トマト黄化葉巻病 高温で抵抗性崩壊 ウイルス抵抗性品種 夏場の発病要因を解明 近畿大学2023年6月29日
近畿大学大学院農学研究科准教授の小枝壮太氏、同博士前期課程2年の北脇新大氏の研究グループは、トマト生産で世界的に脅威となっているベゴモウイルス対策で、最も広く品種改良に利用されているウイルス抵抗性遺伝子Ty-1について研究。高温条件下では抵抗性が崩壊し、黄化葉巻病を発病することを明らかにした。この現象は、日本国内で販売されている複数の抵抗性品種で一貫して確認された。同研究成果により、生産現場で経験的に知られていた、抵抗性品種での夏場の発病の一要因を解明した。
高温下において抵抗性トマト品種が発病している様子。
左からウイルス感受性品種の桃太郎、TYLCV抵抗性品種の桃太郎ホープ、
TY秀福、かれん、麗旬、はれぞら、豊作祈願015、アニモ TY-12。
全てTYLCV-ILウイルスに感染させてから高温下で栽培
現在、ベゴモウイルスには445の種類がある。トマト、トウガラシ、キュウリ、メロン、カボチャ、ズッキーニ、オクラ、マメ類など多くの農産物が、このウイルスに感染すると果実をほとんど収穫できなくなるため、農業生産において世界的な脅威となっている。
ウイルスの感染は、タバココナジラミにより媒介されるため、生産現場では殺虫剤の散布で対策してきたが、過剰な殺虫剤の使用により、現在では殺虫剤が十分に効かないタバココナジラミが世界各地で発生している。1990年代には、トマトに黄化葉巻病を引き起こすベゴモウイルスであるTYLCVが、イスラエルから欧州、北米、日本へ同時多発的に侵入し、生産農家を苦しめてきた。
世界的な研究の推進により、トマトのTYLCV抵抗性遺伝子が特定され、ウイルス抵抗性品種の育種も進んでいるが、夏場には抵抗性品種でも散発的に発病することが生産現場では経験的に知られており、その原因は不明だった。
日本国内では、TYLCV-IL(イスラエル)系統とTYLCV-Mld(マイルド)系統という2種類のベゴモウイルスが分布。研究グループは、高温(昼温35℃、夜温20℃)、あるいは常温(昼温25℃、夜温20℃)の条件下で、トマトのウイルス感受性品種と抵抗性品種を栽培し、TYLCV-ILあるいはMldのウイルスを接種。その結果、高温条件下では、抵抗性品種でもTYLCV-ILの感染により黄化葉巻病を発病することが明らかになった。また、これまで国内の抵抗性品種は、抵抗性遺伝子としてTy-3aを有すると考えられていたが、詳細な分析の結果、世界的に多くの抵抗性品種が有するTy-1という遺伝子を有していることがわかった。
抵抗性品種が高温条件下でTYLCV-ILの感染により発病する様子
同研究により、夏季など高温条件下では、TYLCV-ILに対する抵抗性が崩壊することが示唆された。今後は、2種類のウイルスのうち、TYLCV-ILにだけ高温下で発病する原因の解明や、高温下での安定的な抵抗性獲得の実現に向けた研究を進める。
同研究に関する論文は6月15日、米国植物病理学会が発行する国際学術誌『Phytopathology』にオンライン掲載された。
重要な記事
最新の記事
-
令和7年秋の叙勲 西沢耕一元JA石川県中央会会長ら93人が受章(農協関係)2025年11月3日 -
シンとんぼ(166)食料・農業・農村基本計画(8)農業の技術進歩が鈍化2025年11月1日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(83)テトラゾリルオキシム【防除学習帖】第322回2025年11月1日 -
農薬の正しい使い方(56)細菌病の防除タイミング【今さら聞けない営農情報】第322回2025年11月1日 -
酪農危機の打破に挑む 酪農家存続なくして酪農協なし 【広島県酪農協レポート・1】2025年10月31日 -
国産飼料でコスト削減 TMRと耕畜連携で 【広島県酪農協レポート・2】2025年10月31日 -
【北海道酪肉近大詰め】440万トンも基盤維持に課題、道東で相次ぐ工場増設2025年10月31日 -
米の1等比率は77.0% 9月30日現在2025年10月31日 -
2025肥料年度春肥 高度化成は4.3%値上げ2025年10月31日 -
クマ対策で機動隊派遣 自治体への財政支援など政府に申し入れ 自民PT2025年10月31日 -
(459)断食:修行から管理とビジネスへ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年10月31日 -
石川佳純が国産食材使用の手作り弁当を披露 ランチ会で全農職員と交流2025年10月31日 -
秋の果実王 旬の柿を堪能 福岡県産「太秋・富有柿フェア」開催 JA全農2025年10月31日 -
「和歌山県産みかんフェア」全農直営飲食店舗で開催 JA全農2025年10月31日 -
カゴメ、旭化成とコラボ「秋はスープで野菜をとろう!Xキャンペーン」実施 JA全農2025年10月31日 -
食べて知って東北応援「東北六県絆米セット」プレゼント JAタウン2025年10月31日 -
11月28、29日に農機フェアを開催 実演・特価品販売コーナーを新設 JAグループ岡山2025年10月31日 -
組合員・利用者に安心と満足の提供を 共済事務インストラクター全国交流集会を開催 JA共済連2025年10月31日 -
JA全農と共同開発 オリジナル製菓・製パン用米粉「笑みたわわ」新発売 富澤商店2025年10月31日 -
【スマート農業の風】(20)GAP管理や農家の出荷管理も絡めて活用2025年10月31日


































