【今川直人・農協の核心】20年の低迷からの脱出(2)2025年2月17日
三界による改革
平成終盤の経済事業を中心とする農協改革は、最小の法律改正で大幅な実態改革を達成した好例である。行政指導は法律の枠を超えられない。内閣の法案提出権は今や権利でなく義務であるが、農協改革は法改正による解決が困難なため残っていた課題が主であった。
一方、立法は通常立案しない。法改正と実態改革は平成26(2014)年6月の「農協・農業委員会等に関する改革の推進について(与党とりまとめ)」に基づいて進められた。与党2党の四つの検討機関連名であった。改革が法律改正に絡むこともあるが、行政になじまない対策を盛り込み団体に了解させるためのとりまとめであった。
「規制改革推進会議」は、内閣府設置法に基く機関である。委員の構成は委員会・作業部会とも実業・科学の専門家、文字通りの学識者で、経済界・学界・官界の三界が総合的な解決策を見出す仕組みである。権威付けでなく原案を創り、練る推進母体である。
改革解放
農協改革の「キーワード」は「経済界との連携」であった。農業団体とくに農協には長い間、経済界は対峙する勢力と言う意識が強かった。経済事業で農村市場を巡って競合している、工業製品輸出のために農業を犠牲にしている等々、好ましくない側面が強く意識されてきた。規制改革推進会議の解決策は、「連携」を呼びかけることによって経済界に抱いていた特別な意識と農協が特殊な組織であるという意識の双方から農協を解き放つことであった。連携が外に向かう開放なら、内に向かう開放が販売における買取と購買における「価格比較」に象徴される普通のビジネス感覚であった。
経済界との連携
「経済界との連携」は、二つの局面で具体化が進んでいる。まず「取引」である。元イトーヨーカドー社長で平成29(2017)4月に全農にバリューチェーン担当チーフオフェサーとして就任した戸井和久氏が、各地を視察したあと「もったいない」と印象を漏らしている。「もったいない」は農協が掌握する大量の農産物に対する需要者の視点であろう。また、就任5年後に、あるメディアで、「組織として全体よりもエリアでの対応が主流になっている傾向」を指摘し、「全農も販路拡大が必要、売り先が広がれば生産者も潤う」と述べている。
第二の連携は人的交流と資本的交流である。人的交流は農協法の理事構成に「販売等の事業または法人経営の能力を有する者」が加わった。全農は役員かつ重要現業のトップとしてこの規定を活かしている。資本的交流については法改正前に農水省がまとめた「与党とりまとめを踏まえた法制度等の骨格」に、全農・経済連の項で「農業・食品産業の発展に資する経済活動(投資活動を含む)を、経済界と連携して実施」としている。「投資活動」は流通を含む食品産業の資金需要に応えつつ取引の拡大につながる。
信用事業に絡む損失からしばらく農協は大きな負担を抱えることになる。現在は、地道に改革をすすめながら、子会社の見直しによる合理化、採用・教育訓練による職員の専門性の向上など、将来に備えて力を蓄えるべき時期にあるのではなかろうか。
重要な記事
最新の記事
-
令和7年秋の叙勲 西沢耕一元JA石川県中央会会長ら93人が受章(農協関係)2025年11月3日 -
シンとんぼ(166)食料・農業・農村基本計画(8)農業の技術進歩が鈍化2025年11月1日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(83)テトラゾリルオキシム【防除学習帖】第322回2025年11月1日 -
農薬の正しい使い方(56)細菌病の防除タイミング【今さら聞けない営農情報】第322回2025年11月1日 -
酪農危機の打破に挑む 酪農家存続なくして酪農協なし 【広島県酪農協レポート・1】2025年10月31日 -
国産飼料でコスト削減 TMRと耕畜連携で 【広島県酪農協レポート・2】2025年10月31日 -
【北海道酪肉近大詰め】440万トンも基盤維持に課題、道東で相次ぐ工場増設2025年10月31日 -
米の1等比率は77.0% 9月30日現在2025年10月31日 -
2025肥料年度春肥 高度化成は4.3%値上げ2025年10月31日 -
クマ対策で機動隊派遣 自治体への財政支援など政府に申し入れ 自民PT2025年10月31日 -
(459)断食:修行から管理とビジネスへ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年10月31日 -
石川佳純が国産食材使用の手作り弁当を披露 ランチ会で全農職員と交流2025年10月31日 -
秋の果実王 旬の柿を堪能 福岡県産「太秋・富有柿フェア」開催 JA全農2025年10月31日 -
「和歌山県産みかんフェア」全農直営飲食店舗で開催 JA全農2025年10月31日 -
カゴメ、旭化成とコラボ「秋はスープで野菜をとろう!Xキャンペーン」実施 JA全農2025年10月31日 -
食べて知って東北応援「東北六県絆米セット」プレゼント JAタウン2025年10月31日 -
11月28、29日に農機フェアを開催 実演・特価品販売コーナーを新設 JAグループ岡山2025年10月31日 -
組合員・利用者に安心と満足の提供を 共済事務インストラクター全国交流集会を開催 JA共済連2025年10月31日 -
JA全農と共同開発 オリジナル製菓・製パン用米粉「笑みたわわ」新発売 富澤商店2025年10月31日 -
【スマート農業の風】(20)GAP管理や農家の出荷管理も絡めて活用2025年10月31日


































