中国共産党の第20回大会を祝う【森島 賢・正義派の農政論】2022年10月31日
世界で最大の政党である中国共産党の、第20回全国代表大会が閉幕し、新しい執行部が発足した。遅まきながらながら、お祝い申し上げる。
日本の報道の多くは、新執行部は習近平総書記の「お友達」で固めた、と報じている。だが、「お友達」と「お友達」以外の人たちの間に、政策について、どんな違いがあるのか。そのことに報道は興味を示さない。もっぱら、政治家の個人的な好き嫌いという資質と、権力にかかわる私的な利害関係だけで新執行部を作った、と伝えている。
「お友達」だけで新執行部を固めたのは事実のようだ。だが、これまでの集団指導体制についての評価を変えたのかどうか。そのことについて、1億人の党員のうちで、異議を唱えた人がいたのかどうか。日本の報道は、そのことを報道しない。
いったい、日本には、報道の自由があるのだろうか。それを支える言論の自由があるか。報道機関が「自発的」に言論を抑圧していないか。
40年ほど前になるが、筆者は中国農学会から招かれて、中国の農村を見せてもらったことがある。そのときの通訳は、中国共産党の若い党員だった。移動中のバスの中などで、彼と思う存分に議論した。
いまでも記憶しているのは、中国の戸籍制度を話題にしたときだった。中国では、農村で生まれると「農民戸籍」が与えられ、都市部へ移り住んでも「都市戸籍」に変えられなかった。だから、市民の権利は与えられなかった。子供は市立学校に入学できなかった。
これは封建制度ではないか、と痛烈に批判した。彼は、この批判を全面的に受け入れた。1億人ちかくいる党員、ことに若い党員は皆が同じ考えだ、といっていた。しかし、都市の過密を避けるため、一時的にやむを得ないことだ、と付け加えた。
その後、少しずつではあるが改善しているようだ。
◇
前置きが長くなったが、ここで問いたいことは、いまの中国の国内で、言論の自由に基づく議論が活発に行われているかどうか、という点についての疑問である。それが、こんどの党大会の結果に表れているのではないか。
3つの点について、私見を述べてみたい。
◇
第1点は、今後の中国が進む方向についてである。「共同富裕」というのだが、これは、これまでの「先冨論」を修正するものなのか。「社会主義市場経済」を修正するものなのか。また、いまや基幹産業になっている、そして、世界の先端から遅れている情報産業に、国家の支援を強めようというのか。
そうだとすれば、別の適切な表現があっただろう。それは、激しい議論のなかから生まれたはずである。
◇
第2点は、前にのべた執行部体制についである。これまでの集団指導体制を習一強体制に変えようというのか。そうではないだろう。
事前にうわさされた、習氏の党主席の就任は見送られた。これは、内部での議論の結果だろう。
こうした議論は、密室ではなく、公開したらどうだったか。
◇
第3点は、「社会主義強国」である。当面の問題は、台湾の独立問題だろう。ここでも、議論不足による表現不足があっただろう。
米国が狙っているのは、米日韓台による中国包囲網である。台湾のウクライナ化である。このために、米国は台湾の独立派を公然と支援している。ウクライナと同様に、軍は派遣しないが、武器を輸出しているし、武器を共同で作ろうとしている。
これを徹底的に暴露し、台湾の多くの人たちが独立派から離反するように、全力をつくすべきではないか。
武力に対して武力ではなく、内政に干渉する米国を、そして、格差と分断を深める米国社会を、言論で容赦なく批判したらどうか。
◇
以上、いくつかの問題の底流にあるのは、議論不足だろう。徹底した議論のためには、言論の自由が不可欠である。もちろん事実に基づく言論である。事実に基づかない言論や悪意に基づく、そして内政干渉のための言論は、断固として排除すればいい。
そうして、このような議論は公開すべきだろう。
いま、世界は米国一強期から中米競争期への過渡期にある。中国の主張が、ロシアをはじめ、アセアン、インド、中近東、アフリカ、中南アメリカの諸国から、好意をもって理解されるように努力することは不可欠である。
◇
中国共産党には1億人の党員がいる。燃え立つような愛国心をもった若い党員が多い。言論の自由に対する臆病は不必要である。
以上で述べたような問題は、やがて是正されるだろう。筆者は楽観的である。そして、期待している。
(2022.10.31)
(前回 食糧安保政策の理念)
(前々回 世界の親露派人口)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
【欧米の農政転換と農民運動】環境重視と自由化の矛盾 イギリス農民の怒りの正体と運動の行方(2)駒澤大学名誉教授 溝手芳計氏2024年4月26日
-
【注意報】麦類に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2024年4月26日
-
【注意報】麦類に赤かび病 県内で多発のおそれ 熊本県2024年4月26日
-
【注意報】核果類にナシヒメシンクイ 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2024年4月26日
-
【注意報】ムギ類に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 愛知県2024年4月26日
-
「沖縄県産パインアップルフェア」銀座の直営飲食店舗で開催 JA全農2024年4月26日
-
「みのりカフェ博多店」24日から「開業3周年記念フェア」開催 JA全農2024年4月26日
-
「菊池水田ごぼう」が収穫最盛期を迎える JA菊池2024年4月26日
-
「JAタウンのうた」MV公開 公式応援大使・根本凪が歌とダンスで産地を応援2024年4月26日
-
中堅職員が新事業を提案 全中教育部「ミライ共創プロジェクト」成果発表2024年4月26日
-
子実用トウモロコシ 生産引き上げ困難 坂本農相2024年4月26日
-
(381)20代6割、30代5割、40/50代4割【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年4月26日
-
【JA人事】JA北つくば(茨城県)新組合長に川津修氏(4月20日)2024年4月26日
-
野菜ソムリエが選んだ最高金賞「焼き芋」使用 イタリアンジェラートを期間限定で販売2024年4月26日
-
DJI新型農業用ドローンとアップグレード版「SmartFarmアプリ」世界で発売2024年4月26日
-
「もしもFES名古屋2024」名古屋・栄で開催 こくみん共済coop2024年4月26日
-
農水省『全国版畜産クラウド』とデータ連携 ファームノート2024年4月26日
-
土日が多い曜日まわり、歓送迎会需要増で売上堅調 外食産業市場動向調査3月度2024年4月26日
-
鳥インフル 英国からの生きた家きん、家きん肉等 一時輸入停止措置を解除 農水省2024年4月26日
-
淡路島産新たまねぎ使用「たまねぎバーガー」関西・四国で限定販売 モスバーガー2024年4月26日