流通:食は医力
第48回 季節を問わぬ食材・山芋健康法2013年2月20日
・流し込んでもいい麦とろろ
・山のウナギで元気になる
・ネバネバが消化吸収を促す
先日、本紙主催の新年の集いがありました。各地の農協から提供された農産物の福引があり、幸運にもJA帯広かわにしからの山芋が当たりました。着払いで届けてもらいましたが、これも何かの縁なので今回は山芋の話にしましょう。
◆流し込んでもいい麦とろろ
先日、本紙主催の新年の集いがありました。各地の農協から提供された農産物の福引があり、幸運にもJA帯広かわにしからの山芋が当たりました。着払いで届けてもらいましたが、これも何かの縁なので今回は山芋の話にしましょう。
とろろ汁は子供の頃もよく食べました。擂鉢(すりばち)と擂粉木(すりこぎ)といっても今の若い人はめったに使わなくなったかもしれませんが、これで山芋をすりおろす。小学生にもできるお手伝いで、よくやらされたものです。
とろろ汁はすりおろした山芋をすまし汁で薄めたもので、それ単独でもいただきますが、ご飯の上にかければとろろご飯になります。
ご飯は白米でもいいですが、麦とろと呼んで麦混ぜご飯にとろろ汁をかけるのが乙です。
今は乙でも昔は麦が混ざっているのが当たり前だったわけですが、山芋に豊富な消化酵素ジアスターゼのおかげで、食物繊維の多い麦飯ものど越しに流し込みOKなのです。
◆山のウナギで元気になる
山芋が昔から山ウナギと呼ばれてきたのは、滋養強壮の働きがあるからだとか。一つにはジアスターゼがでん粉やグリコーゲンを効率よく分解してスタミナ食にするため、まるでウナギを食べるのと同じだというのです。だから夏ばてに山芋という連想が働いたのでしょう。
もう一つには、アルギニンというアミノ酸が豊富に含まれているためで、細胞の新陳代謝を促してくれますから、元気の出ないとき、病後、疲労時などに格好です。
池波正太郎の「鬼平犯科帳」に精力をつけるために生卵をむさぼり食べる場面が出てきますが、いろんな意味で山芋のほうがいいですよと教えてあげたいくらいです。生卵のほうが手っ取り早いし、映像的には見栄えがあっていいかもしれませんけれども。
山芋で元気になるのは、陽性度において野菜の中でずば抜けているためもあります。食の陰陽では、山芋、ゴボウのように地中深くもぐっていくような根菜は陽性度が極めて高いとされています。
これは山芋の産地がもっぱら寒冷地であることとも関係していて、体を温める性質と活力を生む性質を山芋が持っていることを示しています。
全国生産の7割強を北海道と青森がほぼ二分していて、残りは群馬、長野、千葉が数パーセントずつ。というわけで北国の農産物ということになります。
◆ネバネバが消化吸収を促す
山芋の最大の特徴はあのネバネバでしょう。この成分はムチンという多糖類で、細胞間の結合にかかわっている糖蛋白質です。
このネバネバが蛋白質の消化吸収を促すこと、肝臓の解毒にかかわること、胃壁を守ってくれること、などがわかってきています。酒の肴に山芋がいいと言われるのはこのためかもしれません。
ネバネバの強さでは自然薯(じねんじょ)が最高でしょう。栽培種のほかに、山中などに自生しているものもあり、こちらは石や木の根を避けて伸びるためくねくねしていて掘り出すのが大変です。
自然薯はとても高価ですが、ムチンの多さにより効能もまた大きなものがあります。ただしわが家の奥さんは、砂を取り除くのが一苦労だといってよくぼやいています。その点、伊勢芋はネバネバが強い割にまん丸なので砂の入る余地はなく好都合です。ただしネバネバが強いほどすりおろすのに力がいるという難点もあります。
薬効があるので山芋は薬膳料理にもよく使われます。中国、台湾では山薬(さんやく、山葯=シャンヤオ)と呼んで珍重されます。確か帯広かわにしの山芋は台湾に輸出されているはずです。
山芋は秋に収穫されて出荷されるものと、土中に置かれて春に掘り出されるものとあります。冬食べれば体を温める旬の食であり、夏に食べれば夏ばての強壮食の旬でもある。季節を問わぬ独特な食材としてせいぜい活用したいものです。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(173)食料・農業・農村基本計画(15)目標等の設定の考え方2025年12月20日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(90)クロロニトリル【防除学習帖】第329回2025年12月20日 -
農薬の正しい使い方(63)除草剤の生理的選択性【今さら聞けない営農情報】第329回2025年12月20日 -
スーパーの米価 前週から10円上がり5kg4331円に 2週ぶりに価格上昇2025年12月19日 -
ナガエツルノゲイトウ防除、ドローンで鳥獣害対策 2025年農業技術10大ニュース(トピック1~5) 農水省2025年12月19日 -
ぶどう新品種「サニーハート」、海水から肥料原料を確保 2025年農業技術10大ニュース(トピック6~10) 農水省2025年12月19日 -
埼玉県幸手市とJA埼玉みずほ、JA全農が地域農業振興で協定締結2025年12月19日 -
国内最大級の園芸施設を設置 埼玉・幸手市で新規就農研修 全農2025年12月19日 -
【浜矩子が斬る! 日本経済】「経済関係に戦略性を持ち込むことなかれ」2025年12月19日 -
【農協時論】感性豊かに―知識プラス知恵 農的生活復権を 大日本報徳社社長 鷲山恭彦氏2025年12月19日 -
(466)なぜ多くのローカル・フードはローカリティ止まりなのか?【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月19日 -
福岡県産ブランドキウイフルーツ「博多甘熟娘」フェア 19日から開催 JA全農2025年12月19日 -
α世代の半数以上が農業を体験 農業は「社会の役に立つ」 JA共済連が調査結果公表2025年12月19日 -
「農・食の魅力を伝える」JAインスタコンテスト グランプリは、JAなごやとJA帯広大正2025年12月19日 -
農薬出荷数量は0.6%増、農薬出荷金額は5.5%増 2025年農薬年度出荷実績 クロップライフジャパン2025年12月19日 -
国内最多収品種「北陸193号」の収量性をさらに高めた次世代イネ系統を開発 国際農研2025年12月19日 -
酪農副産物の新たな可能性を探る「蒜山地域酪農拠点再構築コンソーシアム」設立2025年12月19日 -
有機農業セミナー第3弾「いま注目の菌根菌とその仲間たち」開催 農文協2025年12月19日 -
東京の多彩な食の魅力発信 東京都公式サイト「GO TOKYO Gourmet」公開2025年12月19日 -
岩手県滝沢市に「マルチハイブリッドシステム」世界で初めて導入 やまびこ2025年12月19日


































