酢酸菌のヒト臨床試験で「風邪に見られる諸症状の減少」など確認 キユーピー2021年12月10日
キユーピーは、神奈川歯科大学の槻木恵一教授とヒト臨床試験を行い、酢の発酵菌である酢酸菌GK-1(G. hansenii GK-1)の摂取により、病原体やウイルスの侵入を防ぐ分泌型免疫グロブリンA抗体(分泌型IgA)を増加させ、風邪に見られる諸症状を減少させることを明らかにした。同研究成果は、12月11日開催の「公益社団法人日本食品科学工学会 2021年度中部支部大会」で発表される。
酢酸菌GK-1の摂取で分泌型IgAの増加と風邪に見られる諸症状が減少
新型コロナウイルスの世界的な流行により、免疫機能や体調維持に関心が集まっている。同社はこれまでに、酢の発酵菌である酢酸菌GK-1が、感染源の侵入を阻止する免疫グロブリンA抗体(IgA)の産生を促進することを、細胞を用いた試験で報告。免疫グロブリンA抗体(IgA)は免疫細胞で作られたのち、分泌型IgAとして粘膜上に分泌され、細菌やウイルスと結合し、その侵入を防ぐ働きがある(図1)。今回、ヒト臨床試験を行い、酢酸菌の摂取が唾液中の分泌型IgAを増加させ、鼻汁・せき・倦怠感といった風邪に見られる諸症状を減少させることが分かった。
今回のヒト臨床試験では、酢酸菌の摂取が免疫機能や体調維持に及ぼす影響について検討するため、20~64歳の健常成人で、風邪にかかりやすい人)95人を2グループに分けた。一方のグループは1日あたり酢酸菌GK-1を150億個含む食品を12週間摂取し(酢酸菌群)、もう一方のグループは酢酸菌を含まない食品を同様に摂取(プラセボ群)。摂取から6週間後、12週間後にそれぞれ、唾液中の分泌型IgA量を測定した結果、酢酸菌群ではプラセボ群よりも唾液中の分泌型IgA量が多いことが分かった。
また、摂取期間中、風邪に見られる「5つの症状(鼻汁・鼻づまり・せき・全身倦怠感・疲労)」および「体調の変化」を記録した結果、酢酸菌群の方がプラセボ群より、各症状の発症率が低いことが分かった。
今回のヒト臨床試験では、酢酸菌GK-1が唾液中の分泌型IgA量を増加させ、風邪に見られる諸症状を減少させることを確認。なお、酢酸菌GK-1はこれまでに、花粉、ホコリ、ハウスダストによる鼻の不快感を軽減させることを、ヒト臨床試験で確認している。一般的に、花粉症などのアレルギー症状は、免疫機能が正常に働かないことによって引き起こされると言われている。酢酸菌の免疫機能への作用機序の一部が新たに確認できたことで、酢酸菌のアレルギー症状に対する効果との関連が示唆された。
酢酸菌を多く含む食品としては、「黒酢」(日本)、「バルサミコ酢」(イタリア)、「香酢」(中国)を代表とする「にごり酢」が挙げられる。一般に使われる酢は透明なものが多いが、本来の酢は酢酸菌の大部分をろ過せず、取り除かれていないため濁っている。近年、酢酸菌をろ過しないにごり酢を販売する醸造元も増えており、酢酸菌をより手軽に摂取するきっかけの一つになるかもしれない。
図1:分泌型IgAによる生体防御の概念図
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