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(011)再編と買収の果てに2016年12月23日

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【三石誠司 宮城大学教授】

 カナダは小麦の大産地である。年間3100万トンを生産し、2150万トンを輸出する。日本は年間約550万トンの小麦を輸入しているが、2015年の実績では約160万トンはカナダ産である。

 かつて、カナダ、特に西部平原3州(マニトバ、サスカチュワン、アルバータ)には生産者による農協組織が存在した。各組織は時代により多少名称が変わるが基本的には小麦プール(wheat pools)と言い、農家が生産した小麦を買付ける協同組合組織である。これらは1910~20年代に結成された。当初は、農家からの買付けと販売を担当していたが、1935年に連邦政府によりカナダ小麦ボード(CWB:Canadian Wheat Board)が設立された。これも当初、農家は小麦販売においてCWBと他の企業を選択できたが、1943年の戦時措置法による改正以降、小麦の輸出・販売はCWBが一元的に担う方式(シングルデスク制、専売制)が確立した。例えて言えば、生産者と小麦プールがトヨタ自工とすれば、CWBはトヨタ自販の役割を担っていたということになる。

 この方式は2012年まで70年以上継続した。
 2012年8月、前年に議会で可決された穀物農家販売自由法(Marketing Freedom for Grain Farmers Act)によりCWBの専売制は廃止され、CWB自体も存続のためには大改革を求められた。民営化・自己改革を所定期間内に達成するか、それが満たされない場合には、解散することが法的に定められ、組織と人員が大きく変わることとなった。

  ※  ※  ※

 さて、興味深いのはそこに至るまで、そしてその後の動きである。
 まず、小麦プールはどう変化したか。サスカチュワン小麦プールはいち早く1996年に会社化した。一方、アルバータとマニトバの小麦プールは1998年に合併してAgricoreという巨大農協へ、さらに2001年にはUGG(United Grain Growers)とも合併してAgricore Unitedとなり、この段階で会社化した。その上で2007年には会社化で先行していたサスカチュワン小麦プールの組織を継承する形で両社が合併し、バイテラ(Viterra Corporation)という会社が発足したのである。
 ここで終われば、カナダの穀物農協の再編・会社化物語である。しかし、現実はまだ続く。バイテラ社は2012年、グレンコア(Glencore)というスイスに本社を置くFortune Global 500社の第14位(2016年)、売上高1700億ドルの多国籍資源・商品取引企業に買収され、その一部となった(注1)。

  ※  ※  ※

 一方、カナダ小麦ボードはその後、どう変化したか。
 CWBは、名称をCWB社という形に変えて民営化した。しばらくは落ち着いていたが、2015年春、Global Grain Groupという会社に株式の50.1%を取得された。この会社は穀物メジャーの1社であるバンゲ社(Bunge Ltd.)とサウジアラビア農畜産投資会社(SALIC)の合弁企業である(注2)。 この段階で名称はG3 Canada Limitedと変化した。現在の本社はマニトバにある。
 1990年代以降、20年以上にわたるカナダの穀物集荷・流通・販売と協同組合をめぐる大再編劇は、最終的に、小麦の集荷・流通を担っていた農協組織が全てヨーロッパ・ベースの資源メジャーの傘下に吸収されたことでひとつの時代の区切りがついたと言えるかもしれない。そもそもグレンコアという名前は、Global Energy Commodity Resourcesを略したものである。日本語ではLとRの区別が難しいが、グレンコアの「グレ」は穀物を意味するgrainの「グレ」ではない。穀物はコモディディとして明確に整理されている。
 また、販売はカナダ独自のCWBから3G Canadaという多国籍の穀物メジャーとサウジアラビアの政府系投資機関が過半数を持つ企業に置き換えられた訳である。

  ※  ※  ※

 さて、20年前も現在も、カナダの農家は小麦を育てているし、我々はその小麦を輸入している。変化したのは農家から小麦を購入する組織であり、輸出を担う組織である。生産者が作った協同組合組織から全く異なる経営理念を持つ多国籍企業へと交代した訳だ。これを「自然」な流れと見るか、多国籍企業の長期戦略と見るかは意見が分かれよう。
 以上はあくまでもカナダの事例であるが、何となく微妙で複雑な気分になる。いつの時代でも他者の経験から学ぶべきことは数多い。

注1:このあたりの経過については、小沢健二「小麦の国際市場の構造とカナダ小麦局をめぐる諸問題― 穀物出荷協同組合の消滅のなかで穀物の国家貿易の存続は可能か」『農業研究』第22号、日本農業研究所報告、2009年、および、松原豊彦「カナダの次世代農業・食料政策とCWBの大麦輸出販売政策」(2008年)に詳しい。
注2:Bunge Ltd.の子会社であるBunge Canada社とSALICの子会社であるSALIC Canada社による合弁企業がGlobal Grain Groupである。

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