母の日のカーネーションは外国産が2/3【花づくりの現場から 宇田明】第34回2024年5月16日
花産業の一大イベント母の日(5月第2日曜日)が終わりました。
母の日は、生花店の来店数が一年でもっとも多い日。
来店者は、母の日の主役カーネーションの2/3が外国産であることを知りません。
カーネーション切り花の消費量は、国産が1.9億本(推定)に対して輸入は国産の2倍の3.8億本(2023年)。国産は消費量の34%にすぎません。
外国産66%の内訳は、コロンビア産が42%、中国産が19%、エクアドル産が5%です。
消費者はそのことを知りません。
なぜなら、一部の生花店にしか原産地が表示されていないからです。
花は、野菜や果物などのように、JAS法での原産地表示が義務づけられていません。
加えて花産業は、食べるものではないからと原産地表示に熱心ではありません。
花産業が原産地表示を重視しないのは、消費者がそれほどのぞんでいないこともあります。
国産花き生産流通強化推進協議会のアンケート調査(図1)。
「花、野菜を購入するときに重視する表示は?」
(複数回答、いくつでも。現在表示がないものは、あったとして)
切り花でもっとも重視するのは「品種」(花の名前)で37%。
次が「どれも気にしない」で34%。
「国産/外国産の表示」は14%、「国内産地の表示」は12%、「生産者名」は8%にすぎません。
一方、野菜は真逆。
「国産/外国産の表示」をもっとも重視し46%、次いで「国内産地の表示」で37%です。
消費者は、切り花の購入時には野菜ほど原産地や国内産地を重視していないことがわかります。
さらに、切り花では原産地がわかっても、消費者は国産、外国産にこだわりません(図2)。
「必ず国産買う」が7%、「できるだけ国産を買う」が22%、あわせても29%にすぎません。
野菜では、「必ず国産を買う」、「できるだけ国産を買う」があわせて68%です。
逆に、「国産、外国産にこだわらない」が野菜の32%に対して、切り花では71%もあります。
花産業は、この数字を「原産地を表示しない」言い訳にしていては、輸入がますます増えるだけです。
国産を買いたい消費者が29%もいると考えるべきです。
神棚にお供えするサカキ、仏壇・お墓にお供えするヒサカキでは、原産地を表示すると、多くの消費者は値段が高くても国産を選ぶという事例があります。
(花づくりの現場から第17回「神さま・仏さま・ご先祖さまには国産サカキ・ヒサカキをお供えしたい」)
カーネーションでも国産の良さをもっとアピールすれば、国産を選ぶ消費者が増えてくるでしょう。
日本農業新聞の論説(2024年5月7日)はそのことを指摘しています。
「母の日の花き商戦 国産の存在感を示す時」
「12日の母の日に向けて花き商戦が活発化している。価値観の多様化で花の色や種類の選択肢が広がる中、国産をアピールした商品は好調で、産地への関心は高まっている」
「花きは、口に入る野菜や果実などと比べ、産地が重視されない傾向があった。母の日商戦では、大手量販店のイオンが国内産地の切り花を使ったアレンジメントを打ち出し、早々に予約で完売したという」。
花産業は、消費者への情報提供が十分ではありません。
法律の有無にかかわらず原産地を表示し、消費者に知らせることが国産の消費者拡大には不可欠です。
国産か外国産か、国産ならどこの産地かなどをポップや黒板で表示することは、小売業としてはあたり前のことです。
これは花生店だけではなく、産地・生産者の情報発信の問題でもあります。
論説が提案しているように、「生花店も産地も小規模が多い業界だからこそ、双方の結びつきを強めて国産花きの魅力を発信しましょう」
1
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日