農薬:防除学習帖
トマト防除暦の作成51【防除学習帖】第185回2023年1月28日
現在、防除学習帖では病原菌の種類別にその生態や防除法を紹介しており、今回はウイルス病の防除を紹介する。ウイルス病の場合、発症後に治療できる方法は無く、感染させないことが最大の防除法となる。このため、伝染経路別の防除対策を徹底することが重要である。
不幸にして発症した場合は、どのウイルス病の場合も、速やかに周りの健全株に触れることが無いように丁寧に抜き取り、隔離して処分する必要がある。以下、伝染経路別の防除を中心にウイルス病防除対策を紹介する。
1. トマトに発生する主なウイルス病と伝染経路
2. ウイルス病の防除方法
(1)抵抗性品種
人でも病気になりやすい人とそうでない人がいるように、作物でも、病害に罹りやすい品種もあれば、罹りにくい品種がある。抵抗性品種とは、生まれつき特定の病害に罹りにくい遺伝子を持っているものを指し、その品種を栽培することで、特定の病害の発生が抑えられる。そうであれば、抵抗性品種を使用すれば防除が完結できそうだが、実はこの抵抗性は完全なものでないことが多く、完全に病害の発生を抑えるわけではないが、抵抗性品種に病害が発生した場合でも、作物の病害抵抗性によって病害菌の密度が低く抑える効果はある。抵抗性品種の場合も発病が確認されたら、速やかに発病株を抜き取り、隔離して処分する。
(2)ハウス内 被害残渣蒸しこみ
接触伝染や虫媒伝染するウイルス病に効果のある方法である。1作の終了後に、媒介虫がついたままの被害残渣をハウス内に集めて適度な湿り気を与えて被覆し、ハウスを密閉して太陽熱によって温度を上昇させる方法である。熱によってウイルスを不活性化させるとともに、媒介虫を死滅させる効果がある。
被覆内温度をウイルスの不活性化温度60℃に到達させることが成否のカギであるが、かなりの日射量が必要となるので、日照の安定した地域で夏場にしかできない方法であるが、条件に当てはまる地域では活用してほしい。
(3)熱による土壌消毒
熱水や蒸気、太陽熱によって土壌中に存在するウイルスを不活性化させ、媒介菌を死滅させる方法である。ウイルスを不活性化させるには、60℃程度の温度が必要なため、使用する処理方法の手順に従ってその温度に到達できるよう処理する。太陽熱の場合、かなりの日射量が必要で利用できる地域に限りがある。
(4)種子乾熱消毒
種子伝染するウイルス病TMVに有益な方法である。発芽能力を落とさずにウイルスを不活化させることができる70℃30分程度の消毒時間を目安に実施する。種苗会社によっては乾熱消毒を実施して出荷しているものもあるので適宜活用する。
(5)媒介生物による伝染の場合
トマトのウイルス病を媒介する生物は、オルピディウム菌、害虫であればアブラムシ類、コナジラミ類、アザミウマ類である。こういった媒介生物が、ハウス等栽培圃場に入り込まないようにする必要がある。
具体的にはハウスの開口部全てに目の細かい防虫網を設置するとともに、万が一侵入した場合でも発生の初期のうちに徹底的に防除を行うことにつきる。
土壌中に生息するオルピディウム菌については、土壌消毒を実施して土壌中の菌を殺滅する。
害虫の場合は、吸汁行動が起こらないようにすることが重要であるので、発生が予想される時期の前までに予防散布を実施しておく。また、圃場近隣に媒介生物の住処となるような雑草の除去やウイルスの発生源となる植物の除草も合わせて行うと良い。
(6)汁液伝染の場合
汁液伝染するウイルスは、管理作業によってできた傷口から用意に伝染する。はさみなどの器具の消毒はもちろんのこと、作業の際に発病株から健全株に移らないように最新の注意を払う。
芽かきや葉かき、誘引などの栽培管理の時、病害に感染した樹を作業した後に同じ手で健全な作物を管理した場合に汁液などを介してウイルス病を伝染させてしまうことがある。このような場合には、手指消毒は当然だが、病害発生株は速やかに隔離・除去するなどの措置が重要になる。
(7)接触伝染
TMVは、ウイルス粒子の付着した被害残渣や器具が健全株に触れるだけで容易に感染する。このようなウイルスの場合は、一刻も早い被害株の隔離・除去が重要になる。また、葉たばこがウイルスを含んでいた場合、そのたばこを触った手でトマトを触ると感染する場合があるので、喫煙者の場合はこの点に十分に注意する必要がある。
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