JAの活動:【2024年新年特集】どうする食料・農業・農村・JA 踏み出せ!持続可能な経済・社会へ
【提言2024】農家の所得補償が鍵 評論家 三橋貴明氏2024年1月17日
2023年、世界は地球沸騰化の時代に突入、地上ではロシアのウクライナ侵攻が続き、さらに中東情勢も深刻化、混迷と対立が深まるなかで2024年を迎えた。本紙新年特集は「踏み出せ! 持続可能な社会へ」をテーマに、世界情勢と日本の未来を見越して、農政をはじめとした政治、政策、そして農業協同組合への提言を幅広く識者に発信してもらう。
評論家 三橋貴明氏
日本の食料安全保障を考える際には、ポイントが二つある。一つ目は、食料安全保障は「一次エネルギー」から我々の消費に至るまで、一貫して考えなければならないという点である。
分かりやすい食料安全保障の指標として、食料自給率がある。ご存じの通り、日本のカロリーベースの食料自給率は38%(2022年)と、主要国最低水準だ。もっとも、実は日本は食料(※配合飼料含む)に加えて、種や化石燃料、工業用原料も「輸入」している。
例えば、化学肥料を生産するためには、リン、カリといった原料を輸入し、さらにアンモニア精製のために化石燃料(天然ガス)を燃やさなければならない。昨今、リンやカリの輸入激減が問題になっているが、そもそも輸入依存度が極めて高い化石燃料なしでは、化学肥料の生産はできないのだ。あるいは、農地でトラクターを動かすのにも、軽油が必要になる。化石燃料の輸入が途絶えると、それだけで日本国内の食糧生産は激減する。
エネルギー安全保障と食料安全保障は、表裏一体で捉える必要がある。
二つ目。食料安全保障を成立させるためには、「国家(政府)」が財政支出で農家を「保護」しなければならない。そもそも、日本の国土は山がちで、「地平線の向こう側まで農地」であるオーストラリアや米国の農業と比べ、生産性が低くて当たり前なのだ。国土条件上、生産性を上げにくい日本の農業が、米豪の農業と「自由な市場競争」をしたところで、初めから勝ち目がない。
無論、WTOに加盟している以上、関税をかけることはできない。ならば、欧米諸国に倣い、財政政策で「農家を保護」する必要がある。米でいえば、米価の保障や過剰在庫の政府による買い上げ、さらには農家への所得補償である。
無論、財務省は猛烈に反対するだろう。
だが、未だに財政均衡主義を掲げ、緊縮財政を強行しようとする財務省の壁を突破しない限り、日本の食料安全保障の強化や「持続可能な農業」は達成不可能なのである。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日