トキと共生する佐渡市で全国棚田サミット (1)2016年8月18日
棚田には夢がある!
-棚田の価値を知り・活かし・継承するために-
第22回全国棚田(千枚田)サミットは7月14~15日、離島では初の新潟県佐渡市で行われた。大会テーマは見出しのとおりで、全国から棚田保全活動にかかわる関係者約700人(うち島内から200人)が参集。高齢化や担い手不足によって全国的には危機的な状況に直面する中で、農業的・環境的・文化的な価値を持つ棚田の活用と幅広い交流による未来継承方策などについて、六つの分野から暑い議論を展開した。(長野県小谷村/吉田忠文)
全国棚田(千枚田)連絡協議会は、棚田を有する市町村、各種団体および農業生産者・消費者・研究者など個人が、棚田保全活動を通じてネットワーク化を図り、地域の活性化をめざすことを目的に平成7年に発足、高知県梼原町で全国サミットをスタートさせた。
新潟では第4回の安塚町、第15回の十日町市に次いで3度目の開催となる。
会場のアミューズメント佐渡大ホールでは、14日午後1時30分からオープニングセレモニーが行われた。秋の全国高校文化祭に新潟県代表として出場する羽茂(はもち)高校郷士芸能部員30人が「佐渡おけさ」など伝統的な舞曲を四曲舞い、金井小学校五・六年生全員125人が合唱曲「おそすぎないうちに」(第22回全国棚田サミットバージョン)を披露し、参加者に感銘を与えた。 大会は午後2時から始まり、昨年度のサミット開催地である佐賀県玄海町長・岸本英雄協議会会長の挨拶に続いてサミッ卜実行委員長の三浦基祐佐渡市長が「島で初の大会であり、トキと共生する佐渡での体験交流を通じて、夢のある棚田の無限の価値を追究し、各地域での具体的な活動に活かしてほしい」と述べた。
◆里山資本主義の藻谷さんが基調講演
佐渡総合(農業)高校の女生徒4人による「世界農業遺産」に関する事例発表のあと、日本総合研究所主席研究員の藻谷浩介さんが「日本を変える里山のチカラ」と題して基調講演。一極集中が続く首都4都県の現状と将来、小さな自治体で若年層の減少に歯止めがかかっている田園回帰の例を示しながら、「長期にわたって少子高齢化が避けられないわが国では、東京よりも食料やエネルギーが自給できる地方にこそ、永続の可能性がある」と里山資本主義の持論を展開、棚田保全への努力と幅広い交流への期待を強調した。
◆六班に分かれて多彩な事例発表と活発な意見交換
その後、三分科会・「棚田のまもりびとミーティング」・首長会議・初めての「U30(アンダーサーティ)棚田サミット」の六班に別れ、活発な意見交換を行った。その概要は次のとおりである。
○第一分科会 テーマ 「棚田には米がある」
佐渡JAファーム代表取締役・板垣徹さんを座長に、コメンテーターは斉藤真一郎(佐篦トキの田んぼを守る会)さん、パネリストに金子真人(農事組合法人達者農産)・山本亮(輪島市地域おこし協力隊)・西山京子(料理家)さんの三人が事例報告を行い、棚田米や農産物の付加価値化など、棚田の資源を活かす方策を協議した。
○第二分科会 テーマ 「棚田には命がある」
座長は豊田光世(新潟大学朱鷺・自然再生学研究センター准教授)さん、コメンテーター佐々木邦基(佐渡生きもの語り研究所)さん、パネリストの中村浩二(金沢大学特認教授)・本間太郎(海利用研究会)・竹田和夫(新発田高校教諭)・大野広幸(埼玉県未来保有会理事長)さんらを中心に、世界農業遺産を守る事例を紹介するなど、人と自然が共生する価値やこれからのライフスタイルのあり方等を議諭した。
○第三分科会 テーマ 「棚田には温(ぬくもり)がある」
座長は守山明能(七尾自動車学校副社長)さん、コメンテーター南雲純子(元佐渡市観光戦略官)さん、多田寛子(農家民宿女将)・連河健仁(ドリームアイランド小豆島)・斉藤倫子(岩首集落)・千田倫子(佐渡芸能伝承機構副理事長)さんをパネリストに、棚田らしい体験・交流の創出、棚田が持つ人を癒すヒーリング効果やその活かし方、集落の祭りや伝統文化を切り口にした交流促進などを話し合った。
(写真)かつて最大5haあった小倉千枚田、急斜面の狭い棚田50aをオーナー製で腹田(※1~3は大会プログラムより)、オープニングで伝統舞曲を舞う羽茂高校郷土芸能部員、開会式で挨拶する岸本会長(佐賀県玄海町長)
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