石破版の列島改造は中国を参考に【森島 賢・正義派の農政論】2025年2月3日
表題は、中国の実態に目をつむる、いわゆる識者にとって、奇異に感じられるかもしれない。彼らは、中国経済は崩壊の寸前にある、といっている。
だが、それは事実と違う。
中国経済を全体としてみると、最近、その発展の速度を、やや緩めている。しかし内陸部をみると、相変わらず目覚ましい発展を遂げている。その結果、国全体の経済格差を縮めて、均衡ある発展に向かっている。政治が国全体を、そのように改造しているからである。
これは、石破 茂首相が師と仰ぐ田中角栄元首相版の、列島改造論の目的と合致している。石破版の列島改造論といっていい。
石破版の列島改造は、田中版の列島改造を超えて、「楽しい日本」に、この列島を改造してほしいものだ。
下の図は、国際通貨基金(IMF)が1月に発表した世界各国のGDP予測を資料にしたもので、主要国について、GDPの2024―2026年の3年間の、年平均成長率をみたものである。
上の図から分かるように、中国経済は、それを全体としてみると、一部の論者がいうように、崩壊どころか、隆盛へ向かっている。
つまり、中国のGDP成長率は、インドとともにダントツである。両国とも、憲法で規定しているように、社会主義を社会の土台に据えていて、経済は隆盛へ向かっている。
これと比べて、米国や西欧の、市場原理主義による資本主義を社会の土台に据えた、いわゆる自由と民主主義を標榜する先進国は、各国ともGDP成長率は小さい。つまり、経済は停滞している。
わが日本をみると、ドイツとともにビリである。両国の、かつての栄光は、残念だが、いまや地に堕ちてしまった。打ち萎れてみる影もない。
◇
つぎに、中国経済を地域別に見てみよう。
中国研究者の瀬口 清之氏(キャノングロバル戦略研究所・研究主幹)の研究結果を、そのまま引用しよう。それが下の表である。
上の表は、中国を内陸部と沿海部・首都圏に分け、それぞれの主要都市について、最近の消費財販売額と常住人口の増加率を示したものである。
この表をみると、内陸部の経済発展は、沿海部と首都圏よりも活発である。
つまり、早くに発展した沿海部・首都圏の経済は、やや停滞しているものの、内陸部の経済は、依然として活発である。
これは、中国の全土の均衡へ向けた経済発展の実態である。
そしてこれは、政府の数十年前からの手厚い地方振興政策の、輝かしい成果である。
◇
いま、中国の地方経済は、衰退どころか全土の経済発展の原動力になっている。そして活気に満ちている。
その結果、日本のように、地方の衰退はない。中国では、地方は活気に満ちている。地方の過疎化はないし、地方消滅の危機などというものはない。
これは、中国版の「列島改造」の成果、といっていい。中国は「列島」ではないから、「全土改造」というほうが適切かもしれない。
◇
瀬口氏は、毎年4回ほど中国の各地へ行って、経済の実態を見ているようである。そうして、深い考察を加えている。
同氏によれば、最近、沿海部のレストランは、以前と比べて閑散としているが、内陸部のレストランは若い家族で賑わっているという。
このように、いま、若い有能な人たちは、続々と内陸部へ移住しているという。
また、最近の報道によれば、今年の中国の春節での旅行者の数は、過去最大を記録したという。
これらのことは、中国経済の衰退説への疑問を示している。
◇
さて、石破首相の政策全般については、疑問がない訳ではない。しかし、「美しい日本」にする、という政策は高く評価できる。
その中には「美しい農村」も含まれるだろう。そのさい、中国の経験は参考になるに違いない。
その実現を、大きな期待をもって、熱く待ち望んでいる。
(2025.02.03)
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