畜産酪農 苦境を訴え「現実直視し異次元の支援」求める 全国代表者集会2023年12月1日
JA全中は11月30日、東京都内で令和5年度畜産・酪農全国代表者大会を開いた。現場の生産者が飼料価格の高騰や畜産物の販売不振で離農を余儀なくされる地域の仲間の苦境を訴え、持続可能な畜産・酪農経営に向けた「異次元の支援」(JAオホーツクはまなす・永峰勝利組合長)を求めた。
畜産酪農対策単独での集会は15年ぶり。全中の山野徹会長は「離農する生産者も跡を絶たず、わが国の畜産酪農の基盤は弱体化が進んでいる。関係者が同じ方向に向け一致団結して危機的な状況を乗り越えるべく一歩ずつ取り組みを進める必要がある」と話し、出席した与党議員に「現場の不安を払拭し持続可能な畜産酪農経営に尽力を」と求めた。
山野徹 全中会長
代表要請を樽井功全中酪農対策委員長が行い、適正な価格形成と飼料価格高騰対策、万全な経営安定対策の措置などを求めた。
自民党の江藤拓総合農林調査会会長は適正な価格形成については、「関係者が同じテーブルについて議論を始めたのが成果。引き続き努力する」と述べるとともに、自給飼料の増産に向けては水田の畑地化支援と耕畜連携を進める重要性や、今後策定する「地域計画」のなかに「飼料生産も入れることが大事だ」と述べた。また、生乳の需給調整の取り組みに不公平感が出ている改正畜安法については「不公平感を早く是正しなければならない」と話した。
江藤拓 総合農林調査会会長
大会では生産者から現状が報告されるとともに決意表明を行った。
岩崎勝也会長
宮崎牛肥育牛部会長会の岩崎勝也会長は、牛肉輸入自由化や口蹄疫で牛を失うなど苦境から脱するなかで「畜産は地域経済にとっても大事だ考え、不安はあったが前を向いて宮崎牛の生産を続けてきた」と話したが、現在は飼料価格の高止まり、枝肉価格の低迷などで「息子たちのやる気すら奪おうとしている。やめていく生産者、継がせることをためらう生産者がいる」と現状を指摘。
それでも「将来が展望できる状況ではないが、消費者のおいしいとの声と笑顔に力を得て、仲間と家族で世界の食卓に届ける決意だ。継続的な支援が措置されることを望む」と述べた。
新林牧場 柴田瑞穂さん
秋田県由利本荘市で酪農を営む新林牧場の柴田瑞穂さんは「今、酪農家は目の粗いふるいに掛けられている状態。飼料の見直し、電気代のこれまで以上の節約などあらゆるところに目を注いで経営をしている」と実態を話すとともに、周囲の耕作放棄地を草地として再生して粗飼料自給率を上げる努力をしているほか、出前牧場への取り組みなども紹介し、「次女が就農を希望している。祖父が始め父母が基盤を作った酪農を娘に渡すことが目標。消費者に安心安全な牛乳乳製品を届けるようこれからも生産を続けていく」と決意を語った。
JAオホーツクはまなす 永峰勝利組合長
JAオホーツクはまなすの永峰勝利組合長は、地域の酪農家91戸で11万tを生産していることを紹介し、そのコストは4年前の74億円が今年は99億円への25億円上がったのが実態だという。しかし、支援策は4億円程度で「あまりにもわれわれに負担がかかっている。畜産酪農は地域の基幹産業でこれが力を失くすと地方は壊滅の危機」と訴え「現実を直視した異次元の支援をお願いしたい」と訴えた。
また、生産抑制と脱脂粉乳の在庫対策に酪農家が今年は3.5円/kgの拠出金を支払っているのにアウトサイダーは「1銭も払っていない」として「改正畜安法の最大の問題は地域間の分断と組合員の分断にある」として現場を直視し「法改正を」と強調した。
大会では万全の経営安定策の確保などを求める決議を採択した。
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