(427)卒業式:2日前と前日【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年3月21日
卒業式を2日後に控えた夜、研究室の3~4年生が集い、ささやかな「追いコン」を実施しました。
今年も街中に卒業式帰りの学生達をよく見かける時期となった。筆者の研究室では例年、卒業式の2日前に研究室の「追いコン」を実施する。「追いコン」という言葉も今や死語かもしれない。要は在校生による先輩の慰労と感謝を兼ねた飲み会である。
長い人生から見れば、大学時代は一瞬、中でも区切りとして重要なのが卒業式である。最近では学位記授与式と言うが、その理由は昨年No.376で記したので、ご関心ある方はそちらを見て頂ければと思う。
さて、飲み会の話に戻る。酒は少量を楽しむ程度だが、最近は飲み会を開いてもビールを飲む学生が本当に少なくなった。以前は「最初はビール!」という感覚が残っていたが、かなり変化してきたようだ。
割りと小人数(7名)での会食だが、「最初にビール!」は筆者のみである。学生達は各種のサワー、ハイボールなどを頼んでいる。何気なく見ると、「福岡あまおう苺サワー」など各地の名物を用いた果実サワーが人気である。当方も2杯目は「大分かぼすサワー」に切り替えて楽しむこととした。
大学により異なるが、筆者の勤務先では1月末卒論提出、2月中旬卒論発表会で学生達は全ての課程が修了となる。学生達は2月中旬から3月の卒業式までの間が本当の休みである。この期間は旅行に行く学生もいれば、くつろぐ学生もいる。意外と忙しいのは、卒業と共に東京や大阪などに移る学生だ。引っ越し準備がある。
飲み会には入社後、最初の2か月が研修で東京という学生がいた。その一方、卒論発表のすぐ後に東京へ行き、春からの住居の内覧をしてきた学生もいた。既に東京に移ってしまった学生もいる。各自の事情や考えはさまざまである。同じ研究室で過ごしてきたが、これから先は別々の社会人としての毎日が始まる。
一方、送る方の3年生は就活の最中だ。先月中旬、大手の就職情報会社が2月1日時点の内定率が既に40%近いと発表した。同じ時期の2年前が20%、昨年が24%というから現在の3年生の就活はかなり早期化が進んでいる。現在では50%を十分超えているらしい。なお、依然として企業の公式説明会は3月1日解禁というのもいかにも日本的で何とも言えない。
実際に飲み会に参加した学生達からは、とりあえず1つは内定を取ったという話からまだES(エントリー・シート)を出している最中、あるいは「お祈りメール」が来たとの話などが飛び交っていた。超高齢社会の日本で若者は貴重である。人手不足に悩む業界ほど早い段階で囲い込みたい。これに早く安心したい学生の気持ちと、就活のオンライン化が進展し、一旦話が進めば相当効率的にお互いの意志確認が可能な状況が生じているため内定率が早いと伝えられている。
大半の学生にとって、高校や大学の受験はせいぜい10程度の中からの選択である。それが就活になると一挙に数十どころか100以上の中から選択肢に直面する。今まで端が見えていたプールの中で泳いでいたのが、いきなり四方が海という大海原に放り出されるようなものだ。それでも多くの学生は何とか泳ぎ切り、自分なりの陸地に到着する。かつてはそこでキャリアの大半を過ごす人が多かったが、今では少し過ごした後、新たな陸地を求めて再び海に出る人も多い。
飲み会の翌日、静かなキャンパスに2人の卒業生が訪ねてきた。30代半ば、大波小波どころか暴風雨を何度か乗り越えて逞しくなった卒業生である。ひとしきり話をしたが、以前より一回りも二回りも大きくなり、貫禄もついてきた。学生時代の彼らの思い出が、飲み会での学生達と一瞬重なった。どちらもしっかりと進んでほしい。
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半世紀以上前に学んだ杜甫の漢詩の一節「今春看又過」が浮かぶ時期です。
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