【今川直人・農協の核心】農協の戦略目標2024年1月10日
顧客本位
1968年に1号店をオープンしたイタリアンレストラン「S」は安定した「価格」、「品質」、「サービス」で長期的に客数を伸ばしている(現在、内外1500店舗を直営)。以下は経営の特徴の一部である。
① イタリア料理を安い値段で、という企業目標を一貫
② 徹底したコストダウン(数百haの野菜契約栽培、オイル・パスタ等の直接輸入、セントラルキッチン、ハンバーグ・レタス基軸の少ない材料で多くのメニュー、3倍幅のモップ、作業のマニュアル化など)
③ コストが下がったら価格を下げる
④ 合理性1)店長の仕事は材料ロス・水道光熱費・人件費の管理(売り上げは立地とメニューによるので目標は課さない)2)バーゲン・宣伝広告はしない(普段の価格の割高感につながる)3)無理しない(野菜等の買い叩きはしない、全県出店などにこだわらない)
戦略の選択
企業の取りうる競争の基本戦略は低原価戦略、差別化戦略(商品やサービスの高級化)、集中戦略(絞り込み)の三つであり、この三つしかない。
日本に早い時期に戦略論を紹介した故土屋守章氏(1970年代に全中教育部にケース・メソッドを指導)は「企業と戦略」(1984年リクルート社)で、苦境に陥って回復に成功した8業種60社のアメリカ企業の回復の要因について、2社を除いて低原価と差別化のいずれか一方のみを徹底的に追及している、という興味深い分析結果を紹介している。
農業・農協改革で派生した課題への対応
農協は農協改革でマーケット・インを迫られた。買い取り、地場消費への対応(単協)、大口実需者との安定取引(連合会)などである。しかし、ロットの大きい大規模農家の増加を見越すとき、「農業所得の増大に最大限配慮」(改正農協法第7条)の実現のためには、流通を越えて実需者の立場に立つ小売りや外食、食品加工部門への本格参入が不可欠である。
この分野は、何よりも消費者目線で先を読むことが求められる。確実にいえることはスーパー・ファミレス指向の年金生活者が増えることである。農産物や食品は価格競争が主となる標準製品(代表が穀物。対する差別化製品の代表は化粧品)である。
例えば、一部農協の醸造への参入がみられるが、居酒屋が求めるのは1升2000円程度の日本酒である。また、小売り・外食業界では、全国共通店舗名で相乗的な集客効果を上げている企業が多い。農協の小売りや外食事業に客の賑わいを期待したい。
もう一つは今後の最大の課題、すなわち農業改革の進行に伴って比重を増している大規模農家対応である。現在進められている全農統一フレコン(米)や農家戸配送(生産資材)あるいは大型農機の共同利用などの合理化と、前項の需要者の側に立って大規模農家を迎えるマーケット・インの両面からの対応が求められる。また、訪問活動などの対話を通じて紐帯を強める活動の重要性が再認識されている。以下はJAぎふの支店の、組合員と職員との対話を深める仕組みである。巧(たく)まずして高度な戦略である。
『農協改革を機に組合員と職員の対話を重視。全戸訪問と日常の訪問活動の記録やQRコードを通して寄せられる組合員の意見(2022年度4000件強)等に基づく「提案ミーティング」、大規模農家を構成員に加えた「支店運営委員会」(年4回。分科会も)が骨格。
「もし、農協改革がなければ、いまだに事業推進にまい進している農協のままであったと思う」(「第44回農協文化賞」資料中の組合長-受賞者―の言葉)』
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