農政:緊急特集:日米貿易協定
【緊急特集:日米貿易協定】畜産農家の意欲に水差すな 坂下栄次JAこばやし代表理事組合長2019年10月10日
日米貿易協定はだれにとって「ウインウインの合意」なのかを検証するこの緊急特集の第2回は、畜産を中心に地域農業・地域経済を振興している宮崎県・JAこばやしの坂下栄次組合長に、農水省が行った説明会で述べられた意見を中心に聞いた。
日米貿易協定について、先に行われた農水省農政局の説明会に出席し、4つの問題で意見を述べてきた。
一つは、TPPの水準をもって全てよしとする協定はいかがなものかと言うことだ。TPPの協定自体が問題であるにもかかわらず、その枠内であれば何をやってもいいというのでは、日本の国は崩壊してしまうだろう。
そもそもTPPを脱退したアメリカとの交渉を、TPPの水準からスタートさせるのはどういうことか。牛肉のセーフガードにしても、TPP協定の後から交渉するアメリカにも同じ輸入枠で発動するというのは問題だ。今後、他の国と、同じような2国間貿易交渉があると、TPP並み、あるいはそれ以上の譲歩を迫られることは明らかだ。
そして2つ目は気候変動と食料の問題である。食料自給率37%という世界の先進諸国で最低の水準は、農業だけでなく、将来日本の国を危うくする恐れがある。食料・農業・農村基本法で目指す45%の自給率水準を実現するための、具体的な施策を講ずるべきだ。
3つ目は農産物の輸出拡大である。牛肉の輸出拡大を中国や東南アジアに求めて欲しい。まず窓を開けることが大事だ。小窓でもいいので、窓を開けなければ光が差さない。和牛の品質には自信を持っている。相手国の消費者がその価値が分かると、輸出を増やすことできると考えている。
4つ目は今後の対策で、食料自給率を10年、20年後には40~50%にするとか、将来のために農地を維持するとか、長期の農業ビジョンを示して欲しい。JAこばやしの農業は畜産が中心で、畜産によって地域の経済が成り立っているといっても過言ではない。子牛の価格がいいことから、将来を夢見てクラスター事業などで畜産に取り組む意欲的な若い人も多い。彼らに水を差すようなことはしないで欲しい。
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