米国政府の国際的影響力低下のなかで日本はどう生きるべきか?2017年2月27日
「遠慮なければ近憂あり」(孔子)
「遠慮」とは遠い将来のことを熟慮すること。将来への展望を持たずにいると必ずよくないことが起こるという孔子の教訓である。
トランプ氏が米国大統領に就任して1カ月以上が経過したが、トランプ大統領の暴言は止まらない。発言ごとに物議をかもしつづけている。同時に米国政府の国際的威信は低下している。
安倍総理はいち早くトランプ氏に接触し、トランプ大統領の胸の中に飛び込む道を選んだ。安倍政権の立場からすると、安倍総理の策は成功した。だが、安倍総理の素早いトランプ大統領への接近戦術の「成功」が日本国民の将来にとって本当によいことなのか否かは、今の段階では不明である。むしろ日本国民の将来にとっては負の要素の方がずっと大きいとみなければならないかもしれない。
◆日米同盟は対等の同盟ではない
安倍総理とトランプ大統領は、現在の日米関係があたかも対等の同盟のように印象づけたが、日本は米国に従属している。これが真実である。沖縄をはじめ日本の各地に米軍基地が置かれている。米軍による日本の占領は、1952年の講和条約発効後も継続している。日本の自衛隊は事実上在日米軍と一体であり、米軍の指揮下にあると言って過言ではない。日本政府の外交防衛政策は米国政府の影響下にある。それだけではない。経済政策も農業政策も強く影響を受けている。
安倍総理とトランプ大統領は、得意のパフォーマンスによって"対等な日米同盟"を印象づけようとしたが、これは烏を鷺と言うに等しいことだ。
いま日本政府が為すべきことは、従属関係の固定化ではなく、対等関係の実現のための努力なのである。少なくとも、沖縄について、米国政府に対して沖縄県民の意思の尊重を求めるべきであった。
◆裏切られた日本の独立
第二次大戦後の出発点はポツダム宣言であった。1945(昭和20)年夏、大日本帝国政府は米英中三国のポツダム宣言を受諾。無条件降伏して第二次大戦は終った。ポツダム宣言こそは連合国と日本政府の重要な約束であった。大日本帝国政府はポツダム宣言受諾にあたっての約束を守り、日本の政治体制を変革した。しかし連合国の日本に対する「占領軍撤収」の約束(ポツダム宣言12項)は今に至るも履行されていない。日本は裏切られたのである。
ポツダム宣言12項とは次のとおりである。
「前記諸目的ガ達成セラレ且日本国国民ノ自由ニ表明セル意思ニ従ヒ平和的傾向ヲ有シ且責任アル政府ガ樹立セラルルニ於テハ聯合国ノ占領軍ハ直ニ日本国ヨリ撤収セラルベシ」
連合国は、日本が自由、民主、平和の政府を樹立したら占領軍を直ちに撤退させる、と約束しながら、裏切った。米占領軍は今も日本占領をつづけている。
連合国の日本における唯一の占領軍となった米国政府は、日本政府に日米安保条約(第一次)を押し付け、この条約にもとづく行政協定(現在の地位協定)を口実に日本は米軍基地を置きつづけた。
しかし1951年の日米安保条約はきわめて杜撰な条約であった。これを改めたのが岸信介首相による1960年の安保改定だった。1951年安保と1960年安保の二つの条約によってポツダム宣言12項の「占領軍撤退」という占領軍の義務を無にしてしまった。
◆米軍基地のもとでの対等同盟は不可能
年配者なら1955年のバンドン会議(第1回アジア・アフリカ会議)におけるスカルノインドネシア大統領の名演説を記憶していることと思う。スカルノ氏はこう言った。
「もし、祖国の一部が自由でないならば、自分は自由だと感ずることはできない。半分生きているということがありえないように、半分自由だということはありえない」
米軍基地があるのは沖縄だけではない。三沢、横須賀、横田、厚木、岩国、佐世保など各地にある。米国には日本の軍事基地はない。
安倍政府は今の日米関係に満足しているようにみえる。官界も経済界もマスコミも満足し、現状の日米関係の継続を望んでいるようである。しかし、このままでは50年後も100年後も千年後も日本は米国の従属国のままである。日本は永遠に米国の従属国として生きることとなる。これでいいはずはない。日本は独立国として生きなければならない。
◆トランプ時代は日本独立の好機
人類にとって最も大切なものは平和である。わが国にとって最も大事なことは平和と独立である。トランプ米大統領はトラブルメーカーであり、あやうい政治家だ。日本政府がトランプ大統領に追従することはトラブルメイキングに加担することになる。こんなことは許されない。
日本は今こそ日本国憲法第9条を守り、平和路線に徹し、トランプ政権から静かな離脱の道を模索するべきである。
当面は中国、アジア諸国との関係改善につとめ、アジアに軸足を移す必要がある。国会と政府は長期展望をもってトランプ旋風の中を独立自尊の精神で進まなければならない。
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