米価高騰問題を先物市場で考える【森島 賢・正義派の農政論】2025年3月17日
いま、コメ価格の高騰が社会問題になっている。、今後どうなるか。それを先物市場での実際の取引の事実を見て、考えよう
さて、先物市場だが、「先物買いのゼニ失い」と言って、先物を話題にすると、眉を顰める人がいる。
だが、神谷慶治先生は違っていた。ある時、「農村での講演会で先物の話をすると、一瞬だが会場が静かになる」と言われたことがある。
このことを、聞いていた我々学生は、先物市場の勉強をしておきなさい、という教えと思っていた。
さて、本題のコメの先物市場である。
コメの先物市場は、昨年8月に認可され、発足したばかりで、まだ取引量も少なく、将来のコメ価格を予測する資料としては、必ずしも十分なものではない。しかし、ここで将来予測を誤れば、売買する人は実際に金銭の損失を被る。そうした事実に基づく、いわば真剣勝負の結果であって、貴重な資料である。
上の図は、コメの先物市場として、日本で唯1つの市場である大阪の堂島取引所の資料によって、先物価格を図にしたものである。
これは、今年の6月限(ロクガツギリ)の先物価格である。つまり、今年の6月末に「実際に現物のコメを売買する約束」を売買する価格である。だから、今年の6月末には、先物価格と現物価格は同じになる。同じにならなければ、瞬時に利益を得る人と損失を被る人がでてくる。
今年6月末の現物価格が、いまの先物価格より高くなれば、先物を買った人は利益が得られる。だが反対に、安くなれば、損失を被る。高くなる、と予想して、買う人が多くなれば、先物価格は高くなる。だが反対に、安くなる、と予想して、売る人が多くなれば、先物価格は安くなる。
そのつどのセリ合いは、買う人の数と売る人の数が同じになるまでセリを続ける。 それが、セリの結果の先物価格である。
この先物取引は、今年の6月限のばあい、今年の6月末まで、毎日行われる。毎日、何回もセリが行われる。上の図は、その日の最後の取引で決まった先物価格である。
◇
さて、前置きが多くなったが、上の図をやや詳しく見てみよう。
ここで示した先物価格は、8月13日に先物取引が認可されたのだが、認可された直後から先週末までのものである。
開設直後で、取引量はまだ少ないが、売買者が、いわば人生を賭けた貴重な結果である。
ここで、今年の6月限を選んだ理由は、今年のコメの端境期の米価をどう予測するか、である。くり返すが、関係者の人生を賭けた予測である。根拠も薄弱で、天井を睨んで行った予測ではない。
◇
この図をみると、3つの山がみてとれる。それぞれが、政府の対策に反応したものにみえる。
8月下旬の急騰は、政府の見解によれば、問題は流通段階にあるといっていた。だから、出来秋になればコメが大量に出回り、米価は正常に戻る、といっていた。そして、秋には米価は回復する、というのであった。だが市場は、この見解に疑問を呈したのだろう。
12月の高騰は、備蓄米の早期の放出を催促したものだろう。
2月下旬の高騰は、備蓄米の放出が、あまりにも遅く、あまりにも少量だ、という市場の不満を反映したものだろう。
さて、今後どうなるか。
解決すべき問題は、備蓄米の大量の増産である。その運用であり、食糧安保政策である。抜本的な改革が必要である。
急ぐ。
(追記)
先物市場の資料ではなくて、現物市場の資料もある。今後、米価が高くなると予想する人は、実際にコメを買いだめておくのだが、品質を劣化させないために、温度と湿度を適正に管理しなければならない。しかも、価格を公表するのが、週に1回程度で、しかも遅い。だから、対策が遅れる。
それよりも、先物市場の資料は、毎日の夕方に、ネットで、その日の先物価格が公表される。だから、早く対策ができる。
これが、本稿で先物市場の資料を使った理由である。
(2025.03.17)
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