【スマート農業の風】(25)環境配慮型農業との融合2026年4月1日
本稿では、2年にわたりスマート農業に関する話を進めてきた。では、スマート農業で目指す日本の農業とはどうあるべきか。ドローンやロボット農機による省力化、もしくは、新規就農者や農業法人の新入社員がスマート農業の力で農機の熟達者と同じような作業を進めることができる技術提供か。はたまた、夏になれば水不足と高温が襲う中、安定した収量、安定した品質で米つくりができるスマート農業由来の作業支援システムか。どれも正解であるが、これだけではないともいえる。

農業は、昔から日本でおこなわれ経済の基盤を作ってきた。農業者は、田を見て、自然を学び、農業生産をおこなってきた。筆者の父親は「米を作り始めるのは小正月から」と言っていた。田の神をまつり、鍬を入れ始めるのが小正月だった。昭和一桁生まれの農業者だったので、手作業から機械化に進む過渡期を過ごしてきた農業者である。筆者が幼少のころは、すでに牛や馬を使うことはなく、耕うん機による耕うん作業であった。しかし、田植えや稲刈りは基本的に手作業だった。人の手による農作業である。繁忙期には親戚が集まり一緒に作業をおこなうものだった。
先日、環境に配慮した昔ながらの農法を進める農家の方と話をする気会を得た。その方は「スマート農業というのは自分の農業の中にどう役立つのかわからない。現在、耕うん機を使ってあら起こしや代かきはおこなうが、田植えは手植えでおこなっている。こういう農業にもスマート農業は必要なのであろうか」とのご意見をいただいた。これを受け筆者は、デジタルでほ場を管理する営農管理システムの話を伝え、昔から言われる親父しか知らない田んぼがあるという事業承継の話(「あの田んぼは管理が難しいから俺(親父)しか管理ができないお前(息子のこと)らに任せておけないからほ場の場所を知る必要がない」と言った逸話の笑い話)をした。その上で農家の方はこう続けられた。「各農家がほ場の管理をする際、ほ場の特徴を書き込むのは必須である。そこに田んぼに住む生き物や環境の特徴(水が漏れやすい・山あいで日陰になるのが早い)を含ませることは当然必要な作業だ。集落営農や集団営農が進んでくると個の農地は失われてしまうが、農地ごとの特徴をデジタルで保管して、次の農業者に引き継ぐという考え方は面白いと思う」という言葉をいただいた。
この話は、営農管理システムを普及させるためのひとつの方向性を指していただけたと思っている。自分のほ場をわざわざ営農管理システムで管理する理由は、自分の関わった農地が今後、次の世代に移っていったとしても農地にかかる思いや環境を継続してもらえることを理想として記録をするということだ。
そのためには、まずほ場を登録する必要がある。少ないほ場数なら自分でシステム上に登録していけばどうにかなる。だが、100ほ場を超えるような場合は、農水省の提供するeMAFF農地ナビを活用する。
eMAFF農地ナビは、eMAFF地図(農林水産省地理情報共通管理システム)に農地情報を加えたもので、だれでも無料で確認することができる。衛星画像を基にする写真の地図上にポリゴンで農地の形状を表示し、各農地に関する公表情報(地目・面積・地番など)も参照できる。また、地図上で農地を探すだけでなく、絞り込み検索で条件にあった農地を探すこともでき、新規就農や経営規模拡大に向けた検討にも活用できる。これらのポリゴン情報や農地ピン(位置情報)に付属する地番情報は、ダウンロードすることができ、他のサービスで活用が可能だ。いままではほ場の地番を知るすべが少なく、地番情報を基にほ場を探すことが難しかったが、eMAFF農地ナビの登場で幅広く活用できるようになった。
全農の提供する営農管理システムZ-GISは、eMAFF農地ナビからダウンロードした情報を無加工・無修正で見ることができる。PCにeMAFF農地ナビのデータをダウンロードし、起動中のZ-GISにドラッグアンドドロップするだけで表示ができる。これはとても画期的で、eMAFF農地ナビの地番情報とポリゴン情報がZ-GISのデータ画面で確認可能となる。地番だけの情報を持っていれば、Excelの機能で突合することも可能だ。いままで地番はわかっているが、ほ場の場所がわからず突合できないと言っていたことが、eMAFF農地ナビのダウンロードデータとZ-GISの組み合わせで、ある程度可能となった。
今回のような集落営農、集団営農を目標としたほ場の管理については、現在の所有者ひとりひとりの確認が必要となる。現在所有するほ場の地番情報に加え、ほ場ごとの特徴を書き込むことでほ場の価値観が少しだけ上がると言える。
スマート農業技術のひとつ営農管理システムと、環境に配慮した昔ながらの農法を進める農家の考え方を融合するというのはとても斬新で有効な手法と言える。これらが新しいスマート農業につながることを期待したい。
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