【スマート農業の風】稲の収穫機と進化ロボットコンバイン2025年10月1日
スマート農機というとドローンやロボットトラクターなど、人の操作を軽減し、自動でまっすぐ走り、設定したルートを同じように運行する農業機械を指す。自動車の自動運転が世の中に表れて数年たつが、ハンズオフ(ハンドルを放して運転できる機能)できるのは高速道路に限定されている。これらを考えれば、スマート農機の自動運転はよほど進んでいると言える。しかも、自動車の自動運転は道路を運行するが、道路という規定がないほ場では自車の位置を正確に把握しなければ自動運転が成立しない。今回は、ロボット農機の自動運転とコンバインの進化についてお話ししたい。
スマート農機のうち、コンバインや田植え機、トラクターで展開されるロボット農機は、自動で動く農機だが、そもそも農作業の機械化が進まなければ存在しない言葉である。農作業は、人力から家畜による農耕へ変化し、機械化に至った。田植えの30センチ条間は、従来の農法に由来して田植え機でも同じ寸法になったのは有名な話である。
コンバインは収穫で使う機械だが、稲を刈り取ってその場で脱穀をし、もみの状態にしてくれる。もみは、オーガを使って、移動用のトラックに運ばれ、自宅の乾燥機やカントリーエレベーターに運ばれる。
デバイダー(刈り取って機械の中に運ぶ機構)の数で〇条刈りと表示し、2か所あれば、2条刈り、6か所あれば6条刈りとなる。デバイダーの幅は、田植え機の植え付け幅と同じで、30センチの条間に合わせて作られている。デバイダーの機能は、刈り取る稲を立たせ、保持しながらデバイダーの下についている刈刃(かりばまたはレシプロカッター)で稲を刈り取る。刈り取られた稲は、デバイダーの爪で抱えられながら、搬送チェーンで運ばれ、ドラム管に爪のついた脱穀部で叩かれて、もみだけを取り出す。この時、搬送チェーンでしっかり稲を保持するので、回転する脱穀部に稲穂を当て、もみだけを叩き落すことが可能となる。脱穀の終わった稲の茎と葉は、カッターで細かく切られ、田んぼに戻される。脱穀機で落とされたもみは、何層もの網を超えながら、もみとごみにより分ける。その時、人工的に風を送って、軽くて未熟なもみやごみなどもより分ける。いわゆる唐箕(とうみ)である。併せて、揺れる網の上を通過させて、比重選別(重いものは下に落ち、軽いごみは上に行く)もおこなう。
昔は、バインダーで稲刈りをし、はざ掛けで乾燥した後、脱穀機でもみを落とした。バインダーは稲を刈るだけの機械、脱穀機は脱穀するだけの機械だ。合わさったのでコンバインド(combined)「結合された、混合された、複数の要素が組み合わさった」の意味でコンバインと名づけられた。コンバインの登場後は、刈り取りの時に脱穀まで一気にできる生産体系になったため、乾燥機の重要性が増してきた。日本では、デバイダーのある自脱型コンバインが一般的で出現から50年ほどたっている。海外では普通型コンバインがあり大きなかご(リール)がついたコンバインが普通だ。小麦の収穫に使われることが多いが、最近では大豆、そば、米などでも使われ、ほ場の大型化に合わせ国内でも普及している。
コンバインで刈り取ったままのもみは、水分が多く保管ができない。またもみ摺りをおこなうこともできない。保管・もみ摺りのためには、乾燥機を使って水分量を16%にまで下げる。乾燥作業も急速に行うことはできず、時間をかけ水分を逃がしていく。消費者が米を購入するまで、乾燥の後、もみ摺り、袋詰め、出荷、検査、保管、倉庫から出荷、精米、販売用の袋詰めをへて、米屋やスーパーマーケットの店舗で販売となる。
最新のコンバインは、大型になっており、併せてキャビンの導入が進んでいる。収穫の秋といえども、稲刈りは暑い時期の作業となる。オペレーターは冷房の効いたキャビンで作業することで、ほこりや騒音・暑さにさらされるつらい作業からひとつ解放されるようになった。
また、GNSSという精密なGPSを活用し、AIカメラとミリ波レーダーも連携させたコンバインの自動運転・無人運転も始まっている。いわゆるロボットコンバインだ。自動運転は、GNSSで取得した人工衛星の位置情報から、作業を進める。まっすぐ進み最小の回転半径で無駄なく刈り取ることができる。無人運転はコンバインに乗車しなくても刈り取り作業をおこなうことが可能で、田んぼの外から機械を見て作業をおこなうことができる。TVのリモコンのような機械が付属して緊急停止させることができる。もちろん、AIカメラとミリ波レーダーで危険を察知しても停止する。ロボットコンバインは、人が操作をおこなわなくても作業が行え、また少しの補助作業で動かすことが可能だ。農業機械の操作は、熟達者でなくてもできる時代に突入した。
今回は、ロボットコンバインの話を中心に収穫作業に関わる機械化の話をした。日本の農業、特に米つくりに関わる農業機械の作業体系は、省力化・農地拡大に必要な技術であり、本連載で伝えているデータ活用型スマート農業にも必要な技術である。当たり前の話だが、最新の農機は、農業全般における機械化の流れがなければ起こらなかったイノベーションである。今後も農業機械の進化に期待をしたい。
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