【熊野孝文・米マーケット情報】輸出用清酒原料米が産地交付金の対象にならない理由とは?2018年6月12日
6月7日に明治記念館で開催された日本酒造組合中央会の総会で来賓あいさつに立った農水省の岩濱食糧部長が「清酒の輸出量はコメに換算すると約1万3000tで、コメ本体の輸出量1万2000tより多い」と述べた。
清酒の金額ベースの輸出額は平成27年が140億円、28年156億円、29年187億円と順調に伸びており、今年に入ってからも2月までに前年同期比で26%増という高い伸びを示している。酒造中央会は国内で清酒の需要が落ち込んでいることから海外に活路を見出すべく、国際空港での國酒キャンペーンやパリで開催された日本食・文化の紹介イベントへの参加、ドイツデュセルドルフで開催された最大級の飲料展に出展するなど清酒需要拡大のための様々な普及活動を行っている。そうした成果の一端が輸出の伸びに繋がっている。その結果がコメ換算でもコメそのものの輸出量よりも多いということだが、少し気になったので1万3000t言う数量をどのようにして算出したのか農水省に聞いてみた。
算出の基データとしたのは国税庁の平成27酒造年度清酒製造状況等のデータである。そこには全国1241の製造場で44万4789klの清酒を製成、それに使用したコメは玄米ベースの数量が25万537tになっており、1kl当たりのコメ使用量は560kgになる。清酒の輸出量をこれで換算すると約1万3000tになるとのこと。国税庁のデータには区分ごとのコメ使用量も出ており、純米酒は4万6020t、純米吟醸酒は5万880tになっている。純米酒や純米吟醸酒は搗精歩合が高く、高精白を売りにする酒蔵の中には30%以下と言うところもあり、削りっこ競争と揶揄する日本酒好きもいるが吟醸香を出すにはそこまで精白度を高めないといけないということなのだろう。
輸出用に向けられる清酒はこうした純米酒や純米吟醸酒が多く、コメの使用量からすると実際には1万3000tより多いという推計も成り立つ。その意味ではコメの輸出増を重要課題としている農水省にとっても清酒業界は大変ありがたい存在なのだが、その清酒業界から原料米について不満が高まっている。
それは今や清酒業界にとって主原料になった加工用米が値上がりしていることで、30年産は前年産に比べ60kg当たり1900円もの値上げが打診されている。こうしたこともあって酒造中央会の総会では大会決議として「最近の加工用米に代表される酒造用原料米の急激な価格上昇は、酒類の消費構造が大きく変化し、今後の輸入酒類の急激な増加が懸念される中、脆弱な経営環境下にある傘下組合員の経営に大きな影響を及ぼしている」とし「国内振興はもとより、輸出支援のためにも、酒造好適米のみならず加工用米を含めた原料米の安価で安定的な供給体制の確保」を要望事項の中に加えた。
清酒業界の制度別原料米の使用状況は一般主食用米が13万t、加工用米9万t、特定米穀3万t、計25万tになっているが、主食用米のうち10万tは酒造好適米であるため掛け米として使用している主食用米は3万tに過ぎず、いまや掛け米は加工用うるち米が主原料と言えるためそれが大幅に値上げされることは大問題。
ここから話がややこしくなるが、30年産から輸出用米についても新規需要開拓米という括りの中で、10a当たり直接支払いで2万円が支給され、それとは別に産地交付金も上乗せして支払うことが出来るようになった。産地交付金の単価はそれぞれの産地で決められることになっており、10a当たりの支給額は北海道が2万4000円、新潟1万2000円、秋田8000円、青森8000円、茨城6000円など。北海道が突出しており、直接支払い分と合わせると4万4000円になり、10a当たり10俵穫れるとすると1俵4400円の助成金が得られる計算。なぜ北海道はこれほどまでに輸出用米を優遇するのか面白い話があるのだが、横道に逸れ過ぎるのでそのことは回を改めることにして、清酒業界は輸出する清酒の原料米が安く仕入れられるようにその分については産地交付金の対象にして欲しいと要望している。しかし、これは認められていない。コメそのものを輸出する場合、輸出業者との契約書があれば生産コストを低減したという名目で産地交付金の支給対象になるが、輸出用清酒の原料米は対象にならないのである。
そもそも30年産から生産調整の配分も廃止されネガ、ポジと言う概念もなくなったはずなのだが、助成金の配分だけはこうした概念が残っていることは不思議だ。
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