分子標的農薬の共同研究で新規除草剤のリード化合物創出に成功 アグロデザイン・スタジオ×PFN2021年11月8日
農薬スタートアップの株式会社アグロデザイン・スタジオは、株式会社Preferred Networks(PFN)との共同研究で分子標的農薬の開発を4月に開始。6か月の短期間で新規の農薬リード化合物の創出に成功した。同化合物は、農薬の作用点として知られるアセト乳酸合成酵素(Acetolactate synthase:ALS)を分子標的とした低分子化合物で、酵素に対する阻害効果と初期植物生育阻害試験における薬効を確認した。
アブラナ科の植物「シロイヌナズナ」のアセト乳酸合成酵素(青)に結合して分岐鎖アミノ酸生合成経路を阻害する農薬(黄)のイメージ
安全性の課題を解決する手法として有望視されている分子標的農薬は、雑草・害虫・植物病原菌など防除対象生物が持つ酵素など特定のタンパク質分子を標的として結合することで酵素の働きを阻害し、結果として除草・殺虫・殺菌する農薬。標的分子として、対象生物のみが持つ酵素を選定することで、ヒトや動物に対する毒性リスクの低い農薬の開発が可能となる。
共同研究では、標的分子としてアセト乳酸合成酵素に着目。アセト乳酸合成酵素は、ロイシンなどの分岐鎖アミノ酸の生合成経路において、アセト乳酸を合成する重要な酵素で、これを標的にした農薬は低薬量で高い除草作用を示す。また、この酵素自体が動物には存在しないため安全性の高い農薬となる。
実際、1970年代からスルホニルウレア系除草剤をはじめ多数の剤が開発されており、除草剤の中では大きな分野を占めている。一方、抵抗性雑草の出現は深刻で、抵抗性雑草対策剤として新剤が開発されているが、既存薬とは異なる新規化合物が求められている。
そこで両社は、アセト乳酸合成酵素を標的とした除草剤の新規プロジェクトを立ち上げ、4月から本格的な共同研究を開始。まず、PFNがAI創薬プラットフォームを用いて、市販化合物800万種に対するin silicoスクリーニングを、研究開始から1か月未満の短期間で完了した。同時にアグロデザインが理化学研究所の協力のもと、40種類以上の既存薬がアセト乳酸合成酵素に結合した状態の構造(複合体結晶構造)を解析。3種の新規複合体結晶構造を明らかにすることで、薬剤の結合に重要なアミノ酸残基を同定した。
アグロデザインは、解析結果をもとに268化合物を購入し、酵素アッセイとシロイヌナズナ生育阻害試験にて有望なヒット化合物を選抜。さらに両社が協力して、薬効向上などを目的に化合物のデザインと合成(合成展開)を行うことで、薬剤の酵素阻害効果の指標である50%阻害濃度(IC50)が100 nMを切る化合物の創出に成功。シロイヌナズナの生育阻害効果も認められた。
同研究は農薬開発の初期工程にあたり、今後の工程を進めるための投資やパートナー農薬関連会社を募集することで、実用化に向けた研究を加速する。また、培った技術やノウハウは、他の農薬や医薬などの開発にも適用可能な技術として除草剤以外の分野にも広く応用していく。
重要な記事
最新の記事
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(2)病理検査で家畜を守る 研究開発室 中村素直さん2025年9月17日
-
9月最需要期の生乳需給 北海道増産で混乱回避2025年9月17日
-
営農指導員 経営分析でスキルアップ JA上伊那【JA営農・経済フォーラム】(2)2025年9月17日
-
能登に一度は行きまっし 【小松泰信・地方の眼力】2025年9月17日
-
【石破首相退陣に思う】しがらみ断ち切るには野党と協力を 日本維新の会 池畑浩太朗衆議院議員2025年9月17日
-
米価 5kg4000円台に 13週ぶり2025年9月17日
-
飼料用米、WCS用稲、飼料作物の生産・利用に関するアンケート実施 農水省2025年9月17日
-
「第11回全国小学生一輪車大会」に協賛「ニッポンの食」で応援 JA全農2025年9月17日
-
みやぎの新米販売開始セレモニー プレゼントキャンペーンも実施 JA全農みやぎ2025年9月17日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」ダイニング札幌ステラプレイスで北海道産食材の料理を堪能 JAタウン2025年9月17日
-
JAグループ「実りの秋!国消国産 JA直売所キャンペーン2025」10月スタート2025年9月17日
-
【消費者の目・花ちゃん】スマホ置く余裕を2025年9月17日
-
日越農業協力対話官民フォーラムに参加 農業環境研究所と覚書を締結 Green Carbon2025年9月17日
-
安全性検査クリアの農業機械 1機種8型式を公表 農研機構2025年9月17日
-
生乳によるまろやかな味わい「農協 生乳たっぷり」コーヒーミルクといちごミルク新発売 協同乳業2025年9月17日
-
【役員人事】マルトモ(10月1日付)2025年9月17日
-
無人自動運転コンバイン、農業食料工学会「開発特別賞」を受賞 クボタ2025年9月17日
-
厄介な雑草に対処 栽培アシストAIに「雑草画像診断」追加 AgriweB2025年9月17日
-
「果房 メロンとロマン」秋の新作パフェ&デリパフェが登場 青森県つがる市2025年9月17日
-
木南晴夏セレクト冷凍パンも販売「パンフェス in ららぽーと横浜2025」に初出店 パンフォーユー2025年9月17日