第39回農協人文化賞-7部門17名を表彰2017年7月6日
協同組合発展の原動力に
経験を「明日への挑戦」へ
農協運動の仲間達が贈る第39回農協人文化賞の表彰と記念シンポジウム、祝賀パーティが7月5日、東京・大手町の東京會舘で開かれた。受賞者やJAの関係者など多数が出席し、受賞者を讃えるとともに、とくに政府の「農協改革」や経済環境の悪化など、JAをめぐる状況が厳しさを増すなか、受賞者の体験、JA運動の経験を学び、協同組合運動の一層の発展に向け、その原動力となる決意を共有した。シンポジウム終了後の祝賀パーティには約200名が出席し、受賞を祝った。
【表彰式】
今回の受賞者は17名。部門別では経済事業が2名、営農事業が5名、共済事業が2名、信用事業が2名、厚生事業が1名、福祉事業が1名、それに一般文化が4人。表彰式では、(一社)農協協会の佐藤喜作会長が、最近の農業・JAの置かれた環境について述べ、「農業・農村・地方の疲弊を政府は無視している。政府の改革の狙いは競争社会にすることにある。社会は生命と同じで、生命体の身体は、各部門が競争したら崩壊する。協同組合の灯火(ともしび)になっていただきたい」と、受賞者の活躍に期待を述べた。
また、農協人文化賞の選考委員会の今村奈良臣委員長は「農協法の改正など農協は厳しい状況にある。われわれはいま何をなすべきか。17人の受賞者が示している。しっかり学び、明日の農協づくりに役立ててもらいたい」と話した。 来賓として祝辞を述べたJA全農の吉永正信代表理事専務は「外部から〝改革〟を言われるまでもなく、われわれは、自ら改革プランを実行している。経済事業部門で受賞した人は、それを実践している。これを見習いたい。現場目線で組合員としっかり話し、正すべきは正してきた受賞者の功績、アドバイスを参考に改革に取り組んでいきたい」と話した。
JA共済連の村山美彦常務理事は、共済部門のJAの取り組みを称えるとともに、相談機能の強化、ペーパーレスなどによる事業運営の効率化に努めていることを話し、「これからも食と農を基軸に、地域に安心と幸せの輪を広げたい」と述べた。また、農林中央金庫の八木正展執行役員は信用事業部門の受賞者、2JAの組合長のリーダーシップを讃え、新世紀JA研究会の八木岡努代表が、「受賞者の取り組みを、研究会のセミナーなどを通じて広めたい」と、研究会への参加を呼びかけた。
(写真上から)農協協会佐藤会長、選考委員会委員長今村先生、JA全農・吉永代表理事専務、JA共済連・村山美彦常務理事、農林中央金庫・八木執行役員、新世紀JA研究会・八木岡努代表
【記念シンポジウム】
「農業協同組合に生きる-明日への挑戦」のテーマで開いた記念シンポジウムでは経済事業部門で、農業所得増大の手法で、単位面積あたりの収量アップの必要性、県域あるいは数県での事業統合による規模のメリット発揮などが焦点になった。
営農事業部門では、観光も含めた6次産業化の取り組み、農産物は、買って喜んでもらうための対面販売の大切さ、野菜の有利販売のために必要なJAの支援、新規就農者の教育、耕畜連携の取り組みなどが取り上げられた。
信用・共済部門では、この部門の利益があって営農指導事業を充実でき、さらには一支店一協同活動、女性大学、暮らしの活動など地域活動を可能にした取り組みが報告された。また厚生事業部門では患者中心の病院食の栄養管理のあり方が取り上げられた。
さらに一般文化部門では、女性の力を活かすことや、現場の出向く中央会職員づくり、他人の利益を守る利他心、人づくりなどが話題になった。人づくりでは、とくにJA職員には組合員とコミュニケーションのとれる能力をつける必要性があるとの指摘が多く出た。
【記念パーティ】(※詳細は後日掲載)
◆農協人は哲学持とう
シンポジウム終了後、受賞者を囲んで記念パーティが開かれた。
(一社)農協協会の佐藤喜作会長は改めて「17名の受賞者から未来を明るくする貴重な示唆を得た」とあいさつ、パーティ参加者に「農協の力強将来を誓ってもらいたい」と呼びかけた。
石田正昭龍谷大学教授が受賞者を紹介し、梶井功東京農工大名誉教授の音頭で乾杯。パーティでは農協人文化賞選考委員会を代表してJA全中元副会長の村上光雄氏らがあいさつした。村上氏はシンポジウムでの農協の実践報告について「できれば規制改革会議のメンバーに聞いてもらいたい」と話すとともに、シンポジウムでの議論をふまえ「農業振興は真剣に農協がやっている。地域に喜んでもらっており、なぜ地域総合農協でいけないのか。農水省が自己改革すべきでは。安倍さんもあれほど稲田さんをかばうのなら、半分でもいいから農業、農村をかばって」などと指摘した。
また、農協人文化賞について「農協運動の仲間たちが贈る。国からもらうものでも、長く務めた功労賞でもらうものでもない。私たちがみんなで表彰しようじゃないかという賞。しかも名前が文化賞。文化とは哲学。農協にそれぞれ哲学がなけければならず、それを表彰するのが大きな意味だと思う。これからも世界に誇れる農協運動の展開を」と集まった農協人に呼びかけた。
◆協同組合は世界の先端
来賓としてJA全農の吉永正信代表理事専務が「組合員とともに地域や農業をどうするか、という受賞者の現場目線の成果を参考に、全農も自己改革を進めていきたい。競争だけではない、みんなで力を合わせ社会をいい方向にもっていくよう、協同組合セクターの連携が重要だと今ほど痛切に思っていることはない。受賞者には全国連への叱咤激励もふくめてアドバイスを」などとあいさつした。
(一社)家の光協会の髙杉昇代表理事専務は農協人文化賞について「先進的な取り組みを仲間で認め、これを広く社会に発信していく意味がある」と指摘したうえで「日本社会がおかしな方向にあると私も思うが、一方で協同組合をユネスコが無形文化遺産に登録。そのバックボーンは一人の落伍者も出さない、出したくないという思いで組織している協同組合がある。家の光協会は、組合員らしい組合員をもっともっと増やしていく、そのために100%以上の事業機能を発揮するよう取り組む。JAグループがますます発展するよう引き続き尽力を」などとあいさつした。
新世紀JA研究会の八木岡努代表は「本気で人づくり、本気で組織づくり、本気で地域づくりを実現するため関係者にみなさんとともにさらなる尽力を」などと話した。 山田俊男・自民党参議院議員は「受賞者それぞれが努力し地域に根ざしたJAとして立派に発展し大変な仕事をしている。そう考えると、なぜ規制改革推進会議からあのように言われなければならないか、絶対に許せない。市場原理と既得権の岩盤を崩すというスローガンだけ掲げ、ともかくJAを叩くというなら日本の将来を誤る。JAがどう力をつけるか、どんなJAを作りあげるか、ともにがんばっていきたい」などとあいさつした。 民進党の玉木雄一郎衆議院議員は「すばらしいと思うのは農協人という言葉。地域のために尽くすのが農協人の本分では。法律にもGDPにも表れてこないが地域を支えている。新自由主義は貧困と格差を広げて人々を幸せにしなかった。世界が協同組合が大事だと言い始めているのに、やっつけようなどは時代遅れもはなはだしい。みなさんが最先端。力を結集してがんばろう」となどとあいさつした。
続いてJA全農元副会長の萬代宣雄氏は「今の世の中おかしいとの指摘に同感。たとえば農水省は私たちの味方でなければならないのに、いわばわれわれに後ろから弾を撃っているようなもの。どうしなければと考えると、国会議員は何をしているかと言わざるを得ない。この思いをそれぞれの議員に訴え、結集してきちんと意見を言ってもらおう」などと話した。 会場では受賞者を囲んで交流の輪が広がるとともに、農協運動の発展に向けて参加者から熱心な議論が聞かれた。
(写真上から)龍谷大学・石田先生、東京農工大学名誉教授・梶井先生、JA全中元副会長・村上光雄氏、(一社)家の光協会・高杉昇代表理事専務、自民党参議院議員山田としお氏、民進党衆議院議員玉木雄一郎氏、JA全農元副会長・萬代宣雄氏
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