白けた衆議院補選2016年10月24日
昨日、衆議院補選が東京10区と福岡6区で行われた。両区とも自民候補が当選した。
多くのマスコミは、自公の強さを書きたてているが、詳しくみると、そうではない。
東京10区では、小池百合子ブームが巻き起こったようにいうが、そうではない。自民候補は、過去12年間に行われた5回の衆議院選挙のなかで、最低の得票数しか得ていない。
福岡6区は、弔い合戦だった。しかも自民党の分裂選挙だった。だから熱狂した選挙になると予想した、だが、投票率は前回よりも下がった。
両区とも、白けた選挙になった。何故か。
上の図は、東京10区の衆議院選で自民候補が得た得票数である。かつての11万票から昨日は7.6万票へと30%以上少なくなった。投票率が低かったので、約5人の有権者のうちの1人が自民候補に投票したことになる。
自公は、自分から勝手に白けたわけではない。ブームを起こして圧勝したかったろう。だが、それが出来なかった。野党が協力し、反TPPや反原発再稼働などで、与党批判を強めてブームを阻止したからである。野党協力の目にみえた成果といっていい。自民候補が勝ったからといって、自公の政治が国民から信認された、などと考えるのは大間違いである。
与党が勝ったというよりも、与党も野党も、ともに負けたとみるのが妥当だろう。そのことが、投票率の低下に表れている。
◇
野党の結束にも問題を残した。白けた理由の1つは、ここにもあった。国民は、自公の政策には反対だが、だからと言って、野党が提案する政策には不信感を拭いきれない。
だから、投票率をみると、東京10区は、以前は50%を超え、60%を超えるときも多かったが、昨日は35%に達しなかった(本文末の表を参照)。
熊本6区は、弔い合戦で、しかも自民党の分裂選挙なので、白熱した選挙運動を期待していたが、投票率は、前回よりも低かった。
こうした投票率の低下は、国民の政治不信につながるおそれがある。国会での与党主導の没論理的な論争。時間だけかせいで、時間がくれば強行採決。という国会に対する不信である。
◇
昨日の衆議院補選で明らかになった野党協力の問題点にも触れよう。
今朝の朝日新聞は、連合の会長が、福岡6区で野党協力を問題視したと報じている。また、東京10区では、野党共闘を批判して、候補者事務所からスタッフ十数人を引き上げたと報じている。
連合は、TPPに反対していないし、原発再稼働にも反対していない。この点で、自民党とも財界とも同じ政策をもっている。そして、野党第一党の民進党は、こうした政策をもつ連合の強い支配下にある。国民の野党に対する不信感、政治不信の淵源は、ここにある。これでは、第2自民党といわれても、しかたがない。
野党協力は、この点を克服しないかぎり、次への1歩を踏み出せないだろう。
野党は、互いに協力しあって、当面するTPPの国会批准を阻止する運動を、国民とともに強めねばならない。それが、野党再生の第1歩になるだろう。
(2016.10.24)
(前回 SBSは輸入自由化の尖兵)
(前々回 SBS米は闇だらけ)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日