【今川直人・農協の核心】急務の人材確保2024年7月5日
不安定な労働市場
日本標準産業分類(総務省)の「複合サービス事業」に含まれるのは農協と郵便局の二つである。農協職員数は2014~2022の8事業年度の間に13%減少し、ほぼ同じ時期に郵便局(日本郵政グループ)は12%(臨時従業員を含む総従業員では16%)減少した。共に年2%弱の減少である。
厚労省の「雇用動向調査」によると、「複合サービス事業」の令和4年の入職率、離職率はそれぞ7.0%、11.0%で離職率が4%高い。「全産業」の入職率、離職率が15.2%、15.0%であるから複合サービス事業の職員の出入りが激しいわけではないが、この入・離職率のギャップ4%が近年の人手不足を表している。「複合サービス事業」は、開業・廃業率ともに最低レベル(中小企業白書)の安定した業態である。それにもかかわらず定着率が低い。金融・保険業、地方公務員も同様の傾向にある。総務省の「地方公務員の退職状況等調査」によると、2022年度の「自己都合」による退職者は2013年度の2.2倍になっている。
人が人を育てる
JA全中教育部在籍時に目にした教育雑誌にN造船社長の取締役時代の経験談があった。社員の採用・育成に資するため、社内の優秀な社員の共通要因を探ったという。教育的背景、入社試験・面接記録、入社後の職歴その他のデータを時間をかけて分析したが、どうしても共通点が見出せなかった。これまでの方針・方法を踏襲するしかないか-そう諦め始めたころ突然ある事実に気付いた。彼らは皆入社して最初に優秀な先輩の下に配属されていた。
正攻法
経営と教育は、農業振興と並んで中央会の基幹的業務である。「要員の確保」と「人材の育成」を担うのはこの二部門である。
経営部門は、近年、事業赤字が懸念される農協への対応に迫られてきた。基調は事業の拡大とコスト抵減で、職員は削減の方向。少数精鋭である。労働の質の向上は教育訓練の任務である。それに現下の人手不足である。古くから取り組んできた職能教育と職場内教育(OJT)に新たな期待がかかる。
経営コンサルのキャッチコピーに「離職防止」の文言が見られるが、離職防止は経営、教育に関わる複合的な活動の「結果」であって特効薬はない。そして人手不足の現在、それらの活動に求められるのは「正攻法」に徹することではなかろうか。例えば、選考のための面接では、農協の意義、地域農業、組合員への対応等の具体的事項について認識と姿勢を確認する「基本」をより徹底し、「ご応募いただきありがたい」は心の内に留めたい。また、最近、直属でない指導役を置く職場教育の手法が見られるが、実務を離れてOJTは成り立たない。離職防止は腫れ物に触るように接することではない。1日も早く「人材」として育てることである。教育機関が最大の人材供給源である。教育に情熱を燃やし、卒業生の就職に熱心な教育者との行き来を大切にしたい。
なお、メデイアの「農協の退職理由」などに「推進業務」が挙げられている。専門資格者による推進は組織の合意事項である。基本に立ち返る好機としたい。
重要な記事
最新の記事
-
(408)技術と文化・伝統の引継ぎ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月3日
-
令和6年秋の叙勲 加倉井豊邦元全厚連会長ら77人が受章(農水省関係)2024年11月3日
-
シンとんぼ(116) -改正食料・農業・農村基本法(2)-2024年11月2日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (33) 【防除学習帖】第272回2024年11月2日
-
農薬の正しい使い方(6)【今さら聞けない営農情報】第272回2024年11月2日
-
【25年産米】適正生産量683万tに懸念の声も(2)高米価でもリタイア?2024年11月1日
-
【25年産米】適正生産量683万tに懸念の声も(3)ギリギリ需給でいいか?2024年11月1日
-
【特殊報】「サツマイモ炭腐病」県内のサツマイモに初めて確認 鳥取県2024年11月1日
-
食と農の情報 若年層にはSNSや動画発信が有効 内閣府の世論調査で明らかに2024年11月1日
-
【注意報】野菜、花き類にチョウ目害虫 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2024年11月1日
-
だし・かつお節需要が高まる年末年始に向けて「徳用シリーズ」売れ筋2品を10%増量 マルトモ2024年11月1日
-
JA貯金 残高108兆2954億円 農林中金2024年11月1日
-
【田代洋一・協同の現場を歩く】 福島・JA会津よつば 産地強化で活路探る 中山間地域で〝生きる〟2024年11月1日
-
鳥インフル 米サウスカロライナ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2024年11月1日
-
鳥インフル オランダからの生きた家きん等 一時輸入停止措置を解除 農水省2024年11月1日
-
鳥インフルエンザ 「危機感共有して発生予防を」小里農相2024年11月1日
-
兵庫県ご当地カレー&「午後の紅茶」キャンペーン実施 JAタウン2024年11月1日
-
「JA共済安全運転アプリ」提供開始 スマホではじめる安全運転2024年11月1日
-
子どもたちが丹精込めて作った「優結米」熊本「みのる食堂」で提供 JA全農2024年11月1日
-
たまごのゴールデンウィーク「幻の卵屋さん」各所で出店 日本たまごかけごはん研究所2024年11月1日