研修農地で実践支援(株)アグリ甲斐 渡辺信取締役【JA全中新規就農支援実践セミナー事例報告】2023年2月9日
JA全中は1月26日、東京・大手町のJAビルで「新規就農支援実践セミナー」をオンライン併用で開いた。JAグループは、将来の食料・農業・農村を担う次世代組合員を確実に育成・確保していくことを目標に「次世代総点検運動」に取り組むことにしており、新規就農支援を重点事項の一つとしている。セミナーにはJA担当者ら約90人が参加し、実践報告などをもとに地域にあった新規就農支援を計画的に続ける必要性を確認した。講演と事例報告の概要をまとめた。
(株)アグリ甲斐(JA山梨みらい出資農業法人)渡辺信取締役
当社は▽担い手の育成と地域への定着▽農家が管理できなくなった農地の有効活用と遊休化の防止を目的に設立し、研修生の受け入れを開始した。
現在は耕作延べ面積15haを経営し、地域特産品のトウモロコシ(甘々娘)、大塚にんじん、ブロッコリー、水稲(食用・飼料用米)などを栽培し、年1人から5人の研修生を受け入れてきた。13年間で27人が新規就農し町内に10人、町外に17人が定着している。
法人として引き受ける農地は事務所から半径3キロ以内の水田に限定している。耕作放棄地であっても元が水田であれば、トウモロコシ栽培などで一定の農業所得が見込める。
経営で力を入れているのは、ほ場一筆ごとに詳細な作業記録を取っていること。品目ごとに投入する資材などのコストと売り上げ管理を行っており、研修生が代わっても記録と計画に基づく作業によって収益を実現している。
また、研修生にとっても作業記録や収支計画が独立後の経営マニュアルとしても役立っている。農業機械の操作やメンテナンス方法などもJAが指導する。研修中の生活費補助を用意するほか、空き住宅をシェアハウスとして宿泊施設としている。
研修生の就農時には研修生自身が任意の農地約1㌶を選ぶ。自分自身が研修し、特性をよく分かった農地を使って営農を始めることがもっとも大事なことだと考えた支援策である。販売先はJAの共販と直売所を確保している。
また、JAの空き施設を作業場として提供したり、アグリ甲斐として栽培技術の助言や指導、さらに緊急時の農作業代行も行う。関係機関も相談体制を充実させて定着支援に力を入れている。すでに就農した研修生ОBとの意見交換会も定期的に開いている。
高齢農家のリタイアにともなって増加する遊休農地を引き受け、一方で雇用を確保し、そのなかから独立就農を希望する研修生を育成する事業であり、増加する遊休地に対応し事業が重要性を増す。地域からも社員の農業に取り組む姿勢は評価されている。今後も農家の目線で地域に貢献していきたい。
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