「輸入相当分を国が買い上げるべきだ」「緊急資金こそ必要」 酪農家が農水省職員に迫る 院内集会で2022年12月29日
「13万7000トンを輸入するなら同じ量を国が買い上げるべきだ」「セーフティネット資金はみんな借りている。必要なのは緊急資金だ」――12月22日に衆議院第一議員会館で開かれた「農民運動全国連合会」(農民連)の集会で、参加した畜産農家が抜本的な対策を求めて農水省職員に迫った。畜産農家への抜本的な支援を求める緊急要請書に集まった農家の署名は1000人を超え、会場では改めて資材高騰などで厳しい経営に直面する農家が窮状を訴えた。

酪農家らが緊急支援を求めて農水省職員と質疑を交わした集会(今月22日、衆議院第一議員会館で)
「抜本支援を」 緊急要請に畜産農家1006人が署名
集会はオンライン併用で行われ、全国から畜産農家など100人以上が参加した。会場では、全国の畜産農家から集まった署名とともに緊急要請書が農水省の担当者に手渡された。署名の提出は今回で4回目で、累計で1006人に達した。
要請書では、あらゆる資材の高騰で酪農・畜産は最悪の危機に直面していると訴え、①畜産農家が経営を継続できるよう、抜本的な経営支援を行い、コスト上昇分を全額補てんすること②加工原料乳生産者補給金を経営を継続できる水準に引き上げるとともに、生産者団体と乳業メーカーとの対等な価格交渉に政府が責任をもつこと③畜産クラスター事業をはじめ、各種資金の償還が迫っている農家に対し、償還期限の延長など柔軟な対応を金融機関に要請すること――の3点を求めた。
「輸入するなら国内で同じ量の輸入を」 カレントアクセスで国の対応追及
このあと集会に参加した酪農家と農水省の担当職員で、酪農対策などをめぐって質疑応答の場が設けられた。
酪農家が強く対応を迫ったのは、政府が毎年輸入しているカレントアクセスの扱い。脱脂粉乳の国内在庫が過剰で生乳の生産が抑制される中、脱脂粉乳やバターが生乳換算で年間13万7000トン分、輸入されている。
これについて参加した酪農家は「輸入枠は国と国との約束で生産者に責任はないのに僕らの脱脂粉乳が売れなくなってしまう。それなら国が責任をもつべきで、国内の同じ量を買い上げてODAなどに回すべきではないか」と迫った。
これに対し、農水省の担当職員は「カレントアクセスは機会の提供ということで各国に約束している以上、変えることは難しいが、脱脂粉乳の在庫が多い中でバターを入れるとか、時期を調整するなどできるだけ需給に影響を与えない形で運用している。在庫対策などで需給改善に努め、側面的に支援したい」などと説明した。
また、海外援助については、「相手国からの要望に応じることが基本で、外務省でそうした国があるかどうか手続きをしていると聞いているが、そこは海外援助の視点に立つべきと考える」と理解を求めた。
「給料も辛抱している状態 緊急の資金を」
緊急的な資金の支援を求める声も相次いだ。2年の瀬を迎え、厳しい資金繰りの状態を訴える声が上がった。参加者の1人は「セーフティネット資金はみんないっぱいいっぱい借りている。担保物件もなくて金を借りられず、年越しのために給料を辛抱している状態の人もいる。緊急の資金投入が必要だ」と訴えた。
これに対して農水職員は「金融機関に償還期限延長など柔軟な対応を要請するとともに当初5年間の無利子の資金や担保なしでも融資が可能な仕組みも作っている。借金を前提とした状況は健全だと思わないが急場をしのぐ意味では有効だと思う。農水省としてはコストに見合った乳価となり、経営が成り立つ環境づくりを最優先に進めたい」と答えたが、別の酪農家からは「返せる見込みがないから無利子でも借りられないのが現状。だから緊急的な対策金を考えてほしい」と改めて対応を求めた。
「息子夫婦に給料払えず、生活費も出ない」
農水省の職員を前に改めて窮状を訴えのは、家族経営で60頭の牛を飼育する茨城県の女性。夫と息子夫婦の4人で牧場を経営しているが、息子夫婦への給料を払えず、生活費の確保も厳しい状況が続いているという。「去年までこうした事態になるとは微塵にも思わなかった。息子たちに後を継がせてこれからどうなるだろうと済まない気持ちでいっぱいです。生活費が出ない苦しさを分かりますか」と切々と語った。
農水省の担当者は「大変重い言葉をいただいた。今年1年の環境が非常に大変であることは承知している。乳価を上げられる環境をつくることが第一と考えており、皆さんとともにそうした環境をつくっていきたい」と改めて答えた。
集会では最後に農民連の長谷川敏郎会長が「経営を1日でも2日でも続けるためには資金投入しないと生活できないという状況をきちんと省内で上げて対策をとってほしい。餌の上がったことは酪農家の自己責任ではない。われわれも後押しするので、きちんと手を差し伸べる農水省になってほしい」と改めて対応を求めた。
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