地域づくりの担い手・労協 青竹豊 日本協同組合連携機構(JCA)客員研究員【リレー談話室】2022年9月13日
労働者協同組合(労協)法が今年10月1日から施行されます。政府や自治体による労協法や労働者協同組合についてのセミナーなどが数多く計画されており、コロナ禍が地域の疲弊に拍車をかけるなか、仕事おこしや地域づくりの新たな担い手としての労協への関心の高さがうかがわれます。
日本の協同組合にとって70数年ぶりの新規の立法であり、既存の協同組合にとってもれ、農林業における担い手づくりや組合員活動の活性化などにおいて同法をどう活用できるかが注目されます。
労協法は労働者協同組合の設立や運営、管理などについて定めた法律です。所管庁である厚生労働省のウェブサイト「知りたい!労働者協同組合法」を見ると、労協は「『はたらく』をつくる。みんなでつくる」ものと紹介されています。農協・生協などの協同組合は組合員による出資・利用・運営参加が一体で行われる事業組織ですが、労協も同様に、組合員自らが出資し、それを元手に仕事をつくり出し従事するとともに、その運営に参加します。
労協法ではこのことを出資原則・意見反映原則・従事原則の「3つの基本原理」と呼んでいます。同法ができた背景には人口減少や高齢化による地域の疲弊があり、こうした地域の課題解決の担い手づくりが急務となっていることが挙げられます。労協は少人数(3人以上の発起人)で、しかも登記だけで手軽に設立できること(準則主義)が特長です。
今年度に実施または予定のセミナーなどは、都道府県段階で35件、市区町村段階で22件となっており(日本労協連把握分)、今後も増えると予想されます。セミナーには、自治体職員や地方議員向けのもの、住民や団体、企業向けのものがあります。
厚生労働省としても、労協法や労協の活動について周知を図るため、全国7ブロックでフォーラムを計画しています。9月3日に広島市で開催された中国四国ブロックのシンポジウムを皮切りに、9月17日に関東(東京)、11月6日に中部(名古屋)、10月29日に関西(大阪市)、11月23日に東北(仙台市)、11月27日に北海道(札幌市)、2月18日に九州・沖縄(福岡市)で開催されます。
9月3日の「『協同労働』シンポジウム」は、厚労省と広島市、それに広島県をはじめ中国四国9県の共催。当日は270名(うちオンライン参加170名)が参加しました。
シンポジウムでは松井一實・広島市長などが挨拶。清家篤氏(全国社会福祉協議会会長)が「互いに支え合う社会に向けて」、古村伸宏・日本労協連理事長が「労働者協同組合のしくみと協同労働という働き方」をテーマに基調講演を行いました。松井・広島市長は、早くから「協同労働」に着目し、市として2014年度から「協同労働」を促進する事業を実施、現在28団体300人以上が参加していること、市民主体のまちづくりのためのツールとして「協同労働」に期待している、と述べました。
市の資料によると、この28団体が実施する事業ジャンルは、地域の困りごと支援15団体、地域サロン運営15団体、農業6団体、市場産直等3団体などとなっており(1団体で複数のジャンルに取り組んでいる場合あり)。農業分野でも活用されていることが分かります。
実践事例として、地域協同組合無茶々園(愛媛県西予市明浜町)、びしゃもん台絆くらぶ(広島県広島市安佐南区)、アグリアシストとも(同左)から報告がありました。2018年9月にスタートしたアグリアシストともは、高齢化し後継者がいない兼業農家が多い地域で活動しており、14名のメンバー(出資者)が農作業などの困りごと支援(草刈り、代掻きなど)を行なうほか、地域独自の農業モデルづくりにもチャレンジジしています。14名のメンバーのうち7名は地元JAの総代であり、ふだんからJAと連携して活動しているとのことです。
地域協同組合無茶々園の事例も農業と地域づくりにかかわるものです。労協を活用したり、既存の協同組合と労協の連携を進めたりすることで、地域や農業の活性化、地域づくりの可能性が広がるものと期待されます。
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