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JAの活動:JA全国女性大会 花ひらく暮らしと地域 時代を変える女たち

【特集:第66回JA全国女性大会】「米=水」守るせっけん力 環境保全に女性部率先 山形・JA庄内みどり遊佐女性部2021年1月26日

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山形県のJA庄内みどり(1994年に酒田市と遊佐町の9JAが合併)遊佐女性部は、合併前の1974年から合成洗剤追放とせっけん使用の活動に取り組み、1994年には「石けん研究会」を立ち上げ、学校給食の廃食油等を使ったせっけん作りに取り組んできた。40年余に及ぶこの活動はJA事業や行政施策にも多大な影響を及ぼすとともに、女性組織の活動にも多くの示唆を与えてくれると思われるので、紹介したい。なお、遊佐女性部員は424人で、せっけん活動のほか、食と農に関わる活動や多彩な文化活動に取り組んでいる。(取材・構成:根岸久子・日本協同組合連携機構客員研究員)

遊佐町

リサイクルに先見の明


石けん活動のプロセス・契機

女性部の「石けん活動」は、合併前のJA遊佐が生活クラブ生協と米の産直事業を開始した直後の1974年に、生協からのJA女性部と話し合いたいとの申し入れで訪問した際、合成洗剤追放に取り組んでいた生協組合員からスライドや実験などで合成洗剤の問題点を知らされたことから始まった。

普段使っている洗剤の危険性に大きなショックを受け、これを機に合成洗剤追放と天然素材のせっけん使用運動、廃食油でのせっけん作りがスタートした。

同町を流れる月光川は水田の取水量が最も多いが、町内のほとんどの排水が流れ込むため、合成洗剤使用は田んぼの水汚染につながるとの生協からのメッセージに応えたのである。

女性部として取り組むことを決めると、すぐさま合成洗剤に関する学習を始めるとともに、共同購入の予約品目にAコープのせっけんを加え、78年には合成洗剤を除き、80年には共同購入から合成洗剤取り扱いを中止した。さらに、町議会に合成洗剤の使用排除の請願書を提出。それ以後JA店舗での販売や公共施設では使用していない。

「石けん研究会」のみなさん「石けん研究会」のみなさん

「石けん研究会」の設立
廃食油を使った手づくりせっけんを広げるなかで、93年にはJAの助成でミニプラントが設置された。これを管理・運営する「石けん研究会」を発足させ、せっけん作り(粉せっけん)と販売に取り組むこととし、商品名はJAックル(JAのリサイクルという意味)と決めた。

2002年にはミニプラントを一基増やし、固型せっけんづくりも開始した。

原料となる廃食油は学校給食と家庭の廃油(現在は学校給食のみ)で、品切れにならないよう教育委員会が必要量を聞いてくるという。また、油の状態が一定でない廃食油のため成分を調べ研究を重ね、商品化までに苦労した。10年ごとに記念誌も発行してきた。

販売先は女性部(遊佐地区女性部の共同購入、JA庄内みどり女性部など)、遊佐町のAコープ店舗、遊佐駅、道の駅、軽トラ市(商工会主催の歳の市)のほか各種イベントにも出店。

研究会は初期のメンバーの高齢化で減少し今は5人となったが、せっけんづくりだけでなく活動継続のために必要な次世代へつなげる努力をしていきたいとのこと。最近2人が加入し、その一人は「以前から女性部活動には親しみがあったので退職後に入会」と語っている。

JAとの協働
女性部担当者が「JAは、"石けん活動"を産直米づくりに必要な水を守るために欠かせない活動として位置づけている」と語るように、JAは「石けん活動」を女性部の活動の一環として位置づけ、「石けん研究会」の設立当初から遊佐町と共に助成金を出し、農協敷地内にある工房の機械が故障した際にはJAが対応している。

なお、町内Aコープ店では合成洗剤は今も取り扱わない。

JAックルと石けん「JAックル」は「JAのリサイクル」の意味

取り組みの特徴せっけん普及へ

学び、そして行動
一つは合成洗剤の問題を知るための学習の徹底で、それは、(1)班や集落単位の学習会(2)多彩な資料づくり(パンフレット、ちらし、情報誌など)(3)学習グッズの購入と貸し出し(8.16ミリフィルム、ビデオとビデオ一体型テレビなど)(4)商品テスト資材づくり(5)講演会などで、こうした多彩な学びときめ細かな実践を繰り返してきた。

そして、こうした学びを共同購入の見直しや町議会への請願書提出等につなげ、「学びと実践」のサイクルで前に進んできた。

地域ぐるみの取り組み―すばやく反応した小学生
もう一つは、清流を守るには地域ぐるみの取り組みが欠かせないとし、地域住民に合成洗剤の問題点を知らせ、共に学び、行動しながらせっけん運動を進めてきたことである。そのために、各集落への立て看板設置、せっけんちらしやポスターの全戸配布、公共施設などへのポスター設置等の宣伝活動とせっけんづくり指導などの二本立てで取り組んだ。そうした中で地域組織との連携もすすみ、せっけん利用を地域に広げていった。

なかでも、重視したのが子どもたちに伝えることで、1993年からは毎年、遊佐町内の各小学校の5~6年生にせっけんの出前授業を行ってきた。そのなかで、自分の家の近くの川が町内で一番汚れていることを知った5年生の男子が「汚い川は僕がきれいにしてあげるよ」と、子どもたちで川をきれいにする行動を起こし、親たちも協力するという出来事もあった。

2018年からは「遊佐町エコ・すまいるゆざ」(町民参加で地球温暖化防止活動を進める組織)からの依頼で、毎年7月に小学生親子とエコ・スマイル会員らを対象に水環境の話と牛乳パックを使った固型せっけん作りを教えている。メンバーは「この時だけで終わらず、その先も子どもたちがせっけんを使ってくれたらいいなと願いながらしています」と語る。

見える活動 青年部との協働で「運動」

さらに、「なぜ、せっけんなのか」を多くの町民に知らせたいと、「見える活動」にも次々と取り組んだことである。それは「石けんキャラバンイカダ下り」(月光川)、「石けんまつり」(かかしコンクール、青空市、園児の歌と踊り、仮装コンクール町内パレードなど)、公共施設でのせっけんPRなどで、町外行政などからも招かれせっけん運動を広く発信してきた。

こうした活動ができたのは青年部と協働で行ったからで、そこには「長年、遊佐の女性部と青年部は東京での生活クラブとの交流会に参加し、米づくりと水は一体で、米作りに欠かせない水を合成洗剤で汚してはならないとの理念で一緒に活動してきた」からだという。

「石けん活動が支えた産直の広がり」と協働の地域づくり

1974年からスタートした旧JA遊佐町と生活クラブとの米の産直は、産直米の共同開発や多様な農産物の産直へ、さらに生協組合員の産地訪問、交流会、援農へとJA合併後も進化・発展してきた。

その間には月光川の取水口上流にアルミ再処理工場が進出し(1998年)、JAは総代会で「操業中止・移転」を決議、町には移転を求める署名を提出したが、その際、生協組合員から町に運動費1700万円のカンパが寄せられ(工場は翌年に移転)、町はこれを基金に「月光川の清流を守る基本条例」を制定している。

こうした長期に及ぶJAと生協、遊佐町との協働を基に、2013年には3者による「地域農業と日本の食料を守り、持続可能な社会と地域を発展させる共同宣言」を締結し、協働して町づくり、環境、農業振興に取り組むことを決めた。

その宣言の中では「遊佐町での交流は、単に食料供給基地として環境保全型農業を目指すだけでなく、JA女性部がせっけん運動を通して水環境の大切さを訴え続けるなど、この地域の環境保全の取り組みの重要な柱ともなってきた」と述べ、「石けん運動」を高く評価している。

最後にJA庄内みどり広報誌(2020年4月)の「組合長が聴く」欄で語っている「石けん研究会」会員の声を紹介したい。「リサイクルが一番の目的なので、廃食油で作ることに大きな意味がある」「米=水というモットーでやってきた」「環境に良いせっけんを使って、きれいな水を守り、その水で作った米なので安心して買ってほしいということ。活動の先に水があるから続けてこられた」と語っている。

ちなみに、2019年から生協組合員の援農メニューにせっけんづくりが加わった。

【取材を終えて】
私も使っている「JAックル」

JAと生協、遊佐町をつなぐ多彩な事業の要といえる「安心・安全」な農産物づくりを支える「石けん活動」がこれからもずっと続いてほしい。これはSDGsの目標に合致した活動であり、今後より一層多様な活動が必要となるので、産直などに関わる男性たちも一緒に男女共同で「米=水」を守って欲しい。それは10数年前に「石けん研究会」に出会って以来、「JAックル」を使い続けている私の思いでもある。(根岸)

【特集:JA全国女性大会 花ひらく暮らしと地域 時代を変える女たちの記事一覧】

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