備蓄米仕入に共同購買事業を開始する小売組合【熊野孝文・米マーケット情報】2025年5月13日
なかなか末端まで行き渡らない備蓄米。小売価格が値下がりしないこともあってか消費者の不満もさらに募っている。下がらない理由について、米穀業者の中には需給不安がある中で卸が備蓄米を温存したいという気持ちが働いているのではないかと解説する向きもある。また、玄米売買が解禁されたにも関わらず、米穀小売店には備蓄米が来ておらず、対策を求められた上部団体では備蓄米の「共同購買事業」を立ち上げ、傘下小売店に備蓄米が供給されるようにするというところも出始めた。
備蓄米が放出されたにも関わらず、市中価格が値下がりしない大きな要因として挙げられることの一つに備蓄米の「買戻し条件」がある。この条件についてはこのコラムでも何度か触れているが、「原則1年以内」の買戻し条件ということが売却要領に明記されており、この条文により応札を見送った集荷組合がいたほか、全農県本部の中にも3回目の応札を見送ったところや全農から買い受ける卸も全農から示された販売約定の中に「全農への売り戻し」が明記されており、これでは卸が備蓄米の購入に二の足を踏むのは当然だ。
政府備蓄米の買戻し条件付き売渡し要領では、条文の最後に売渡期日について「乙(備蓄米買い受け業者)は農産局長と協議することが出来る」と定められており、1年以内というのはあくまでも原則なのだが、同量同質のものを国に返さなくてはならないということには変わりない。つまり、農水大臣が備蓄米運営の見直しに言及しているが、買戻し条件の期限延期は見直さなくても出来ることなのだ。しかし、それがいつになるのか曖昧であることから購入した卸にリスクを負わせることになるため二の足を踏む。運営の見直しというからには「買戻し条件」を無しにして返さなくて良いことにする以外にない。
次に値下がりしない要因として挙げられるのが、備蓄米の供給量をプラスしても総量が不足しているということが上げられる。備蓄米の大半を購入した全農の6年産米集荷販売状況は、集荷数量は出荷契約に対して87%に留まっている一方、販売実績は出回りから10月末まで前年比127%、11月90%、12月99%、7年1月113%、2月85%、3月79%となっており、早食い数量が多かったことから4月以降に販売できる数量は84万8000tで、前年同期の110万tに比べ約25万tも少ない。こうしたこともあって全農が備蓄米を温存しているのではないかと受け取られ、農水事務次官が全農に対して備蓄米を最優先して供給することを要請するという異例の事態になった。
このため全農は5月9日に備蓄米の販売状況を公表した。それによると1,2回入札で落札した19万9270tのうち5月8日までに出荷した数量は6万3266tで、落札数量の32%になったとしている。また、販売先からの出荷依頼数量について7月までの月別の数量を示し、合計で14万363tになり、落札数量の7割になるとしている。
もう一つ挙げられているのは、精米や袋詰め作業の遅れ。農水省は米穀小売業界の要請を受けて備蓄米の売却要領を改正して「玄米売買」を認めたが、そもそも玄米流通が主流のコメ業界にあって玄米売買を禁止すること自体がおかしい。特定の業者しか精米させないというのはこうした業者の既得権益づくりを行っているようなものである。コメ業界の精米設備の稼働率は極めて低く、稼働率100%という会社は稀である。どこでも玄米で買えるようにすれば精米作業で販売が遅れるようなことはあり得ない。
先週、埼玉県の米穀小売商組合が傘下組合員に対して「F社とS社の協力により備蓄米が買えるようになりました」として1社20袋(1袋30kg)を上限に5月13日までに購入受付の通知をFAXで流した。価格は記載されていなかったことからFAXを受け取った小売店は抽選になるのではと見ている。米穀小売店が最も多い東京都米穀商業組合は、組合自体で共同購買事業が出来るようにして備蓄米を買い受ける体制を整える。また、日米連も備蓄米が加盟小売店に供給されるように斡旋事業の具体策を検討している。小売店の中にはこうした組合の対策では得意先の外食店など業務用の供給が間に合わないため、独自に備蓄米の仕入れルートを開拓して仕入れているところもある。その方法とは玄米の卸間売買が解禁されたことから、産地経済連から消費地の卸に玄米で買い受けてもらいそれを仕入れるという方法やダイレクトに産地から備蓄米を仕入れるという荒業も用いている。
こうした独自の仕入れルートを持っている米穀小売店は何とかなるが、そもそも一端集荷業者に備蓄米を売却せず、120社も登録している備蓄米買い受け業者に直接売却すればスピーディに末端に行き渡ったはずである。
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