JAの活動:今さら聞けない営農情報
有機質資材を活用した施肥(36)有機質資材利用の基本【今さら聞けない営農情報】第217回2023年9月23日
みどりの食料システム法が施行され、国内の肥料資源(特に有機質資材)を活用した施肥の重要度が増しています。そこで本稿では、堆肥、汚泥肥料、食品残渣、有機質肥料、緑肥作物といった有機質資材を有効活用するために、順次有機質資材利用にあたって理解しておきたい基本的事項をご紹介しています。
前回、緑肥の種類と上手な使い方が分かりやすく整理された資料をご紹介し、緑肥の特長から導入までの概要を紹介しました。今回は、緑肥作物の効果について若干補足します。
緑肥の活用は、「窒素肥料を収穫する技術」とも呼ばれ、持続的農業生産には欠かすことのできない技術ですが、経営面積が小さく化学肥料が安い場合には、コストが高くなり経済的ではありません。
しかし、窒素質肥料としての機能を持つと同時に有機質資材として多面的な機能を果たすことができるので、そのことを加味すれば、コストに見合う利益が期待できます。
緑肥作物は色々な機能を持っていますが、その効果は、作物と同様に作付けした場合と、成長した緑肥作物をほ場にすき込む場合とで異なります。
まず作付けで得られる効果です。その効果とは、水食・風食の軽減、根圏の改善、通気性・透水性の改善、塩類流亡の軽減、除塩効果、雑草抑制といったものです。これらは、作付けする土壌の種類や排水の良し悪しによって効果の度合が異なりますが、根圏の改善は、どの土壌にも共通して現れる効果です。
一方、すき込みで得られる効果は、緩効性窒素(ゆっくり効く窒素)としての機能、施肥量低減効果、通気性・通水性の改善、砕土性・易耕性の改善、保水性・保肥性の増強、緩衝能の増強があげられます。これらも土壌の種類と排水の良し悪しで効果の度合は異なってきますが、減肥(化学肥料の使用量減)の効果は共通して発揮されます。
ただし、緑肥を使用する場合には注意事項が何点かあります。
まず窒素飢餓です。窒素飢餓とは、土壌中の微生物が作物より先に土壌中の窒素を利用してしまい作物が利用できる窒素が少なくなって作物の生育に影響が出てしまう現象で、緑肥をすき込んだ場合に発生しやすくなります。
また、緑肥作物後に植え付ける作物は、緑肥と同じ科の作物を避けるようにします。例えば、緑肥がアブラナ科の場合、後作にアブラナ科の作付けは避けた方が得策です。なぜなら、連続してアブラナ科を植えると、土壌中にアブラナ科を好む土壌病原菌が選択的に増殖して土壌病害を引き起こし、生育不良となって収量・品質を低下させる、いわゆる連作障害を起こす可能性があるためです。
このようにいくつかの注意事項はありますが、これからの農業において、緑肥は欠かせないものとなりますので、活用にあたっては、それぞれの特性をよく把握した上でご利用下さい。
◇ ◇
本コラムに関連して、ご質問や取り上げてほしいテーマなどがございましたら、コラム・シリーズ名を添えてお問い合わせフォーム(https://www.jacom.or.jp/contact/)よりご連絡ください。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日