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【JCA週報】農協における「組織活動」の停滞要因(1984)(甲斐武至)2022年11月21日

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「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中代表理事会長、副会長 土屋敏夫日本生協連代表会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、JCAの前身である協同組合経営研究所時代の「協同組合経営研究月報」1984年4月号に、甲斐武至氏が執筆された「農協における「組織活動」の停滞要因」です。

農協における「組織活動」の停滞要因(1984) 甲斐武至

憂うべき三大症候群

農協は、かつて昭和30年前後に深刻な「経営危機」の試練を経たが、組織の自助努力の上に、手厚い行政措置と、折しも始まった経済の高度成長の余波を受けたため、程々の厳しさで再建整備を成し遂げた。それから30年、農協を取り巻く環境諸条件の激変に伴って、慌しい紆余曲折は経たものの、今日の農協は、多少の皮肉と椰楡を籠めて、「世界に冠たる協同結合組織」といわれるまでに肥大した。

確かに、農民が全戸加入し、全国全市町村を網羅して設立された農協は、国・都道府県・市町村の行政系列に即応して整然たる3段階のピラミッドを構成し、信用から経済全般、まさに「揺り龍から墓場まで」のあらゆる事業をこなし、その膨大な事業分品は、経済社会における有力なセクターとして認知されている。まして、 一時期、「むかし陸軍、いま農協」などと政治的圧力団体の側面を指弾されるほど、内外の注目を集めた。

しかし、第1次オイル・ショックから10年、環境諸条件変化への適応は、他企業にくらベて著しく立ち遅れ、かつての「世界に冠たる組織」は虚名・虚像に過ぎず、いま、農協は深刻な「構造危機」に直面して、その組餓カは急速に「かげり」を濃くしつつある。外部から、最近の農協は、「活気を失った斜陽商社」、「肥大化した虚構の組織に安住して情況先取りの開発意欲を喪失」.「力の集団への過信から、知恵の集団への脱皮不全」、あるいは「親方日の丸の行政依存体質(甘えの構造)から親方火の車の財政破たん時代に即応すべき自主・自立体質への転換の遅れ」など歪みが目立つと指摘されている。

もとより、農協は、環境諸条件の激変に手を供いているのではない。ある農協は、行きづまりの打開を、謙虚に組合員に問い直すことから、協同活動の手掛かりを掴もうとし、ある農協は、「守りの減量経営」に徹して景気の浮揚を期待し、またある農協は、高度成長時代の延長路線の上で従来どおりの単線伸長型の事業分量拡大を指向するなど.それぞれ農協ごとに、置かれた地域の特殊事情をも反映して、対応の姿勢は一様でない。けれども.総じていえば、さきの第16回全国農協大会の決議を踏まえて、「地域農業振輿」と「経営刷新」をタテマエの二本柱にしながら、ホンネとしては、経営収支の均衡を維持するために、「地域住民総顧客化」の事業推進の基調は変らなかった。したがって.経済の全般的停滞のもとにありながらも、農協の事業は、総量としては拡大してきた。ところが、この間に農協組織の命運にかかわる憂うべき「構造危機」の歪みが深く進行していたのである。

ロッキード判決後、政治姿勢を問われて「倫理でメシが食えるか」と暴言を吐いた代議士がいたが、農協でも、「経営危機」を懸念するあまり、「協同組合の原則や理念でメシが食えるか」という風潮は根強く浸透しているように見受けられる。その当然の帰結として顕在化した「構造危機」の病弊は、第一に、「組合員の農協ばなれ症候群」(Drop-out Syndrome)であり、第二に、「役職員の総無気力症候群」(Apathy Syndrome)であり、そして第三に、「組織分断症候群」(Disintegration Syndrome)である。

農協の組織に直接主体的に関わる者は.構成員たる組合員と役職員であることは申すまでもないが、その3者の在り様が基本的におかしくなっているのである。そこで、本稿では、おもにこの中の「組合員の農協ばなれ症侯群」をめぐる問題を考えてみたい。

(中略)
組織活動の準則

「地域協同組合」を標榜しながら、その「実像」をはっきり示せないのは、人類多年の、といわないまでも、永い間の農協組織活動の経験から濾過された要件または甚準に準拠した検討を欠いているからと思われる。実は、「組織」または「組織活動」という言葉は、農協では、日常最も使用頻度の高い用語であるが、その正しい意味や正しい実践から導かれた、いわゆる経験法則などは、つとに誰しも十分理解しているものだという暗黙の了解のもとで、「組織活動の強化」であるとか、「准組合員の組織化」などと安易に使い慣わしている。

ところが、たとえば「組織基盤」という言葉の意味を居合わせた農協の指導層の方々に伺ってみると、ある人は、「それは組合員だ」と答え、ある人は「農家」、いや「集落」、いや「農業」、いや「地域」と様々な答えが出された。ある人は、「今日においては事業の顧客=利用者すべてが組織基盤だ」という。

また、農協における組織活動を担う主体は、基本的かつ制度的には組合員だが、実態は役織員の「請負」(組合員からは頼まれもしないことまでも)になっているのではないか。

このような状況は、いわゆる「組織の形骸化」というものであろう。すなわち①面識あり、②目的が同じであることを相互に認識し合った人たちが、③その目的達成の手段・方法を同じくし、しかも④相互に利害関係が一致しており、⑤必要に応じていづでも統一行動に参加でき、⑥みんなが役割を分担し合い、⑦仲間の中から選んだリーダーに信頼と支持を惜しまない関係があって、はじめて組織は成り立つ、というのが「組織づくりの準則」なのである。

この中での「目的」というのは、いいかえれば「欲求」であるが、先人の教えるところでは、「切実な人間的欲求のないところに組織活動はない」という。してみれば、今日における農協組織活動の停滞は、組合員の「多様なニーズ」の中から、真に切実な人間的欲求が正しく把えられていないからということになろう。何にもまして、家族の安全と健康を守り抜こうとする主婦の切実な願望・欲求が、危険な食品の「共同不買」という消極的対応から、有機農業による安全食品の共同購入という積極的な消昔者組織活動へ発展し、それが生産者の組織と緊密な、いわゆる「産消提けい」で、驚異的に、しかも着実に展開されている多くの例証が身近にある。それに謙虚に学ぷことを通じて、停滞している農協の組織活動を活性化するうえで、欠けているものは何か、「組織運営の準則」その他有効な実践の示唆が得られると思う。

財団法人 協同組合経営研究所 協同組合経営月報1984年4号 No.367より

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