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農政:トランプの世界戦略と日本の進路

【トランプの世界戦略と日本の進路】農産物で譲歩して工業製品安泰の保証なし 九州大学名誉教授 村田武氏2025年5月12日

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米国トランプ政権の関税政策は保護主義的な様相を強めている。「シリーズ・トランプの世界戦略と日本の進路」に寄せて、九州大学名誉教授・村田武氏が、WTO体制下での米輸入政策の歪みやトランプ政権による日米貿易協定破りを批判。農産物で安易に譲歩する日本政府の交渉姿勢の危うさを指摘する。

九州大学名誉教授 村田武氏九州大学名誉教授 村田武氏

WTO交渉でミニマム・アクセスの設定

GATTのウルグアイ・ラウンドで、1995(平成7)年に、各国の農業保護を容認していたGATTに代えて、農産物輸入国にも自由化を強制したWTO(世界貿易機関)協定を成立させたのは米国であった。「自由貿易」を掲げ、EUとの農産物貿易摩擦の解消をめざした交渉の余勢を駆って、わが国を含む農産物輸入国にも自由化を強制したのである。

わが国政府は、米の輸入数量制限・国家貿易を支えてきた食管制度の廃止とともに、1986年から88年の輸入実績が国内消費の3%以下であった米について、「最低輸入量」(ミニマム・アクセス、MA)を国家貿易で4%(42・6万トン)を輸入し、毎年0・8%づつMAの輸入枠を6年間にわたって増やし8%にすることにした。その後のWTO農業交渉を迎えるにあたり、政府は1999年に米の関税化に転換し、精米の枠外関税を341円(kg)に設定し、関税を払えば誰でも米を自由に輸入できるようになった。MAについては、消費量の7・2%(76・7万トン)を関税無しで受け入れることになったのである。

MA米は最低輸入義務ではない

本紙(JAcom 2022年11月1日付)は、「ミニマム・アクセス米の落札価格 国産米の1・5倍 輸入中止を 農民連が指摘」と報じた。ウルグアイ・ラウンド農業合意そのものは、MA枠全量の輸入を義務づけてはいない。ところが政府は統一見解として、法的義務の内容は輸入機会の提供にあるとしたうえで、「ただし、米は国家貿易品目と国が輸入を行う立場にあることから、当該数量の輸入を行うべきものと考えている」として全量を輸入してきたのである。これには、米国との裏取引があったに違いない。その矛盾がはっきりしたのが、2022年9月のMA米一般入札の米国産うるち精米中粒種の契約価格が、60kgでは1万3716円と国産米の価格水準を大幅に上回ったのである。

情けないトランプ政権の対日要求―2020年にTPPから離脱したトランプ政権が強制した「日米貿易協定」の約束も守れない

今年4月中旬の第1回日米閣僚級会議で、米国側からは、米・牛肉・ジャガイモ・自動車分野での市場開放が要求されたという。日本側の代表、赤沢亮正経済再生担当大臣は、「包括的な合意」の推進を望み、農産物での譲歩と引き換えに、トランプ政権の工業品関税の撤廃をめざすと表明したとされている。報道によれば、MA米(2024年度)の45%に当たる34・6万トンは米国産米で、そのうち主食用は10万トン、この主食用米を6万~7万トン増やす案が、財務省筋から流されているという。

トランプ大統領は、その就任(2017年1月)直後に、米国にとって不利とみた「環太平洋パートナーシップ協定」(2018年末に発効)から離脱し、2国間協定に走った。事実上の自由貿易協定である「日米貿易協定」(2020年初頭に発効)がそれであった。この協定では、日本側の農林水産品の関税については、TPPの範囲内に抑制したとされている。米が含まれず、WTO協定が引き継がれた理由については、米国の対日米輸出産地であるカリフォルニア州は民主党の牙城であって、トランプ政権には米について関心がなかったのだという指摘もある。

重要なのは、この日米自由貿易協定の第5条3項には、「この協定のいかなる規定も、締約国が関税の維持または引き上げを含む行動であって、WTOの紛争解決機関によって承認されるものをとることを妨げるものと解してはならない」とある。

米国はWTOの紛争解決機関の委員長の選出を妨げ、それを機能不全に陥らせており、そのうえで日米貿易協定を破っているのである。ここに見るのは、WTO協定で自由貿易を主導した結果が基幹産業の国際競争力を失わせ、国際競争力をもつのが農業でしかないという「金融国家」に走った米国の悲劇である。

貿易交渉相手の先頭に祭り上げられたわが国は、トランプ政権にはくみしやすい相手だと見くびられているのだろう。農産物輸入で譲歩したとしても、米国の対日貿易赤字の解消には程遠い。トランプ政権はそのことは十分に理解しており、90日間の「10%相互関税」猶予の間に、ともかくも日本から譲歩を得て、それを外交交渉のモデルとすることに賭けているのであろう。

わが国が農産物で譲歩しても、10%の相互関税はともかく、24%の追加関税をわが国だけに撤廃する保証はまったくないのではないか。日本側の交渉団は、それこそ石破首相の「のらりくらり」を体現して、交渉を引き延ばすべきである。トランプ政権は、世界中を敵に回した「関税措置」をいずれ引っ込めざるをえなくなる。「WTO協定破りには不同意だ」という外交姿勢を堅持してこそ、わが国は国際社会からの評価を得ることができる。

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