(350)単位と勉強時間【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2023年9月22日
現在の職場では後期の授業が来週月曜日から始まるため、今週は直前の準備期間です。
日本の大学の多くは1年間を前期・後期の2つに分けるセメスター制を採用している。これは1学期が半年に相当し、4~8月、10~1月くらいの期間で1回90分の授業を15回実施する形式だ。大学によっては半年をさらに半分に分け、年4期、つまりクォーター制のところもあるし、90分授業の代わりに100分授業を14回実施するところなどもある。
もともと、単位制度の仕組みや歴史は結構な議論がある。長くなるので割愛するが、90分(1.5時間)授業を15回実施すると、総時間では1,350分(22.5時間)になる。問題は、授業には予習と復習が伴う点だ。これがどのくらい必要かが実は現実的な運用面ではかなり重要点だ。
少し、視点を変えてみたい。一般社会人は週5日8時間労働、これで40時間だ。最近は週休2日が当然だが、この制度の導入は意外と新しく1980年代以降である。筆者も土曜日は半日出勤として社会人生活をスタートした記憶がある。
さて、土曜に5時間ほど働けば、週の合計労働時間は45時間となる。その半分は22.5時間である。つまり授業をただ受けているだけでは社会人の1週間の労働時間の半分にしかならない...と、無機質的に考えるとどうなるか。
そこに予習・復習が登場する。1単位であれば各々45分、2単位であれば各々1.5時間の予習・復習を想定すれば、合計労働(勉強)時間は想定通りになる...という訳だ。
それにしても、実際のところ、各科目で予習・復習合わせて3時間となると、大学生は大変である。1日3科目を履修した場合、授業以外に予習・復習だけで9時間が必要になる。よく言われる「海外の大学は授業の準備が大変」というのは、これを文字通り求められるからと理解したら良い。
やや古い資料だが、東京大学大学院教育学研究科の大学経営・政策研究センターがまとめた「第2回全国大学生調査(2018年)」の「第一次報告書」(注1)というものがある。これを見ると分野別に違いがあるとはいえ、「専門領域を問わず過半数の学生が1週間に1-5時間程度しか授業外の学習時間を行っていない。また、この傾向は前回調査からも大きく変わっていない」と記述されている。週に5時間ということは1日1時間以下である。
同じ報告書に高校3年生時の家や塾での1日の勉強時間について、「半数以上の56.3%の学生が一日3時間以上を家庭や塾での学習に充てている」(注2)と記述されているのとは余りにも対照的である。
さらに「7割前後の学生は授業とは関係のない学習・読書に2時間以下しか費やしていない」(注3)とも記されている。
一人一人の生活環境や事情が異なるため一概には言えない。ただ、大学に在籍してもバイトをする時間など本来は無いはず、なのだが日本の大学生の現実はかなり厳しい。
そして、筆者を含めこうした状況を憂慮する(であろう)中高年世代自体、自らの大学時代を振り返れば、偉そうなことは言えない人も多いのではないかという側面もある。
海外の学生生活を経験して言えることは、大学時代は遊びも必要だが、やはり徹底的に勉強することが重要であり、それが中長期的には国の総合力の基になるという点だ。そして、最終的には一人一人の生き抜く力を養うことにもなるという当たり前の結論である。
以前、古代エジプトのヒエログリフの中にも「最近の若い者は...」と嘆く老人の言葉が記されていたという話を聞いたことがある。筆者の感覚もそれに近くなってきたということかもしれない...。
* *
夏の疲れが蓄積する頃です。皆様、くれぐれもご自愛ください。
(注1)東京大学大学院教育学研究科 大学経営・政策研究センター「第2回全国大学生調査(2018)第1次報告書」、2019年8月、53頁。アドレスは、https://ump.p.u-tokyo.ac.jp/crump/cat77/cat82/22018.html (2023年9月21日確認)
(注2) 同、50頁。
(注3) 同55頁。
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