【浅野純次・読書の楽しみ】第93回2023年12月23日
◎小塚かおる『安倍晋三vs.日刊ゲンダイ』(朝日新書、979円)
日刊ゲンダイは安倍政権に対して一歩も引かず挑戦的な紙面を作り続けましたが、その足跡をたどりつつ(記事を多数引用して)「安倍的なもの」を徹底検証しています。安倍政治は過去のものと思っている方にも一読をお薦めします。
「失敗したアベノミクス」「こうして日本は軍事大国へ」「破壊された民主主義の根幹」「社会の分断」の各章は安倍政治の4大失政と呼んでよいもので、それらが政治、経済、社会的にしっかりと掘り下げられています。
夕刊紙と言えばセンセーショナルな見出しを思い浮かべる人が多いでしょうが、元同紙記者で現日刊現代第一編集局長の著者の筆致は抑制されていて説得力があります。
まだ道半ばだとか、雇用を増やした功績は大きい、など賛否相まったようにも受け取られるアベノミクスが実は0勝3敗だったこと、安保法制やモリカケ桜によってかつては懐の深かった自民党を徹底的に劣化させた一強長期政権だったことが明らかにされます。
全国紙やテレビなど大マスコミの自主規制、忖度ぶりが批判されるのも、安倍的なものが岸田政権に全面的に引き継がれているという指摘も、的を射ているのでは? 新書だといって侮れません。読み応え十分の力作です。
◎稲垣栄洋『雑草学のセンセイは「みちくさ研究家」』(中央公論新社、1650円)
章ごとにシロツメクサやらオヒシバ、コオニビシなどと雑草の名が列挙されているので、本文もそのようかと思い買い求めたのですが、雑草を導入部にした著者の青春譜のような一冊でした。
若かりし頃、どのようにして研究者の道に入ったのか、雑草学にたどり着いたのはなぜか、などそれはそれで面白いのですが、雑草学一筋に知見を得たい人には少々脇道が多い点は、あらかじめお断りしておきます。
とはいえ雑草をめぐる話題はさすがに豊富多彩で、面白く参考になります。例えば雑草は人間が暮らす場所にしか生えない、だから森の中には雑草と呼ばれる植物は生えないのだとか(山の中に生えるのは山野草で雑草とは区別されるそうで)。
あるいは「田んぼのスペシャリスト」タイヌビエ。人間が田んぼで稲に似ている雑草を引き抜き損ねた歴史が積み重なってイネそっくりになり、ますます引き抜かれずに生きながらえているとか。学生相手に饒舌なセンセイは読者に対しても饒舌この上なしでした。
◎ホームライフ取材班編『「老けない人」の習慣、ぜんぶ集めました。』(青春新書、1100円)
書店で目次を見たら面白そうなテーマがてんこ盛りだったので買って帰ったのですが、家人に取られてしまい戻ってきません。この原稿を書くために頼み込んで、ようやく暫時、取り戻しました。
ユニークなのは体や頭が老けない知恵がたくさんあるのは当然として、「老けて見えない」ことを重大な観点にして話題を選んでいること。姿勢、皮膚、髪、声など老けた人特有の状態を防ぐヒントが述べられているので即、参考になります。
例えば「水だけで洗顔すると老け顔になる」「味噌汁にオリーブ油で肌がつやつやに」「洗髪したらすぐ乾かさないと皮膚と髪が傷む」「日に3分、大声で音読すれば声と顔が若々しくなる」。
こんなヒントが100以上、並んでいて、どれから実行しようかと迷ってしまいます。食や運動は特に大事ですが、頭に良い刺激を与えることももちろん大事。「老け」防止のための意識を常に忘れないでいたいものです。
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