農政:JAは地域の生命線 国の力は地方にあり 農業新時代は協同の力で
総合農協支える 全国組織改革を JA全中 奥野長衛会長インタビュー(下)2016年10月5日
共同購入、共同販売で結集力を高める
◆成長産業化へ 取り組み強化
――9月8日に決定した「魅力増す農業・農村の実現に向けたJAグループの取り組みと提案」でJAグループは「共同販売」、「共同購買」の取り組み強化を基本方向としています。
一方、政府・与党の議論では農業の「成長産業化」のためには個々の農業経営者が農産物販売でも生産資材購買でも、自由に選択できる環境を整備することが重要だと強調されているように思いますが。
新農協法になったといいながらも農業協同組合は独占禁止法の適用除外の扱いになっています。つまり、共同販売、共同購入という考え方があるからです。私はそこがキーポイントになると思います。
自由に競争していく流れのなかで多様な要素を入れながらも共同購入、共同販売、結集力で勝ち抜いていく必要があります。そのためにどのようにシンプルな組織構造にして、コストダウンしていくのか、1円でも多く手取りを増し1円でも安く良い資材を供給していくか、スリムというと人を切るイメージになるので、シンプルな組織に、そのことが今回の改革の目玉になると思っています。
それから本当のスペシャリストを育てなければなりません。とくに全国段階では今の世の中にあった本当のスペシャリストを育てていかなければならないと思います。日本の国内市場はどんどん縮小していきます。米の消費は今年間8万㌧減るといわれていますが、加速度的に減っていくのではないか。
そういうなかで日本の生産力を維持していかなければ日本の農業は衰退するだけですから、私は外へ出て行きましょうと提案をしているわけです。そのときに大事な輸出のためにどのような専門家を育て、どういう組織形態にする必要があるのか、それを議論する段階に来ていると思っています。それは地域農業を大事にするために外に対する販売力をしっかりと持っていくということです。そうすればその利益は地域に返ってくるわけですから。
――今の問題に関連すると思いますが、会長が最近強調されている農業を「生業から産業にする」ということについて、改めてその思いをお聞かせください。
農業というのは地域で営む生業には違いありませんが、マーケットが縮小していくなかでは今のままだと農業が衰退してしまうから、外に出ていく取り組みをしようということが産業としての農業にしていくということです。何も安倍総理の言っていることに迎合しているわけではなく、成長していくというイメージのない産業に従事しようという人は出てきません。やはり産業として成長していくという姿をきちんと見せることができれば農業に入ってくる人も出てきます。
◆サポートセンターと一体で
――最後に、自己改革の取り組みで強調したいことをお聞かせください。
都道府県につくった県域のサポートセンターを機能させることが重要です。担い手サポートセンターという名称や三重県ではJA事業サポートセンターといっていますが、県域で中央会、連合会から人とお金を出してつくりました。
県段階で横糸を通すのはそのセンターです。そのセンターがJAに何が足りないのかしっかり考えて支援していく母体になります。まだ生まれたばかりですが、しっかり育てればJAと一体となって行動していける。
今回、われわれが取り組むJA自己改革の象徴的な組織改革だと考えています。
・JA全中 奥野長衛会長インタビュー (上) (下)
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