JAの活動:第63回JA全国青年大会特集号
JAのリーダーは青年部から(1)【座談会】2017年2月11日
明文化し、組織挙げて養成を
座談会:JA青年組織に期待する
村上光雄氏(広島県JA三次・前組合長、元JA全中副会長)
若林英毅氏(山形県JA山形おきたま理事、元JA全青協会長)
大金義昭氏(文芸アナリスト)
農業生産者として実質的に日本の農業を支えているJA青(壮)年部は、いわばJAのリーダーの養成機関であり、部員はその予備軍である。農業・農協改革という大きな転換期にある今日、JA青年部は何をすべきか、JA全青協の役員を含め、青年部活動に青春を燃やした村上光雄・JA三次(広島県)前組合長、若林英毅・JA山形おきたま(山形県)理事に対談してもらった。(進行は文芸アナリストの大金義昭氏)
大金 JA青年部の活動は究極のところ「人づくり」運動だと思います。青年部活動の経験豊富なお二人が、青年部の活動参加のきっかけを含めて、活動から何を学び、得たものは何であったのか。来歴を踏まえて話して下さい。
村上 私が広島県の旧三和町の組合長になったのは39歳のときでしたが、役目を果たすことができたのは青年部の全面的バックアップがあったからです。さらに、全青協の役員も務められた同じ農協の先輩組合長がいました。その方は36歳で組合長に選ばれ、立派に運営されました。それもあって「農協は青年部に任せてもいい」という雰囲気があり、現役を含め、役員の半分以上が青年部活動の経験者でした。農協はすなわち青年部だということで、地域における青年部の地位が高まり、そのバックアップで楽しく、おもしろく組合長を務めることができました。
若林さんより一回り前の世代ですが、昭和53年広島県の青年部の委員長、翌年全青協の副委員長になったころ、米価値上げや輸入自由化阻止に青年部が、農政課題として取り組みはじめました。私は昭和39年に就農しましたが、45年から本格的な米の生産調整が始まって米価が抑えられ、自動車を輸出する見返りとして輸入圧力が強まり、牛肉、オレンジ自由化が問題になりました。
当時、農協は組織を上げて自由化反対運動に取り組んでいました。特に農産物の輸入自由化には、私ども後の世代の人たちが体を張って抵抗してきました。それが今のTPP阻止の運動などに引き継がれているのだと思います。
農協運動を通じた今の私があるのも青年部活動のおかげです。政策要求の運動をするなかでいろいろ勉強させてもらい、地域、県内だけでなく、全国に多くの仲間ができました。その延長線上で組合長をさせていだだきました。委員長として、さまざまな場面でのあいさつや意見表明や交渉ごと、盟友の意見集約などが、人間形成のための研修の場になったと思っています。
大金 青年部の活動が若い世代の農協学校の機能を果たし、お金には換えられない人のネットワークができたということですね。
◆ポリシーブックが軸 / 現場の声を具体的に
若林 そうです。私は全青協で育てられました。大きな成果は人と情報が得られたことです。祖父も父も若いころ青年部活動をしていました。私はそれに反発するところもあって、青年団活動をしていましたが、農協青年部の3役が急に抜けたことから役員をやれといわれて青年部との関係ができ、町、置賜、県の委員長、全青協の会長を務めさせていただきました。
当時、青年部は北朝鮮に米を送る運動などに取り組んでいたこともあって革新的組織とみられていた面もありますが、運動のメインだった米価は上がらず、また青年部の活動がなかなか広がらないこともあり、政策決定の中に入って具体的な政策提案・要求をしようということに方向を変えました。それで立ち上げたのが「全国地域リーダー農業政策研究会」です。そうそうたるOBの会員がそろい、農水省の新人職員の研修などにも呼ばれ、メンバーからは国会議員が出るなど、その存在が広く認められるようになりました。役が終わっても、その当時の人のつながりがあり、今も多くの面で助けられています。
大金 青年部が部員を育てる学校の役割を果たし、実践的批判者として責任ある政策提言をおこなうのだということは、歴史的にも高く評価されるのではないでしょうか。
村上 その意味で、ポリシーブックができたのはすばらしいことです。青年部は単に不平不満をいうだけでなく、自分の経営の中から問題を咀嚼(そしゃく)し、政策として要求するという意味でも「大人の組織に」ならなければならないと思っていました。
農水省は、若い農業者が具体的に理路整然と述べると弱く、現場の苦しみの中から積み重ねた意見には説得力があります。地域の農業を変えるための先頭に立つのは青年部の大きな務めです。われわれが単発的にやっていたことを、若い世代がポリシーブックにまとめてくれたのだと考えています。問題点がよく整理してあり、自分たちがやること、JA・行政がやるべきことがまとめられており、分かりやすい。JAのトップに要望しても、JAにいうことと、行政にいうべきことをいっしょにしては効果がありません。青年部の先輩として、正しい方向へ持っていってくれたと評価しています。
◆行動で国民の理解を
大金 米価値上げや輸入自由化反対では青年部が先頭に立って大衆運動を仕掛けて激しく闘った時代がありました。しかし、時代背景が変わり、それだけでは何も変わらない。具体的な政策要求を提案し、政策にコミットしようということになったのだと思います。ポリシーブックには、現場からの積み上げによる主張と、それに基づいた行動目標を明確にするという2つのコンセプトがあって、よく整理されていますね。
村上 ただ、ポリシーブックで、いくらいいことを言っても、発言しなければ意味がありません。この点で農業青年は発言する訓練ができていません。このため、かつて中国ブロックの青年部で活動していたころ、青年部で「農業青年の主張」を始めました。それがいま、全国大会でメインの企画になっています。人前で発言することは、すなわち人づくりであり、青年部が人間力形成の学校でもあります。
若林 リーダーによる政策研究会のなかでも、ポリシーブックの対外的アピールが足りないという議論が出ています。加えて、今の青年部は農水省との接点がないように思います。内容はすばらしいのですが、これをどう活かすかが問題だと思います。
村上 それは青年部組織だけでありません。農協グループ全体の課題です。JA全中も自分たちの考えをしっかり出し、いまのような政府の「農協改革論」に対して、対抗軸をはっきりさせなければなりません。
地域農業、コミュニティが大切だということを明確に示し、農業は大規模経営だけではなく、多様な農業が大事だという視点で訴えていかないと、国民の理解を得ることは難しいでしょう。青年部活動で根付いた要求運動を起こすことです。そのことで、自然に組合員の理解が得られます。
大金 青年部は盟友が減少し、かつて30万人を誇った組織も、いまは6万人。この状況をどうみますか。
(2)はこちらから(自覚と責任を持って、意見吸収の仕組みを、認定農業者で参画を / JA役員教育の場に、言うべき事しっかり)。
(写真)上から座談会、若林英毅氏
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