JAの活動:今さら聞けない営農情報
【今さら聞けない営農情報】第15回 農薬の価格2019年8月23日
前回は、ジェネリック農薬(特許切れ農薬)について紹介しました。ジェネリック農薬は、オリジナル品に比べ、農薬登録を取るための費用が安くすむので、価格を抑えられるという話でした。では、そもそも農薬製品の価格とはどのようにして決まるのでしょうか。
農薬製品の価格は簡単にいうと、農薬原体価格+原体以外の補助成分価格+製剤試験研究費+製造費+販売管理費+物流経費という構造になっており、割合は50%程度が農薬原体の価格といわれています。これらの構成要素ごとの価格の上下が、農薬製品の価格に影響を与える構造となっています。
農薬原体とは、病害虫草に効果を示す有効成分そのもののことをいいます。農薬メーカーは効果がありそうな天然物や化学物資から有効な農薬原体を見つけ出しますが、これが大変な作業。3万の候補をテストしてようやく10くらいの有望なものが出る確率しかないそうです。その有望なものも、人畜毒性試験など厳しい安全性試験のふるいにかけられ、最終的に原体候補として残れるのは3万の候補から1つか2つの割合。もちろん、生き残りゼロということもあります。
農薬として製品化できる原体を見出すまでの経費たるや大変なもので、農薬の原体が特許に守られ、農薬価格の半分を農薬原体が占めるというのもうなずけるものです。
次に、原体以外の補助成分です。これは、製剤にして防除効果が出やすく、散布しやすくするために加えられるもの。農薬原体を作物の表面に付着させたり、作物体内に届けたりする成分や、水に溶かしやすくしたり、粒剤にするために固めるための成分です。
これらは、一般的な界面活性剤や、粘土質資材など農薬の製剤ごとにさまざま。種類や量によって農薬製品価格での構成割合が異なりますが、界面活性剤など油製品は石油価格に影響を受けます。
次に製剤試験研究費です。農薬製品は、農薬登録を受けて製品として世に出るために様々な試験をクリアしてきています。人畜への安全性を検討する毒性試験等は、農薬原体の開発の際にかかる費用で、基本的に農薬原体価格に含まれています。ここでいう製剤試験研究費は、より効果を発揮する製剤を検討したり、省力的な施用のための製剤を検討したり、病害虫草への効果を確認する公的試験にかけたりと、より現場で安全に省力的に使ってもらうための費用です。これらの試験経費は、政府の規制の変更によって、より多くの試験を課せられるなどして増加しています。
農薬の登録を維持し、使い続けてもらうために必要な経費ですが、古い農薬などを中心に新たな試験経費を賄うことができずに登録を失効する製品も出てきています。特に安くて良く効く農薬が失効するケースでは、現場の防除に大きな影響を与えます。
次に製造費は製造するための経費で、販売管理費は農薬を農家に知ってもらい、より安全に正しく使ってもらうための普及のための経費や人件費、メーカー利益など。物流経費はJAや農家の手元に届けるための流通経費になります。このうち、製造費や物流経費は、石油価格の変動に大きく影響を受けます。
以上、農薬製品の価格の成り立ちを紹介しました。実際には、物流の形態の違いや取引ロットの違いによって農薬製品価格に高低が出ることがありますが、これは流通の仕組みの中で起こる現象です。今回は価格の構成要素としては考慮していないことをお断りします。
本シリーズの一覧は以下のリンクからご覧いただけます。
【今さら聞けない営農情報】
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】てんさいの褐斑病が早発 早めの防除開始を 北海道2025年7月2日
-
JA貯金残高 106兆7563億円 5月末 農林中金2025年7月2日
-
日本の農業、食料、いのちを守る 「辛抱強い津軽農民」立つ 青森県弘前市2025年7月2日
-
「食と農をつなぐアワード」募集開始 優良な取組を表彰 農水省2025年7月2日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」JAおきなわ食菜館「とよさき菜々色畑」へおつかい JAタウン2025年7月2日
-
三菱マヒンドラ農機 ペースト施肥、紙マルチ田植機、耕うん作業機の販売強化2025年7月2日
-
外来DNAをもたないゲノム編集植物 作出を大幅に効率化 農研機構2025年7月2日
-
「2025年度農業生物資源ジーンバンク事業シンポジウム」開催 農研機構2025年7月2日
-
創立100周年記念プレゼントキャンペーン第3弾を実施 井関農機2025年7月2日
-
住友化学園芸が「KINCHO園芸」に社名変更 大日本除虫菊グループへ親会社変更2025年7月2日
-
フランス産牛由来製品等 輸入を一時停止 農水省2025年7月2日
-
【人事異動】ヤンマーホールディングス(7月1日付)2025年7月2日
-
長野県、JA全農長野と連携 信州産食材使用の6商品発売 ファミリーマート2025年7月2日
-
地域共創型取り組み「協生農法プロジェクト」始動 岡山大学2025年7月2日
-
埼玉県産農産物を活用「Made in SAITAMA 優良加工食品大賞2026」募集2025年7月2日
-
黒胡椒×ごま油でおつまみにぴったり「堅ぶつ 黒胡椒」新発売 亀田製菓2025年7月2日
-
近江米新品種オーガニック米「きらみずき」パレスホテル東京で提供 滋賀県2025年7月2日
-
外食市場調査5月度 2019年比96.9% コロナ禍以降で最も回復2025年7月2日
-
王林がナビゲート 新CM「青森りんご植栽150周年」篇を公開 青森県りんご対策協議会2025年7月2日
-
飲むトマトサラダ 素材を活かした「カゴメ野菜ジュース トマトサラダ」新発売2025年7月2日