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コラム:米マーケット情報

【(株)米穀新聞社記者・熊野孝文】

2018.02.27 
刈り取りから白米納入まで最速という稲作法人一覧へ

 1俵当たりの生産コストを5000円台にするという目標を掲げる農業生産法人があるという情報を得て、話を聞きに行った。
 千葉県山武市にあるTという農業生産法人。JR成東駅から近くにあるので歩いて行くとそれらしき看板が出ていたのだが、その看板が黒塗りでローマ字で黄色く社名が記載されており、農業生産法人というイメージとは違うので、電話してその看板があるところなのか確認した。看板も変わっているが、経営者も変わっている。この会社が設立されたのは10年前だが、経営者は一級建築士で大手ゼネコンに勤めていた経歴を持っている。
 なぜコメ作りの会社を立ち上げたのか聞くと、もともと稲作農家で、会社勤めをしている時にはすべて請負耕作会社に任せていた。ところがある時、その請負耕作会社ともめて作業を断ってきたので自分でやることにしたというのが発端。それから10年、自身は会長に収まり、社長と専務は息子である。
 現在、自作地を含め50haの水田を耕作しているが、多くは収穫作業だけを行っている。一般的な請負農作業会社と違うのは、収穫作業をする際に「収穫したコメはすべて買い取る」という契約を結ぶことで、同社ではこれを"青田買い"委託作業システムと言っている。契約価格は10a当たり8万5000円~9万円で、契約後3日以内で代金を支払う。
「今、農家が一番負担に感じているのは収穫作業から籾摺り乾燥、そして販売で、それらをすべて当社に任せてもらえばよい」というプランで、そのことを分かりやすく書いたチラシを作製、農家に配布、一気に委託地が増えた。これを成り立たせるためには、2つの大きな要件が必要になる。
 1つはいかに早く、収穫作業を行うか。もう1つはいかに早く販売するかである。委託先の農家は一カ所にまとまっているわけではなく、収穫時期も集中している。同社は現在、3台のコンバインを所有しており、それで巡回しながら刈り取りするのだが、早場米産地の千葉は暑い時期に収穫するためクーラー車に籾を積んで、自社に運び8台の乾燥機と2台の籾摺り機で籾摺りして、すぐに精米して大手外資系会員制量販店に納入する。
 収穫作業から白米納品までの時間は「21時間」で最速のスピードだと自賛している。受託作業だけで仕入れるコメでは足りないので買取集荷も行っており、それらのコメを保管するために4万8000俵が保管できる低温倉庫も建設した。精米工場は低温倉庫の2階にあるが、会員制量販店からは6300tの事前注文が入っているためキャパが足りず、隣接地に200馬力の精米工場を建設する計画を立てている。

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 以前、この欄で2025年の家庭用精米の購入金額予測を示したが、コメを作る方はどうなるのか気になったので農研機構に依頼してその予想値を出してもらった。それが掲載した表である。この予想値は様々な前提条件があるが、大雑把に言ってしまえば2025年には稲作の担い手が一戸あたり40haを耕作しないと現在の水田面積は維持できないということである。担い手が少ない四国、九州では70haという大きな面積になる。予測値を立てる上で最も大きな要素になるのは「米価」だが、2025年の米価がどうなるのかは誰も予測できないので、この面積予測にはその要素は入っていない。言えるのはこれだけの面積を耕作するには革新的な低コスト稲作が必要になるということで、それは既に始まっている。
 T社は一切国からの助成金を受け取っていない。農機から倉庫、精米設備まで自社で負担し、助成金が得られる飼料用米や加工用米も一切作らない。主食用米一本である。倉庫に保管されているコンバイン等を見せてもらった。いずれの機械も新品同様である。徹底して清掃を行うことはもちろん機械のメンテナンスも自社で行う。
 それだけではなく収穫作業を終えたら農機具やトラックなどを塗装し直す。それでコンバインは5年使用して700万円で下取りしてもらう。稲作のコストウエイトが高い農機具の使用コストをいかに抑えるか? 作業スピードを上げ稼働率をアップさせ、かつ新品同様に保てば良い。
 スピード感を持って経営に当たるというのはどの業種にも共通しているが、稲作には国家的規模でそれが求められている。T社は今年秋田県でも60ha耕作する計画を立てている。

 

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