YOUは何しにアメリカへ?【小松泰信・地方の眼力】2024年4月3日
岸田文雄首相は米国を訪問し、4月10日に日米首脳会談に臨む。日米同盟の強固さを国内外に示すことを狙ってのこと。行かずとも日米同盟はシームレスでエンドレスに強固のはずだが。
特定利用空港・港湾を米軍も利用する
東京新聞(4月2日付)は、政府が4月1日、有事の際に自衛隊や海上保安庁が使うことを想定する「特定利用空港・港湾」に、北海道や沖縄など7道県の16カ所を選定したことを伝えた。滑走路の延長や岸壁の増築などで、戦闘機や艦船が利用しやすいように整備・改修する。国はその管理者である地方自治体や管理組合と、有事を想定し「緊急性が高い場合、施設利用の合理的理由があると認められる」場合に、自衛隊などが利用できるよう努力することを確認済みとのこと。普段は民間利用されているが、年数回は、自衛隊が訓練に使う見通し。当然、米軍の利用が気になるところ。
「政府は特定利用空港・港湾の米軍利用は想定していないと言うが、日米ガイドラインでも民間の空港や港湾も有事になれば共用するとされており、米軍は当然使うはずだ」「攻撃目標となる危険性は高まらないとも説明しているが、住民へのごまかしだ。自衛隊や米軍が利用すれば相手の攻撃対象に当然なる」とのコメントは佐道明広氏(中京大教授)。
日米地位協定をご存じない!?
九州・沖縄から7施設が選ばれたが、「自治体側は、観光振興や物流など平時のメリットや災害時の活用を重視し、受け入れたところが多い」とするのは西日本新聞(4月2日付)。
県管理空港では唯一、特定利用空港になったのが福江空港(長崎県五島市)。
「能登半島地震を見ても空港の強靱化は不可欠。維持整備の予算が確保しやすくなる」「給油設備が新設されれば北海道や東北からも来島できるようになる。期待しかない」と、歓迎のコメントをするのは長崎県の担当者。政府は自治体に対して「軍事拠点を造るわけではなく民生利用が優先」と説明。攻撃目標への懸念にも「むしろ抑止力や対処力を高め、攻撃される可能性を低下させる」と理解を求め、長崎県と五島市はこれに納得した。
県の担当者は「政府からは米軍が使うことはないと説明された。問題ない」と受け止めている。しかし、同紙は、「米軍は日米地位協定第5条に基づき民間の空港や港湾を利用できる。水深を深くして岸壁を整備し、護衛艦や輸送艦が使用できるようになれば、米軍にとっても『使える港』になる」と指摘する。さらに、「日米地位協定を持ち出されれば拒否できない」と、政府関係者が明かしていることも紹介している。
特定利用空港・港湾の整備は軍事機能の強化
「日米地位協定の下で米軍は既に民間の港への出入りを強行している。石垣港には実際、県の自粛要請を押し切る形で昨年9月に米海軍の掃海艦が、今年3月にはミサイル駆逐艦がそれぞれ入港した。自衛隊と米軍の一体化が進み、共同訓練も増えている中で、米軍の利用は訓練の一環だと押し切られることも予想される」「『特定利用空港・港湾』の整備は、紛れもなく有事への備えであり、軍事機能の強化に他ならないからだ」と、危機感をあらわにするのは沖縄タイムス(4月3日付)の社説。
さらに、内閣官房が「攻撃目標とみなされる可能性が高まるとはいえない」と明言していることについても、「軍事的な目的がある空港や港湾が、攻撃の対象になることは既に歴史が証明している。政府は『特定利用空港・港湾』が併せ持つリスクについても説明するべきである」と迫っている。
西日本新聞(4月3日付)の社説も、「政府の説明も、自治体の理解も不十分ではないか」と疑問を衝きつける。
「ジュネーブ諸条約は軍事目標以外への攻撃を禁止している。ただし、施設が軍事活動に資すると判断されれば軍事目標として扱われ、民間人が巻き添えになりかねない」とする。(現在の紛争国で、どれだけの民間人が死傷していることか......)
さらに、「日米地位協定は、米軍が民間空港や港湾を利用する権利を認めている。米軍が求めれば政府は拒めない。自治体は当然、認識しているはずだ。政府から『米軍が使うことはない』と伝えられたとしても、将来まで保証されるものではない」とし、「安全保障政策は国の専管事項」と思考停止せず、「防衛力強化がもたらす影響を見極めること」を自治体に求めている。
土地利用規制法という危険な法律
しんぶん赤旗(3月30日付)は、政府が3月29日、土地利用規制法に基づく第9回「土地等利用状況審議会」を開き、主要な米軍基地を含む全国28都道府県の184カ所の指定を了承し、これまでの指定とあわせて、47全都道府県・583カ所が指定されたことを伝えている。区域指定されれば、周囲1キロが監視対象になり、「機能阻害行為」が確認されれば国が中止を勧告・命令。従わなければ刑事罰が科される。特に重要とされる「特別注視区域」では土地の売買に事前の届け出が必要。土地の売買といった住民や事業者の経済活動、まちづくりへの影響の懸念やプライバシー権、財産権、思想・良心の自由の侵害への懸念があることなどから、土地利用規制法の廃止を訴えている。
沖縄県では米軍施設17カ所と自衛隊、海上保安庁、離島の合計70カ所が指定されたことから、琉球新報(4月2日付)も「広大な米軍基地と同居させられ、自衛隊の拡張が続く沖縄では、治安維持法や軍機保護法の再来になりかねない危険な法律が生活圏を覆う。何重にも憲法に抵触する土地規制法にあくまでも反対」の姿勢を示している。
問題多き法律であるにもかかわらず、当該自治体への聞き取りでは、「疑問点への説明はなく、住民への説明会も実施しなかった」ことから、「安全保障のために人権の制限はやむを得ない」という姿勢に憤る。
「地方自治法改正案」は地方自治を蹂躙する
沖縄タイムス(4月2日付)の社説は、「指示権」によって自治体に対する国の権限を強化する「地方自治法改正案」の問題点を指弾する。指示権とは、国が必要な事務処理などを指示できる権限のことから、「『台湾有事』を巡る政府の対応に沖縄の自治体を従わせる際の法的な根拠にもなりかねない」ことを危惧している。なぜなら、すでに「『台湾有事』を想定した社会の軍事化が急速に進む沖縄で、民意が軽視され、地方自治が骨抜きにされる事態が相次いでいる」からだ。
ことほどさようにこの国は、戦争する国へと突き進んでいる。岸田首相は、その進捗状況を報告にアメリカに行き、更なる課題を手土産に嬉々として帰ってくるはず。手土産の中身は、国民をさらに苦しめる毒饅頭。岸田首相の訪米絶対反対。
「地方の眼力」なめんなよ
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