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欺瞞に満ちた国民会議【小松泰信・地方の眼力】2026年2月25日

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税・社会保険料負担や物価高に苦しむ中所得・低所得の方々の負担を減らすため、給付付き税額控除の制度設計を含めた社会保障と税の一体改革について、超党派で構成される「国民会議」において検討を進め、結論を得ます。

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「国民会議」の名は体を表さず

 冒頭の一文は、高市早苗首相が施政方針演説(2月20日)で語ったもの。この後に、「また、同制度導入までの間の負担軽減策として、(中略)飲食料品については、特例公債に頼ることなく、2年間に限り、消費税をゼロ税率とすることにつき、スケジュールや財源の在り方など、その実現に向けた諸課題に関する検討を加速します」が続く。
 ここで気になったのが「国民会議」。政府や与野党のほか有識者や産業界などが参加し、国の重要政策を議論する会議の枠組みをさすが、必要性も含めてその位置付けに疑問を禁じ得ない。
 毎日新聞(2月21日付)によれば、参加の呼びかけが一部の党にとどまったことから、「『国民会議』の名に当たらない」などとして、与野党の国対委員長が20日、国会内で会談し、そのあり方についてゼロベースでの見直しを求めた。参政党や共産党には参加の呼びかけがなかったことに野党側が反発しての一致した要求。
 「野党が議論に参画する場は基本的に国会であるべきだ」と語るのは、重徳和彦・中道国対委員長。
 神谷宗幣・参政党代表によれば、自民側に問い合わせたところ「食品の消費減税に反対だから」という理由で会議に呼ばないと説明を受けたとのこと。「アリバイ作り。衆院で多数を得たから、サラッとやりたいのだろう」と批判した。
 「私たちは消費税は不公正な税制だという立場で国会論戦をやってきた。そういう主張は、あらかじめ排除するということだと理解するしかない」と語るのは、田村智子・共産党委員長。
 少数野党とはいえ、国民の代表を排除する会議に、「国民」という冠をかぶせることは欺瞞そのもの。与党内からも「国会で全党で審議した方がいい」との声が上がっているのも、ひとつの証左と言えよう。

「責任ある」姿勢とは感じられない

 北海道新聞(2月21日付)の社説は、「社会保障の給付と負担のあり方に関しても結論を得るといい、痛みをどう分かち合うかの議論は欠かせない」とした上で、「ただ、参加を呼びかけているのは給付付き税額控除に賛成する政党という。政権の追認機関ならつくる意味がない」と断じる。
 西日本新聞(2月21日付)の社説も同様に、「飲食料品の消費税を2年限定でゼロにすると、年間5兆円規模の財源が必要だ。その先の給付付き税額控除の制度導入も財源が課題になる。政府が全体設計をせずに、超党派の国民会議に検討を委ねるようでは無責任だ」と指弾する。
 高市首相が看板とする「責任ある積極財政」を強く意識するのは、神戸新聞(2月21日付)の社説。
 「飲食料品の消費税率を2年限定でゼロにすれば、財政悪化の懸念はさらに高まる。首相は超党派でつくる『国民会議』で夏前には意見集約し、税制改正関連法案の提出を急ぐ考えを示した。税控除と給付を組み合わせて中低所得者を支援する『給付付き税額控除』導入までのつなぎと位置付ける。実現すれば年5兆円ほどの税収減となる。首相は赤字国債には頼らないとするが、代わりの財源は固まっていない。議論を国民会議に委ねるのは『責任ある』姿勢と言えるのか」と迫る。

政権の暴走を許さない

 「『国民会議』って一体どんなもの?」という記事で、東京新聞(2月18日付)が紹介する識者の見解の要点は次の通り。
 「減税にともなうシステム改定のコストや財源の問題など、今後与党に集中しそうな批判を『野党も議論した』という実績をつくることで回避しよう、としているのではないか」(安積明子氏・政治ジャーナリスト)
 「なぜいま設置するのか、説得力が欠けている」「国会議員中心なら国会で協議体を設ければいい話で、『国民会議』と称するには無理がある。与党が方向性を示して法案を提出し、国会で議論するのが本来の形では」(伊藤惇夫氏・政治アナリスト)
 「『熟議で決めた』という大義になり、独裁的イメージを避ける戦略、反対するであろうリベラル系野党を追い込む思惑が透けて見える」(鈴木哲夫氏・ジャーナリスト)
 「有識者といっても官僚らの意向に沿った意見を出す人ばかり。結局、官僚主導で進んだ」「(今回に関しては)国民が選んだ代表で構成される国会でつくるべきで、衆参事務局や各党の政調担当者を入れたほうがいい。有識者も入れるなら、その選考過程を明示することが不可欠だ」(西沢和彦氏・日本総研理事・2012年設置「社会保障制度改革国民会議」の有識者委員)
 「国会での適正な手続きを経ず、熟議をスキップした方法を踏襲しかねない」「このような方法が繰り返されれば、名ばかりの法治国家になる。政権の暴走を許さないよう、どう議論の過程と手続きが進められるのか、国民は注意して見ていかなければならない」(西川伸一氏・明治大教授・政治学)

騙されません勝つまでは

 国民にとって、「国民会議」のイメージは、「国民各層の幅広い参加」「利害や立場の異なる主体の集合」による「国会の外部も含む熟議の場」である。今後、有識者の参画もあるようだが、抵抗政党を排除して行われるとすれば、論外である。
 よしんば、超党派で、有識者を交えての「国民会議」が開かれたとしても、厳しい監視の目を注がねばならない。
 なぜなら、「国民会議」は次のような問題点を内包しているからだ。
①「国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関」である国会をスルーしたにもかかわらず、あたかも「国民が合意した」かのような印象を与える。
②「国民会議で結論が出た」ことを錦の御旗として、国会での実質審議を「追認の場」に押し下げる。つまり、立法府内部の下位に位置付けられるべき会議体での合意内容が、立法府全体の意思決定を縛り、 国会審議を形骸化させることである。
③結果として、「国民会議」の合意事項への反対や慎重意見が、「国民の総意に反するもの」であるかのように扱われる。そして、「あの人たち、あの政党のせいで、国民が不利益を被ることになった」等々のネガティブキャンペーンに利用されることである。
 さらに高市首相が師と仰ぐ、故安倍元首相が頻用した「閣議決定」も「国権の最高機関」を素通りする危険な手法であった。
 高市氏も間違いなくこの手を使ってくる。われわれこそ、常在戦場におかれていることを忘れてはならない。

 「地方の眼力」なめんなよ

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