シンとんぼ(43)食の安全とは(1)境界線は感情に左右される面も2023年5月13日
令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まったシンとんぼは、同戦略のKPIやスマート農業について、その有効性や今後の農業に与える影響などをひととおり検証してみた。検証結果は、農業の維持・発展に有益な面もあれば、もうひと工夫が必要な面、あるいは、まだまだ発展途上の面もあった。ただ、シンとんぼのNo.1でも述べたが、みどり戦略自体は目指すべき方向性として間違いないものだと思う。問題は、KPIの設定方法とアプローチの仕方であり、「なぜ〇〇%削減なのだ?」といったいわゆる取組理由が不明確なままになっているところだ。近い将来、それらが整理・公表され、それが農業に携わる皆さんが心底納得するものとなるならば、農業界が一丸となった取り組みが展開され、大きな成果が得られるようになると思う。シンとんぼは、ぜひともそのようになってほしいと切に願うばかりだ。
ところで、これまでみどり関係のKPI検証を進める中で膨らんできた疑問がある。
それは「食の安全」とは何かということである。これは、みどり戦略の大義である「安全な食糧を安定的に確保する」を実践するために常につきまとうものであるが、この「安全」と「安全ではない」との境界線は、実際のところあいまいで感情に左右されているように思う。
一般的に、「安全」はある数値以下であれば人が一生涯食べ続けても安全ですよと、動物実験のデータなどをもとに導き出された量を100倍以上の安全係数をかけて定量的に示すことが多い。
ところが、どんなに根拠のあるデータを示したとしても、その根拠データを信用しない人にとっては、どこまでいっても「安全」にはならず、科学的根拠を感情的に否定する。それは、作成されたデータが国の機関など、どんなに信用度が高いところが示したものであっても、信用しない人は同様に否定するだろう。
では、そういった方々はどのように生産したものであれば「安全」だと認識するのだろうか?
それは、いわゆる有機JAS認定済有機農産物のように人工物を一切使用せずに生産されたもののみを「安全」だと認識し、思考様式は「自然」=「安全」という単純な式で現わされる。
ところが、作物には毒性が分かっていない様々な天然物質が含まれていることが多く、それらの中には、何かと目の敵にされる農薬よりも毒性が強いものも見つかっている。
これがどういうことかというと、毒性が低くても農薬が残留していれば「安全ではない」が、農薬より毒性が強くても天然物であれば、たとえ作物に残留していても「安全」だと判断されるということだ。シンとんぼは、この辺に強い矛盾を感じるのだが、皆さんはいかがだろうか?
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