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JAの活動:2014年を振り返って

【インタビュー】TPPの中間総括を 加倉井豊邦・JA茨城県五連会長2014年12月26日

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・状況の変化に対応して
・専門的職員の育成を
・現場の努力と並行で
・常陸牛輸出に見通し
・災害復旧支援で貢献
・専門的職員の育成を

 2014年は後世、どのように評価されるか。TPP(環太平洋連携協定)や米価格の暴落、JA「改革」等、特に日本の農業・JAにとって、戦後農政の大きな転換期だったと記録されるであろう。JA全厚連・JA茨城県中央会の加倉井豊邦会長に、激動の一年を振り返っていただいた。(聞き手は田代洋一・大妻女子大教授)

JA綱領は憲法の前文に匹敵

◆状況の変化に対応して

加倉井豊邦・JA茨城県五連会長 田代 今年は、TPP(環太平洋連携協定)や「JA改革」、秋には米価の暴落、北関東・山梨の豪雪にみられる自然災害、さらにいまだ先の見えない原発問題と、まさに激動の年だったといえそうです。まずTPPについて、今年をどう総括しますか。
 加倉井 この1年も、JAグループはTPP反対の運動に取り組んできましたが、いま中間総括が必要なときではないでしょうか。交渉内容の情報が十分でないので明確にはいえませんが、依然多くの問題があるのは確かです。
 しかしISD条項や食の安全、食品表示などをめぐる内外の状況も変わっています。農産物の貿易分野では、明らかに日米交渉においてアメリカに切り込まれています。農産物と自動車の関係がどのようになるのかを正確につかんだ上で、国会決議を守るためにも日豪経済連携協定以上に不利にしないという方向に切り換えた方が、与党の先生方の理解も得やすいのではないでしょうか。
 政府による農政の転換で、茨城県では飼料米生産に切り換えました。それによって肉用牛の県内一貫生産体制づくりに取り組み始めたところです。技術的にもホルスタインに和牛の受精卵を移植して、品質のよい和牛を効率よく生産することもでき、さらにはホルスタイン種の雄雌の産み分け技術もある程度可能になっていると聞いています。いま市場で60万円台の繁殖素牛が40万円台になれば頭数を増やすことも困難ではないでしょう。

(写真)
加倉井会長

◆現場の努力と並行で

TPP反対で運動をリードするJAグループ このように現場で着実に努力しながら、世界の国々とどう折り合いをつけていくかが重要です。そうすればTPP交渉に対する反対運動のあり方も違ってくるのではないでしょうか。それが現実的だと思います。
 田代 評価すべきことは評価し、争点を明確にすべきだということですね。貿易関係では、茨城県はベトナムに、さし入り常陸牛を売り込んでおられます。
 加倉井 駐日ベトナム大使との友好関係から、今年3月にチュオン・タン・サン国家主席が茨城県に来られました。10月には県知事を先頭にオール茨城100名余がお招きをいただきました。JAグループと県を挙げて取り組んだ結果、ベトナム・ハノイのホテルと「常陸牛(ひたちぎゅう)肉販売推奨店」海外第1号店として輸出契約を結びました。契約のときは、「常陸牛」のPRとして、さしの入った牛肉のにぎり寿司をふるまい、在ベトナム企業や政府関係者の方々にも大変好評でした。
 米の価格暴落は生産調整のルールが守られていないことに問題があったのではないでしょうか。特に茨城県などは業者による庭先取引が多く、こうした業者は生産調整に対して消極的な実態があります。農家(組合員)の安定した農業経営のためにも、需給バランスを見極めた計画生産・販売が重要です。全国でも資金力のあるJAは、買い取りなどの努力で販売力を強める事例もあります。
 田代 それができるのは財務基盤がしっかりしている単協だということですね。ところが規制改革会議は、その単協に信用・共済事業を分離しろといっていますが。
 加倉井 在日米国商工会議所の意見書がありますが、規制改革会議が今年の5月、最初に出した「改革」論と、まったく内容が同じです。このことをもっとPRし、広く国民に知ってもらわなければなりませんが、そこがJAグループの弱いところではないでしょうか。

(写真)
TPP反対で運動をリードするJAグループ

◆常陸牛輸出に見通し

農産物の輸出が緒についた。茨城県の「常陸牛」をベトナムへ輸出した際のレセプション(10月7日) 米の過剰対策は、飼料用米への切り換えしかないでしょう。茨城県では3年で7000haの飼料米を作付する計画を打ち出しました。過剰作付面積と同じくらいの規模です。これを農家に納得してもらい、誘導していくため手間を惜しんではだめです。私はこれができるのは、地域に根を張った事業を展開する農協だと思っています。
 飼料米を増やすためには、畜産を伸ばさなければなりません。常陸牛のベトナム輸出はこの一つで、小さな針の穴かも知れませんが、一応の道筋はつけたと思っています。今後はそれを広げていきたい。政府は農産物の輸出1兆円という目標を掲げているのですから、実現するための具体的な後押しをしていただきたい。全中や全農も農家所得向上の重点施策として、政策要求などで責任を持って支援してほしい。
 田代 今年は自然災害が多く発生しました。そして茨城県は県内に原発があります。JAグループは、大会で脱原発を打ち出しており、再稼働反対の方針ですね。
 加倉井 必要電力はなくてはなりません。しかし、茨城県は過去に東海村のJCO臨界事故もあり、茨城県は2度目の原発被害です。原発のある東海村の周辺人口は100万人が生活をしており、避難計画を立てるのは大変な困難が伴います。本県の東海第二発電所は運転開始から36年を経過しており、運転期間を40年とした法改正などを踏まえて、再稼働反対をJA大会で決議しています。
 問題は、なぜ原子力発電が安いのかということです。産業廃棄物処理の責任は企業にもあるということが原則であり、それが原発ではなぜ例外なのでしょうか。産廃である使用済み核燃料や放射能汚染物質の最終的処分場が決まっていないのです。また、電力については独占状態で、競争相手がいないというのはよくないと感じています。省エネ、代替再生エネルギーへの移行を含め、被災された方々の実態を踏まえ国民的運動に広めていくことが重要です。
 田代 今年は台風や竜巻、豪雪、集中豪雨など自然災害が多く、その支援で、JAは存在感をしめしました。

(写真)
農産物の輸出が緒についた。茨城県の「常陸牛」をベトナムへ輸出した際のレセプション(10月7日)

◆災害復旧支援で貢献

出来秋には米価が暴落。25年産米より安い新米も店頭に並んだ 加倉井 地球温暖化が進む中、自然災害は地球規模でこれからも続くでしょう。それにはJAは地域支援をしなければなりません。県内でも一昨年、つくば市で大きな竜巻がありました。その時はJAが呼びかけ、生協さんなどからもボランティア支援もいただき本当に感謝しています。地域農業と組合員の営農と暮らしを守るのはわれわれの仕事です。災害はないことが望ましいですが、私たちJAは、どんな災害にも支援できる体制をつくらなければなりません。
 田代 西川農水大臣が、地域のことはJAのやることではないといいましたが、これをどう考えますか。
 加倉井 問題は農業を産業政策としてしかみていないことです。農政は地域政策、社会政策としての性格を持っています。そこに農協が存在するのです。例えば、厚生連の病院がそうでしょう。地域のことに関わるなというのなら、地域医療はどうなるのですかということになります。
 JAの事業は地域インフラとして十分機能しています。それが必要ないというのは明らかに間違いです。農協法第1条の「目的」に、「農業者」とあるのを「農業者ならびに地域の…」と、「地域」の文言を入れるようにしたらどうでしょうか。現実に即した意味になります。地域に農協はいらないと言われる規制改革会議にこの現実を認めさせることが重要ではないでしょうか。
 田代 現実を見るということでは准組合員問題もそうですね。全厚連会長としてどう考えますか。
 加倉井 大事な問題です。救急車で病院にきた患者さんを組合員であるかどうかで区別しますか。正に非現実的なことです。まずは、現場の現実をきちんと知ってもらう、そしてその意味を法律に書き込ませること、これが運動として一番大事なことだと思います。
 地域医療を支える公的医療機関には日赤、済生会、農協(厚生連)があります。農協の病院は公的医療機関だから行政の支援が受けられるのであって、それ抜きで運営は不可能です。来年度の開院に向けて土浦市に厚生連病院を移転新築しますが、周辺自治体にとっても必要な病院だから支援をしてくれます。県知事もすぐ動いてくれました。
 田代 多くの厚生連病院は経営的に厳しい状況にありますが。
 加倉井 特に今年に入って消費税の引き上げにより、全国的に病院の経営が悪くなっています。病院は医療事業充実のため、MRA(磁気共鳴画像)など高額な医療機器の更新や薬品・材料の購入をしていますが、その消費税分は利用者には転嫁できません。国は診療報酬で補てんしていると説明しますが、実質平均で60%くらいしか補てんされず、残りは病院の持ち出しです。従って消費税が10%になるとその増税分は病院経営を直接的に圧迫することになります。抜本的に医療事業のあり方を考えないと、病院の継続は困難になります。
 私たちが主張していることの一つは、公平な税制度となるように医療にかかった消費税を政府から還元する仕組みを要請しています。本来は患者さんが負担すべき消費税を、国の指示によって病院が払っているのですから、極めて筋の通ったことです。

(写真)
出来秋には米価が暴落。25年産米より安い新米も店頭に並んだ

◆専門的職員の育成を

 田代 規制改革会議などで、農協の員外利用規制が「改革」論の槍玉にあがっていますが、これをどう考えますか。
 加倉井 員外利用は規制すべきではありません。現に問題なく機能しているのですから。私は一つの方法として、員外利用者の経営参加権を当面3分の1で認めていくべきではないかと考えています。私たち自身も岩盤に手を入れて真剣に対応すべきだと思います。
 田代 総審では合併の推進を挙げていますが。
 加倉井 合併は賛成です。合併をして出向く体制を確立しなければなりません。普段の組合員とのコミュニケーションが大事だからです。それには専門教育の研修が必要ですが、一定の財政基盤がないとそれができず専門的な知識を持った職員が育ちません。営農経済事業も専門性を高めるためには支店の統廃合も必要です。
 田代 来年前半は農協法改正が出るでしょう。TPPも決まるかも知れません。来年の課題は。
 加倉井 全厚連の立場では、いかにお医者さんを育て、確保するかです。能力とやる気があり、地域に尽くしたいという人には、積極的に奨学金を出すくらいの支援はしたい。そのような組織にならないと医者不足は解消しないでしょう。卵の時から、少しづつでもよいから手掛けようと思っています。
 農協はすばらしい力を持っています。リーマンショックのとき、1週間で1兆9000億円の出資金を集めました。協同組合は、弱い者が一緒にならなければだめです。モチベーションがあってイノベーションが生まれる面もあり、競争はあってもよい。しかし弱い者は、お互いで活かし合い、学びあわないと、私たちの組織は必要とされなくなります。そのことが、憲法の前文に匹敵するくらいすばらしいJA綱領に明記してあります。あらためて綱領を見直し、協同組合運動の一層の発展に努めたいと思っています。


【インタビューを終えて】

 県・全国の農協のリーダーとして今年の回顧と課題の展望をしていただいた。農業面では〈米価下落対策→生産調整政策→飼料米の生産→畜産の技術革新による高品質肉の生産→ベトナムへの輸出〉という一貫した対策を農協がリードすべきとされる。
 また農協は脱原発という明確な方針を打ち出し、自然災害対策でも存在感を示し、地域インフラとしての役割を発揮している。しかるに厚生連病院は消費税引き上げで赤字に追い込まれた。それに対して税の還元措置が必要である。病院ひとつとっても准組合員利用、員外利用の規制の非は明らかだとしつつ、同時に准組合員への経営参加権の付与、専門性を高めるための農協合併の推進などの課題も指摘される。
 このような、JA綱領の原則堅持と柔軟で計画的な対応を追求するリーダーシップのますますの発揮を期待したい。
田代洋一

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