知れば知るほど怖い小泉ホラー劇場【小松泰信・地方の眼力】2025年7月2日
「日本は30年40年にわたってわれわれから富を奪い続けてきた。だからこそ取り引きをするのが本当に難しいのだ」と、7月1日にトランプ米大統領が機中で記者団に語っている様子をNHKおはよう日本(7月2日7時台)が伝えた。
日本はアメリカに甘えすぎてるんだって
トランプ(引用以外は呼び捨て上等)はさらに、「日本はコメを必要としているにもかかわらず、われわれのコメを受け取らず、自動車も購入しない。日本とは偉大な関係を結んでいるが、貿易に関しては日本は非常に不公平だった。その時代は終わった」として、「わたしがやることは日本への書簡をしたためること。日本が求めに応じられないことは理解しているが、そのために30%か35%の関税もしくは、われわれが決定する関税を支払うことになる。われわれは巨額の貿易赤字を抱えており、アメリカ国民にとって非常に不公平だからだ」と、対日関税の引き上げを示唆した。
すでに6月30日に「各国が米国にどれだけ甘えてきたかを示す」とSNSに書き出し、実際は日本だけをやり玉に挙げて、「日本はわれわれのコメを受け取らない。深刻なコメ不足となっているのにだ」と投稿していたことを知っていたので、呆れることはあっても驚くことはなかった。
しかし厚顔無恥というべきか、世界一の加害大国のトップが被害者面して恫喝してくる姿は、哀れさすら感じたのだが。
それはさておき、「米国に甘えてきた国大賞」の栄誉にこの国が輝くとはとてもとても信じられない。「日本国憲法」より上位に位置する「日米地位協定」の存在を知っていれば、恥ずかしくてそのような発言は出て来ないはずだが。
最後は農業を差し出す!?
SNSへの投稿を受けて、「トランプ米大統領が、日本の少ないコメ輸入に矛先を向けかみついた」とする西日本新聞(7月2日付・東京、ワシントン共同)は、「コメは日本がこれまでの通商交渉で守り続けてきた"聖域"。安易に輸入を増やせば、参院選でも勝敗の鍵の一つとなるコメ農家の票の離反を招きかねず、関税交渉のハードルは一段と高まった」と伝えている。
記事によれば、日本政府は、対米交渉が始まった当初の4月、コメの輸入拡大案を検討していたそうだ。しかし、メディアがこれを報じることで、農業票の離反を懸念した自民党などから異論が噴出。そこで、自民党の森山裕幹事長が「工業製品を守るため農産物を犠牲にするような交渉方針は断じて受け入れられない」とする決議文を当時の江藤拓農相に手渡した。
さらに、交渉を担う赤沢亮正経済再生担当相は「農業を犠牲にする交渉をしない」と繰り返すようになり、実際の交渉でもコメの輸入拡大は米側に提案していないという。
本当かな? どこまで信じていいのかな? 4月にコメの輸入拡大案を検討していたとすれば、その後はすべて「猿芝居」。最後には、トランプの強硬な姿勢に押されて農業を差し出す苦渋の決断、とシナリオには書いてあるはず。
もちろん、コメの輸入拡大や小泉進次郎農林水産大臣の強引な米価下落策に対する農業者の不安や不満は拡大している。
当然それは、7月3日公示、20日投開票の参議院選挙に多大な影響を及ぼす。
それでもあなたはあの党に?
日本経済新聞(6月26日付)の〈参院選2025ルポ全国比例〉は、JAグループの候補がコメの流通改革に悩む姿を伝えている。つまり、消費者を強く意識した小売り米価を強引に下げる施策で自民党の支持は高まっているが、JAグループは生産者の保護を求めているからだ。
東野秀樹氏(JA出身・自民新人)には、「来年のコメの販売価格はどうなるのか」との不安の声や、価格抑制策に対する「ようやく生産コストに見合う価格になったところだったのに」との不満の声が届いている。
氏自身も、小泉農相の改革に「不安はある」とのこと。
自民が比例にJAの組織内候補を立てるのは農業票を狙ってのもの。他方、党勢回復の材料は消費者に寄り添ったコメ改革。
東野氏すらも「今年のような米価はあってはならない。5キログラムで3500円以内が適正価格だ」と家計に配慮した発言をするが、こうした姿勢は身内の農業者から「小泉にすり寄るのか」と批判が寄せられるとのこと。
そりゃそうよ。「今年のような米価はあってはならない」という台詞、自分自身が北海道でコメを作り、地元のJA組合長までやってきた者から出てくるはずがない。無理しないでね。
農協改革という名のJA切り売り準備
JAグループは自民党をもっともっと怖がらねばならない。
日本経済新聞(7月1日付)は、農林水産省の幹部人事(7月1日付発令)が、「10年ほど前に自民党農林部会長として農協改革に取り組んだ小泉氏の意向が色濃く映る」とした上で、「今後の農政改革では農協改革が本丸となる」と断じている。
JAグループと向き合う経営局長に就く小林大樹氏は、小泉氏が党の農林部会長当時、農協改革でタッグを組んだ仲。
コメの増産には輸出の販路拡大が不可欠として、輸出・国際局長に杉中淳氏が就く。氏は、「省内きっての改革派」で、農産物の輸出促進で実績を挙げ、総括審議官時代の24年には「食料・農業・農村基本法」の初の抜本的改正を取り仕切った。小泉氏は既存の取り組みにとらわれない輸出拡大策を杉中氏に託すとのこと。大規模農業至上主義者で、輸出だ、スマート農業だと、NHKの番組で語っているのを鼻白む思いで観たことを思い出した。
課長級人事でも、政策課長にはJAグループに精通する旧知の人物、コメ政策を担う農産局企画課長には国際派の人物を選んでいる。JAグループのいわれなき改革シフトが敷かれている。
記事は、小泉氏は党農林部会長だった16年、JA全農の組織刷新などの改革をまとめたものの、成就できなかったことから「負けて勝つ。改革への抵抗勢力がどういう抵抗手法を使うかはよくわかった」と述べたことを記し、「10年越しの課題に取り組む意思を人事で示している」としている。
「改革への抵抗勢力がどういう抵抗手法を使うかはよくわかった」との言葉、JAグループの関係者は聞いてるか。
当コラム、ジャパンハンドラーの手先が、その命を受けて、どのような手口で国民を分断し、政治家を分断し、組織を破壊し、アメリカに売り渡していくのか、あの「郵政改革」で知っている。
あれを強引にすすめたのが、進次郎の父ちゃん純一郎だったよね。小泉ホラー劇場は「オモテナシ」の「ウラダラケ」で怖いよ。
「地方の眼力」なめんなよ
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