【今川直人・農協の核心】20年の低迷からの脱出(1)2025年2月10日
取引先
株式会社が営利目的であるのに対して協同組合は非営利であると言う説明は不正確である。ともに外部との取引で利潤を求め出資者に最大限の還元をはかる。非営利は当然の内部ルールであり、一人一票か一株一票かは出資者の意思反映方法の選択の問題である。
2003年3月の農水省「農協の在り方についての研究会」の経済事業についての提言に関して、「『農協のあり方研究会報告』をどう読むか」と題して研究会委員小島正興氏(丸紅専務から中金監事)と梶井功東京農工大学名誉教授が本紙で対談をしている。(以下に抜粋)
梶井 また、報告書では、経済事業改革の方向としてJAによる直接販売の拡大を提言して、全農はJAの補完機能に徹するべきとしていますね。なぜこういう提言になるのか私は理解できません。
小島 ...同感ですね。...向こうのバイイングパワーがどんどん大きくなっている。それなのにJAが個別に販売していくというのは、価格交渉力から言えば月とすっぽんの差になってしまうわけです。
梶井 ...それをベースにしないで、消費者ニーズに対応するためにJAの直接販売の拡大を、というだけでは全然迫力がないですよね。
小島 ...消費者団体と生産者団体が細々と議論しているような雰囲気があって、本来、今の経済の実態を大きく支配しているのは大資本なんだという認識が不足していましたね。」(本紙2003年4月23日)
低迷の20年
農協の困難は農業交渉合意が発動(麦・乳製品・MA米)する1995年に始まる。1999年の産業政策色の濃い食料・農業・農村基本法制定を受けて2001年に職能主義・営農指導重視の農協法改正が行われた。農協は、この後の15年、合わせて20年に及ぶ低迷を余儀なくされた。
農協改革が農業改革に適応する前に両改革が農協事業に重圧となったのである。まず、農協法改正で事業の第一が「営農指導」とされた。第一線で働く役職員にどう映ったか。信用事業の前に経済事業を置く方が「農業振興重視」が正確に発信できたのではないか。次に販売事業の停滞である。平成14(2002)年9月の「系統農協の現状と課題」(農水省)は販売事業取扱高の低下・大規模農家の農協利用率の低下・各品目に見られる連合会依存度の高まりを指摘している。このあと長く、いい話を聞かない。
在来線ダイヤ
この長期低迷が深刻だったのは、本来業務とされた経済事業が恒常的に赤字であったことである。平成21(2009)年5月の「農協の現状と課題について」(農水省)は、経済事業の独立採算のための対策を模索する、いわば「特集」であった。流通の多様化、加工・外食向け需要の拡大が進む中で農協の販売事業は取扱高の停滞・減少が続き、経済事業の赤字構造は解消に向かわない。しかし、組合員の期待が最も大きいのは販売事業である。レポートの目的から、これらの現状説明は詳細である。
今後の方向については「地域レベルでの販売力の強化」の最近の動きとしてファーマーズ・マーケットなどの地産地消、実需者への直接販売(量販店、加工・業務用)などを取り上げ、これらの拡大を検討課題としている。
このレポートでは「委託販売」を現状の基本としている。また、重点を「地域」に置いている。今や貴重な「在来線ダイヤ」になりつつある。
やがて、農協改革の重心は「全農改革」に移っていく。(以下次号)
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