「葉っぱビジネス」けん引 いろどり代表横石知二氏【徳島・上勝町研修】JA全中ミライ共創プロジェクト2023年9月20日
徳島県上勝町の「葉っぱビジネス」からJAは何を学ぶか。JA全中は今年度から始めた「ミライ共創プロジェクト」で最初の現地研修(フィールドワーク)を、8月22~24日、徳島県の上勝町で行った。同町は山野にある木の葉や山野草を商品に変え、農家の所得につなげたことで知られる。人口1400人余りの山村で、どのように葉っぱビジネスを確立したか。(株)いろどり代表の横石知二に聞いた。
葉っぱをICTで商品化【徳島・上勝町研修】JA全中ミライ共創プロジェクト から続く
「人任せ」やめ「自らの役割」開拓
(株)いろどり代表
横石知二氏
私が最も大事にしているのは「現場」です。現場から離れると組合員とのつながりが薄くなってしまいます。いまも毎日、葉っぱ作業のため山に入ったり、市場に行ったり、走り回っています。
地域づくりには、人を生かすための舞台づくりが欠かせません。仕事は楽しく、やりがいがあるべきものです。大事なのは、仕事をしていて「楽しい」と感じられるかどうかです。そのためには、どこでどんなことをやったらいいか。必要なのはその舞台づくりです。
現場見て自信持つ
楽しく働ける舞台をつくるには、自分の住む地域に自信と誇りを持つことです。東京の帝国ホテルで開かれたディナーショーに参加したとき、葉っぱビジネスのおばあちゃんたちは、自分たちの採った葉っぱが何万円もするディナーに使われているのを実際に見て大変感動し、これがおばあちゃんたちの葉っぱビジネスの大きな自信と誇りになりました。
人にはそれぞれ役割があります。私は「みんな」という抽象的な言葉は使わないようにしています。重要なのは「自分」であり、「これをやれるのは○○さん」といわれるように、自分の役割が認められることが重要です。
人の弱いところは、誰かがやってくれるだろうと他人任せにすることです。自ら考えて行動する習慣を身につけて行動すると社会は変わります。これからは賃金、生活資材の価格が上がり、そのしわ寄せは農産物の価格に集中します。自らの役割を自覚し、前に向かって進みたいものです。
高齢化率50%を超える上勝町。高齢者が日本一元気といわれますが、実際は若い人をどう呼び込むかが大事だと考えています。町内では主要な仕事はほとんど20代、30代です。(株)いろどりの正職員8人は全員が町外の出身者です。いくら高齢者が元気でも続かない、高齢者、中年、若年それぞれ3分の1くらいずつが、ちょうどいいバランスだと考えています。
今の若い人は我々世代と価値観が違います。若い人は、お金よりも社会や地域に貢献する仕事をしたいと考えています。農協もそう。どれだけ社会、地域へ貢献しているか。SDGsと、難しい言葉を使いますが、要は地域に役に立つことです。こうした若者の考えを意識し、「僕も(私も)やってみたい」と思わせる見せ方、伝え方をしないと若者は来ません。
高齢者も十分対応
それと地域づくりに欠かせないのは、やはりICTです。いろどりの農家はほとんどパソコンを使っています。23年前に通産省の事業でコンピューターを導入しICT化を進めました。小さくても農家を横につないで束ねると大きな力になります。
お年寄りがパソコンを使えるのかという声もありましたが、JA職員として、組合員一人ひとりの生活やその経済状況をみんな把握していたので、できる自信がありました。いまは必要な情報はすべてLINEでやり取りしています。農協ではそれができていません。使えない人に不平等との理由のようですが、現実的ではないですね。
もちろん高齢者でも使いやすいようなシステムを開発し、キーボードは受注と情報のやり取りに必要なだけに絞っています。SNS、LINEの情報で価値観を共有する。これが新たなコミュニティーづくりになると考えています。上勝町の取り組みを参考にしていただきたい。
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