービス「いろは」(提供:株式会社スカイマティクス)
位置情報付きの画像を撮影可能なドローンにより撮影された画像をクラウドにアップロードすることで、ほ場内の位置に合わせて自動的に配置・記録し、クラウド上の生育診断機能を利用することで、病気や害虫、雑草といった農地の状況などを画像ごとに診断・記録することができる。これにより、病害虫の適期防除や緊急防除を効率的に行うことに役立つ。
5、"xarvio FIELD MANAGER(ザルビオ フィールドマネージャー)"(提供:BASFジャパン株式会社)
各ほ場の土壌や作物の品種特性、気象情報、人工衛星からの画像等をAIが解析し、作物の生育や病害・雑草の発生を予測し、最適な防除時期や収穫時期等を提案できるシステムである。これにより、病害虫の適期防除や緊急防除を効率的に行うことに役立つ。
6、農業気象システム(提供:株式会社スマートリンク北海道)
ほ場周辺に5カ所以上の観測機器を設置して地域内の気象情報をメッシュ化し、これを基に生育予測、病害虫発生予測情報を提供するシステムである。これにより、病害虫の適期防除や緊急防除を効率的に行うことに役立つ。
以上のように各システムとも衛星画像やドローンによる撮影画像などほ場の撮影画像と気象データをもとにAIによる解析を行い、病害虫発生情報の把握や発生予測を実現しようとするものである。これらが実効性のあるものとするためには、膨大な量のビッグデータが必要となり、保有するビッグデータ量によって病害虫診断や発生予測の精度が左右されることになる。残念ながら、解析に必要なビッグデータが蓄積されている作物は一部に限られており、現在、各社ともにデータの蓄積に注力しているところで、多くの作物で病害虫の発生把握・発生予測が正確に行えるようになるには、まだ多くの時間がかかるようである。
国内の農業生産力を向上させるためにも、これらのビッグデータ蓄積ができるだけ早く実現し、防除に役立つシステムがより有効活用できるようになることに期待している。
このため当面は、これらのセンシングデータは効率的な防除作業を行うための参考にとどめ、最終判断は人間の目で確認して行うようにする必要があることを知っておいてほしい。
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