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(266)噴火・仏教・権力闘争【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2022年1月21日

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南太平洋のトンガ諸島で2022年1月15日に海底火山の爆発がありました。被害を受けた方々のご無事と一刻も早い回復を心からお祈り致します。今回の噴火で思い出したことを少し書いてみたいと思います。

デイヴィッド・キーズが書いた『西暦535年の大噴火-人類滅亡の危機をどう切り抜けたか』(邦訳:2000年)という本がある。今回の噴火とは直接関係ないが、大規模な噴火の影響が全世界にどのような予想外の影響を及ぼしたかという点で、非常に示唆に富んだ内容と記憶している。

一方、英語版のWikipediaでVolcanic winter of 536を見ると、535年の噴火は人類が過去2000年間で経験した中で最も厳しい「噴火の冬」を北半球にもたらしたようだ。簡単に言えば、噴火により排出された微粒子が大気中に拡散され、太陽の光が地表に届きにくくなり、気温が低下したのである。その結果、農産物生産への負の影響や疾病の発生などが続き、その後10年くらいにわたり全世界に様々な影響が出たと伝えられている。

そのため、「西暦535年」と言えば先の書物に限らず、地球規模での異常気象や災害、疾病、飢饉などの代名詞のようになっている。ヨーロッパでは東ローマ帝国のユスティニアヌス大帝の時代である。

ところで、わが国ではこの少し後、西暦538年に大きな出来事が存在したことを中学時代に学んでいる。受験勉強では「百済の仏に御参拝(538)」と覚えた。

この年、百済の聖王が仏像及び経綸を朝廷に献じており、これが一般に「仏教伝来」あるいは国家間の正式な伝達という意味で「仏教公伝」とも言われている。正式な時期については議論があるが(552年という説もある)、ここでは538年としておく。

ポイントは、グローバルなレベルで異常気象や災害が発生している時の人々の感情と行動である。現代ほど情報の普及は早くなくても口伝えに様々な話が世界中に拡大したことは想像に難くない。こうした状況下、人びとの不安を少しでも和らげるという機能を抜群のタイミングで見事に果たしたのが仏教ではなかったか...と、考えると歴史は面白い。

ところで当時の為政者は誰か。西暦535年の翌年、宣化天皇2年(536年)にわが国では蘇我稲目が大臣になる。彼は現代流に見ればやり手の官僚であったようで、早速、飢饉に備えて尾張の国の屯倉(いわば直轄地)のもみを都に運ばせている。さらに続く欽明朝でも大臣を務めている。どうも財務の才もあったようだ。皇室との縁組みの話は脇に置くが、先に述べた西暦552年には有名な仏教をめぐる論争が行われている。

各国が仏像を礼拝していることからわが国も...と主張する蘇我稲目と、日本古来の神々を礼拝すべきという物部氏との争いである。当時の物部氏の役職は大君を補佐する大連だが、物部氏は大友氏同様、軍事部門が得意である。

これらを合わせて考えると、この論争は仏教を公式に受容するかどうかの形を取った実務家の蘇我氏と古くから武門を押さえていた物部氏との権力闘争と考えられているが、恐らくはそのとおりであろう。

欽明天皇の生年は西暦509年と伝えられているため、535年当時は若干27歳である。また、仏教論争の552年には43歳で一定の経験を蓄積したとはいえ、3歳年上と考えられている大臣の蘇我稲目やそれと対立する古参の大連・物部尾輿らの思惑が渦巻く中で、かなり苦労したのではないだろうか。

こうした蘇我・物部の親同士の争いは、子ども(蘇我馬子・物部守屋)の代にも引き継がれ、物部氏による廃仏運動などが記録されているが、587年に蘇我氏が物部守屋を破り(丁未の乱)、ようやく決着する。そして、翌588年には今に残る法隆寺が着工となる(創建は607年)。

歴史の教科書では一瞬だが、現実には約半世紀をかけた権力闘争の末、我が国は八百万の神々と仏との共存状態を国の中に取り込み、ようやく古代国家の土台ができたのである。

*   *

トンガの海底火山噴火の話から随分と飛んでしまいました。自然環境の変化は、その構成物である人間行動にも様々な影響を与えます。古代と現代の対比をしてみると、次に何が起こるか、誰が何の役割をしているのかが見えるかもしれませんね。

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】

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