「地域の暮らしに貢献」 新世紀JA研究会2013年6月14日
全国のJAの常勤役員や幹部職員の研鑚と情報交流を目的とする新世紀JA研究会(代表:鈴木昭雄・福島県JA東西しらかわ代表理事組合長)は6月12、13日、茨城県水戸市で第14回セミナーを開いた。約170人が参加し、「地域の暮らしに貢献」をテーマにJA水戸や茨城県のJAグループなどが、それぞれの取り組みを報告し、意見交換した。
セミナーでは主催JAであるJA水戸の八木岡努代表理事組合長、JA茨城県中央会の加倉井豊邦会長がJAの取り組みを報告。またJA東西しらかわ(福島県)で取り組んでいる植物工場について、NPO植物工場研究会の古材豊樹理事長が、植物工場について解説し、その意義と将来性について話した。さらに取材地の高橋靖・水戸市長が「みとの魅力発信の取り組み」を紹介。最後にノンフィクション作家の吉永みち子さんが講演し、消費者・国民の理解を得ることの必要性を強調した。報告・講演内容の要旨を紹介する。
組合員とJAの経営にズレ
八木岡努氏(JA水戸代表理事組合長)
2年前組合長に就任したとき、現場とJAの経営の考え方にズレがあると感じた。農業、JAの先行きが見えないなかで、専業農家・兼業農家、正組合員・准組合員がそれぞれ本当に農協に対して満足しているのだろうか。どこからも中途半端なっているのではないだろうか。30余年イチゴをつくり、青果市場の役員を1年、JAの青年部長も務めてきたが、その経験の中から感じてきた。体でずれを感じている内に手をうたなければと思っている。
具体的に挙げると、次代への引き継ぎがある。組合員のところへ行くと、農協は子どもや若い世代に関係ないと見られている。農協は地域のライフラインだというが、留守のとき何かが起きたとき、弱者であるお年寄りや子どもは誰が守るのか。組合員だけでなく、もっと世間に理解される取組みが必要だ。
組合員のJA離れに歯止めをかけるため、組合員加入促進の運動を行い6000人増やした。組合員のJA離れではなく、JAの組合員離れだとも聞く。そうならないように努めたい。
伝統守りながら新技術導入
古在豊樹氏(NPO法人植物工場研究会理事長)
密閉型の植物工場には疑問を持つ声もあるが、農業は新しい技術を導入し、数々の危機を乗り切ってきた。日本でも保温折衷苗代や田植え機、ハウス育苗、さらに施設園芸などの技術革新がそうだ。伝統を守りながら、若い人が新しい技術に取り組む。歌舞伎の世界でも同じことがいえる。
いま植物工場に世界的な関心が高まっている。それは最少の資源で、安定的・計画的な生産が可能で、環境汚染物質の排出量を最少にすることができるからである。植物工場の生産コストは、おおむね初期投資が30%で人件費が25%、電気料が20%で、人件費の負担が軽い。また理論上365日収穫できることから、面積当たりの生産量は、通常の100倍も可能だ。
現在、日本で植物工場を経営している組織は150ほどと推定され、粗い推定ではその約20%が黒字、20%が赤字、残り60%が収支とんとんかわずかに赤字とみられるが、この数年黒字経営が増えている。ただ植物工場は農業における多様な植物生産システムの一形態と考えている。農業と他産業、あるいは農業と市民生活の距離を縮めることで、農業への理解を深め、新分野をめざす農業の後継者が増える契機になることを期待している。
直接経営と子育てに重点
加倉井豊邦氏(JA茨城県農協中央会会長)
農協は何のためにあるのか。当然ながら農家のためにあるのであって、上部団体のためではないはず。JA北つくばでは、19年産米のとき、全農より高値で買い取りを行った。これによってJAの職員がコスト計算できるようになったことが大きい。これまではたこつぼでしかなかった職員が大海に出て、大手の米問屋と交渉をするようになった。人は刺激によって、人を育てる・変わることができる。これはJAの経営にとって大事なことだ。
いま、JAで力をいれていることはJAによる農業の直接経営と子育て支援である。ただJAの農業経営は担い手に迷惑をかけてはいけない。担い手が引き受けない土地でやる。現在17haほどの規模になっているが、これから増える不耕作地にどう対応するか大きな問題だ。米づくりは初期投資が大きい。最初は損を出してもやらなければならないので、しっかりした経営基盤の確立が必要である。その上で地域から望まれることはどんなことでもやっていくのが農協の役割である。
TPP反対の運動は農業対工業の対立にしてはならない。国民的な運動にしなければ目的達成はできない。医師会、消費者団体と連携した取り組みは茨城県のJAグループが最初だと自負している。それと少子高齢化のなかで子育ての支援。JAの持つ人材、財務の資源をフル動員して、将来の農業のために取り組まないと、JA組織はいらないという財界の主張にのまれてしまう。
「守る農業」で運動拡大を
吉永みち子氏(ノンフィクション作家)
「JAを拠り所とした安心して暮らせる地域づくり」のテーマをどうイメージするか。言葉をバラして考えると問題がみえる。何のため、だれのための拠り所か。農地を守るのは生活のためか、農協のミッションのためか。そのためにはなにができるかというように考えて行くとよい。
いまTPPの問題で、農業は重大な岐路にある。政府が「るのではないだろうか。
「農業を守る」ことは分かる。しかし農業を守るとはどういうことか。農協を守ることになっていないか。反対運動に参加している人は農協の代表であって、農業者ではないのではないかと感じている人が少なくない。安倍首相はTPPへの対応で「攻めの農業」という。これに対抗するには「農業を守る」のではなく、「守る農業」であるべきだ。すると「守る農業とは何か」を考えなければならない。農家は所得を確保することはできるかも知れないが、国の食料自給率は低下している。その守り方がよかったのかどうか。外から指摘されたとき応えられるのだろうか。
農協は政府に要請するのではなく、国民、消費者に訴えることが重要だ。そのためには誰と、どのようなメリットを共有するのかを明確にして働きかけないと大きな運動にならない。
(写真)
「暮らしへの貢献」で意見交換する新世紀JA研究会のセミナー セミナーは最後に大会アピールを採択。第1項目にTPP反対運動を挙げ、「JAグループにおいて、TPPの危険性を喚起する世論形成を行うため、広く国民各層への広報活動を強化する」としている。このほか、持続性のある農業政策の確立、東日本大震災への対応、都市農業の確立などを挙げた。
◆TPP反対の世論形成を
セミナーでは大会アピールを採択。[1]TPP反対運動への世論形成[2]持続性のある農業政策の確立[3]東日本大震災への対応などを訴えた。
なお、同研究会は併せて開いた総会で役員改選を行い、新しい代表に藤尾東泉・JAいわて中央(岩手県)代表理事組合長、副代表に古谷茂男・JAはだの(神奈川県)代表理事組合長、高峰博美・JAあしきた(熊本県)代表理事組合長を選んだ。
(関連記事)
・新世紀JA研究会が要請活動 TPP反対運動の強化など訴え(2012.12.14)
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